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神倉海岸

容疑者

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『よろしい。では皆さん、真相をお話ししましょう』
 まるでナポレオンは小学生の児童を教える教師のように説明し始めた。



「おいおい、おぼっちゃま探偵さんよ。真相もクソもないだろう。見ろよ。この海岸には防犯カメラが設置されているんだ。だが、カメラには被害者の幡地と発見者の辺見レイカしか映ってなかったんだろう」
 九頭クズは鰐口警部補に訊いた。



「まァそうだな」
 鰐口警部補も腕を組み躊躇ためらいがちにうなずいた。



『いいえ、防犯カメラは盲点ですね』
 ナポレオンはなおも続けた。

「盲点?」


『ええェ、この海岸なら防犯カメラに映らず、この砂浜に来る事も足跡も残さずに被害者の幡地の首を切ることが出来るんです』



「おいおい、だからどんな手を使ったんだよ。犯人は魔法かイリュージョンでも使ったと言うのか?」
 鰐口警部補も眉をひそめ聞き返した。


『フフゥン、魔法なんて使うわけないでしょ。それこそよ』



「だからってなんだよ」
 すぐに九頭クズたちが聞き返した。


『ですから今、真相を話そうと思ってるんですよ』



「なにが真相だ。いいか。真犯人はその女、辺見レイカに決まりだろう」
 九頭クズはレイカを指差した。


「ううゥン、違います。私ではありません!」
 レイカは懸命に首を横に振って否定した。
 


『そうですね。真犯人は辺見レイカさんではありません!』
 ナポレオンは笑顔を浮かべ断言した。



「はァふざけるな。どうしてそう言い切れるんだ」




『だってダイイングメッセージが『ヘ』じゃないですか』



「おいおい、何を言っているんだよ。『ヘ』だから辺見だろう」
 また九頭は辺見レイカを指差した。

 他の容疑者たちも彼に賛成のようだ。黙って話しを聞いていた。


『いいえ、被害者の幡地は辺見なんて呼んだことはないはずです。そうですね。レイカさん?』


「は、ハイそうですね」


「えェ、どうしてだ?」


『幡地は『レイカ』と呼んでいたんです。ですから辺見レイカさんは『へ』に該当しないんです』
 


「ぬゥ、そんなこと、わかるものか。いまわの際で幡地が何を考えて『へ』なんてダイイングメッセージを残したのか」



『わかりますよ。幡地は『へ』で殺されたんですからね』



「なんだとォッ。ふざけるな。『へ』で殺されただってェ。ハッハハッ、笑わせるなァ?」
 九頭は大げさに嘲笑った。

 
「ううゥ……、ナポレオン?」
 何を言い出すんだ。


 一同が、あ然としてナポレオンを見つめた。


「……」
 ボク同様、周りにいる警察関係者や容疑者全員が呆れ返ったみたいだ。


 





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