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解決編

ダイイングメッセージは『へ』

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『幡地は『へ』で殺されたんですからね』
 まるでナポレオンはイタズラっ子のように微笑んだ。



「はァ、『へ』で殺されただってェ?」
 鰐口警部補もあ然として聞き返した。



「おいおい、いったい何を言い出すんだ」
 警察関係者や容疑者全員が呆れ返った。



「ぬゥ」ボクだってバカにされた気分だ。


 これまでボクだってかなりのミステリードラマを観てきたつもりだ。

 古今東西、『へ』で殺したなんてトリックなど聞いたことはない。




「おいおい、おぼっちゃま探偵くんよ。どうやって『へ』で殺すって言うんだよ。そんなトリックあるなら教えてくれないかァ?」
 九頭クズも憮然とした様子だ。まったく彼の言うとおりだ。


 『ヘ』で殺すなんて、あまりにも荒唐無稽なトリックだろう。




『フフゥン、ですからそれこそ『盲点』なんですよ』
 だがナポレオンも微笑んだまま譲らない。



「さっきから『盲点』って、なにが盲点なんだ。おぼっちゃま探偵くんよォ!」
 さすがに九頭クズもカッとして怒鳴りつけた。
 まったくチンピラみたいだ。

 相手が小学生だとしても容赦はしないようだ。



『おそらくこの中で盲点に気づいているのはでしょう』



「なにがだ。いったい何を言ってるんだ?」
 鰐口警部補もみんな同様にわけがわからない様子だ。

 一同は騒然としてきた。



「……!」美人弁護士のクリスも腕を組んで事の成り行きを見守っていた。



『良いですか。どうして真犯人はここを犯行現場に選んだのか。それさえわかれば、おのずと『盲点』の答えは導き出せるはずです』
 まるでナポレオンは教師が生徒に課題を出しているような発言だ。



「はァ、オレたちになぞなぞでも解かすつもりか。いったいどうやって防犯カメラにも映らず、砂浜に足跡も残さずに首を切って殺せるって言うんだ」
 鰐口警部補も怒鳴り散らした。



「ン、そうか。わかったよ」
 だが次の瞬間、九頭クズがニヤッと微笑んだ。


「えェまさか?」
 いったい真犯人はどんなトリックを使ったって言うんだ。



「フフゥン、真犯人は忍者なのさァ」
 九頭クズは冗談半分で軽口を叩いた。



「え、忍者だって?」バカな。 
 何を言い出すんだ。



「ハッハハッ、忍者なら水遁すいとんの術で海中から忍び寄って海の中から手裏剣を投げて幡地の首を切ることができるだろう」
 九頭クズはケラケラ笑いながらはやし立てた。

 どうやら悪質なジョークみたいだ。



「おいおい、子供か」
 さすがに鰐口警部補も頭を抱えて呆れた様子だ。


「……」ボクたちも無言で彼を睨んだ。



『いいえ、忍者というのは荒唐無稽ですが考え方としては悪くないですよ。答えのヒントにはなりますね』
 しかしナポレオンだけが九頭クズの冗談に乗り気だ。



「えェ、ヒント?」
















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