十秒探偵『ナポレオン＆トモロー』 すべての謎はナポレオンに解かれたがっている！

神倉海岸

容疑者

　ボクが車からクーラーボックスを持ってきて配り終わるまで、他の容疑者たちも集められていた。


　だがその中のひとりが不満を爆発させて喚わめき散らした。


「おいおい、いつまでこの炎天下で待たせる気だよ」
　怒鳴るようにクレームをつけた。


　金髪に肩から腕にタトゥーを施ほどこしたヤンキーだ。どうやら元半グレ集団『ヘルズドラゴン』の一員らしい。



「あのォ、これを飲んで落ち着いてください」
　ボクはカレに冷たいスポーツドリンクを配った。


「ふぅん、真犯人は決まってんだろう。関係のないオレたちは帰ったって構わないじゃん」
　彼はボクからスポーツドリンクを奪い取って封を開けた。
　

『関係なくはないでしょ。『ヘルズドラゴン』では、あなたは被害者の幡地の使いっパシリだったんでしょ？』
　ナポレオンは挑発的な言動でボクたちを驚かせた。



「おいおい、なんだ。このガキは」
　金髪の元ヤンはリモート画面のナポレオンを睨んだ。


『ナポレオンです。よろしく九頭クズさん』
　

「うるさい。なんでオレの名前を？」

『もちろんボクは、すべての容疑者の名前をリストアップしてあります』
　ナポレオンは怖ろしい事を言った。


　この青い髪の少年には個人情報など筒抜けのようだ。



「はァ個人情報保護法もクソもねえェなァ。どこのガキだよ」
　九頭は肩をすくめ嘆いた。


「ナポレオンよ。さァ悪いけど皆さん少しの間、謎解きに付き合ってもらうわ」
　美人弁護士のクリスが手を叩いて注目させた。
　まるで幼稚園の先生のようだ。



「ふぅん、謎解きねえェ？」
　だが九頭一人クズかずとはスポーツドリンクを飲みながら、ふて腐れてそっぽを向いた。


　他の容疑者も冷たい眼差しでナポレオンとクリスを見つめた。




『これより元半グレ集団『ヘルズドラゴン』の幹部、幡地殺害の真相をお話しします。よろしいですね』
　ナポレオンは一同を見回して宣言した。