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龍宮寺ナポレオン

龍宮寺ナポレオン

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『ボクは龍宮寺ナポレオンだ』
 青い髪の美少年が笑みを浮かべた。


「えェ龍宮寺って?」まさか。
 あの財閥の龍宮寺家のご子息なのか。
 そう言われてみれば、どことなく優雅で気品があるような気がする。



『フフゥン、一応、これでも龍宮寺財閥の御曹司さァ』
 また美少年は不敵に笑みを浮かべた。



「龍宮寺財閥って言えば日本有数の財閥だろう」
 驚いた。
 そんな御曹司がわざわざボクに連絡して来るなんて思いもしなかった。




『まァねえェ。だけどボクは皮膚疾患で、一度も屋外に出たことはないんだ』



「い、一度も外へ出たことはないの?」
 いくら何でもそんなはずはないだろう。
 そんなヤツは聞いたことがない。

 見た感じでは元気そうだ。
 顔色だって真っ白だが悪そうには見えない。



『ああァ、ボクはアルビノなんだよ。知ってるか。トモロー。アルビノって?』


「はァアルビノ?」なんだっけ。

 聞いたことはあるが、とっさに思い出せない。




『皮膚疾患のひとつさァ。メラニン色素が足りないんで、日焼けをするとヒドいヤケドをしたようにただれるんだ』
 美少年は苦笑いを浮かべた。



「ああァ、昔、ドキュメンタリーで防護服を着て学校行事に参加してた小学生を見たことがあるよ」
 かなり昔の事だ。
 何かの再放送だったかもしれない。



『そうか。彼も二十歳くらいで亡くなったようだ』


「マ、マジで?」そんなァ。
 信じられない。
 あんな防護服を着て紫外線対策をしていたのに二十歳の若さで亡くなったのか。



『うん、この病気は紫外線に弱くて皮膚ガンになる可能性が高いんだ。一般的にアルビノは短命でねえェ。平均寿命は三十歳ほどと言われてるんだよ』
 淡々と話し始めた。


「えェ、平均寿命が三十歳?」  
 なんて短いんだ。

 ボクたち健常者の半分以下だ。




『ああァ、だからボクは全身、真っ白なんだ。それじゃァあまりにも不健康に見えるだろう。だから青く髪の毛を染めているんだよ』
 彼は見せつけるように青いサラサラヘアーを触った。


「はァなるほどねえェ」
 確かに肌は抜けるように真っ白だ。
 日に焼いたことがないのだろう。
 

 年齢もそれほどボクと大差はないはずだ。二、三歳年下だろうか。

 それにしても小学生にしては過酷な人生と言えるだろう。



『っで、生まれてからずっとこの地下シェルターに籠もっているんだ。当然だけどリア友は皆無さァ』
 ナポレオンは開き直って苦笑し、ボッチだと宣言した。



「はァわかったよ。それで引きこもりなのか。ナポレオン。そういうことならボクで良かったら力になるよ」
 ボクは真面目で責任感が強い性格だ。
 知り合いが困っていたら力になりたい。



 取り敢えず、ボクは美少年のワガママに付き合うことになった。





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