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未来の揚羽の里✨✨✨
真相✨✨✨
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すっかり揚羽の里は、日が暮れ夜の帳に閉ざされていた。
さっきまで耳を煩わせていた蝉の声は聞こえない。代わりに鈴虫やコオロギの鳴く涼やかな声が耳に届いた。
「この娘だけは、穢ない平家の跡目争いに巻き込みたくなかったんだ……」
美鬼はかすかに声を震わせ、眠っている美姫の手を優しく握った。
「ええェ……」信乃介も納得して頷いた。
「ご推察通り……、この娘は私の実の妹……。
闇御前が清姫の乳母を垂らし込んで赤子の時にすり替えたんだ。
元々、母親のお律は息子の清斎ばかり可愛がって、清姫の事を面倒も見ずに敬遠していたからね。
だから清姫の事は私がずっと影から守ってきた。
もちろん勘の良いお律は、薄々、すり替えられた事を気づいていたと思うよ。だけどお律の愛情は全て息子の清斎に注がれ、清姫は放っておかれたんだ。
なので私が実の妹……、いいえ娘のように可愛がって面倒を見てきたんだ。ずっと……」
「うン……」
「殺伐とした土蜘蛛衆にいて、唯一、清姫といる時だけが憩いになった。
この娘のためなら死ねる。だからあの本陣で一世一代の大芝居を打ったんだよ」
「なるほど……、わかった」信乃介は笑みを浮かべた。
信乃介と美鬼ふたりの間に重苦しい沈黙が流れていく。
「信乃介? どうするつもり……」
堪えきれず美鬼は遠くを見つめながら訊いた。視線を合わせないようにしている。
「どうするか……?」信乃介も苦笑いを浮かべた。
「応えの如何によれば、ここで決着をつけなくてはならない」
いつの間にか、美鬼は後ろ手に短刀を構えていた。
「フフゥン、よせよ。せっかく助かった命だ。お互い大事にしようぜ」
「ぬうぅ」美鬼は信乃介を睨んだ。
「安心しろよ……。俺は清姫をどうこうする気はない」
「ええェ……?」
「まさか清姫をふん捕まえて、この娘が闇御前を殺した下手人だと番屋へ突き出すワケにはいかないだろう」
信乃介はチラッと清姫の寝顔へ視線を向けた。
まだ幼さの残る可愛らしい寝顔だ。
「ぬうぅ……、それは」
「俺は真実が正義だとは思ってないんだよ」
「えェ……、正義?」
「元はと云えば、あの嵐の夜……、本陣で闇御前が清姫を我が物にしようと襲った事が事件の発端だろう。我が娘と知りながら乱暴を働くなど人倫にも悖る行為だ。
闇御前が殺されたのも自業自得だろう!」
「じゃァ……」
「鳴かぬなら裁いてくれようホトトギス。
天に代わって、お主の悪事を!!」
決め台詞で見得を切った。
「……」
「悪事を働いたのは清姫ではなく闇御前だ! 彼女は正当防衛と云っても過言じゃない。運悪く闇御前が亡くなってしまっただけだ」
「ンうゥ……」
「出来れば、貴女たち土蜘蛛衆のみんなも清雅様を助けてもらいたい。この揚羽の里で、地震に傷ついた多くの里の民を救助して復興させてください」
「ええェ……、では私も赦すと云うの?」
「天に代わって悪を討つ!!
俺が裁くのは、悪事を働く者だけだ」
ニッコリと信乃介は微笑んだ。
「信乃介……」
「ただし、今後、江戸で紅い花を悪用するなら容赦はしない。
俺の『鬼斬り丸』で八つ裂きにして成敗してやるさ」
真剣を抜いて美鬼の顔の前へ向けた。
「フフゥン、さすが信長の末裔だねェ……」
美鬼は不敵に微笑んだ。
ほのかに青白く輝やく丸い月が揚羽の里を照らしていた。
今夜は満月だ。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
さっきまで耳を煩わせていた蝉の声は聞こえない。代わりに鈴虫やコオロギの鳴く涼やかな声が耳に届いた。
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「ええェ……」信乃介も納得して頷いた。
「ご推察通り……、この娘は私の実の妹……。
闇御前が清姫の乳母を垂らし込んで赤子の時にすり替えたんだ。
元々、母親のお律は息子の清斎ばかり可愛がって、清姫の事を面倒も見ずに敬遠していたからね。
だから清姫の事は私がずっと影から守ってきた。
もちろん勘の良いお律は、薄々、すり替えられた事を気づいていたと思うよ。だけどお律の愛情は全て息子の清斎に注がれ、清姫は放っておかれたんだ。
なので私が実の妹……、いいえ娘のように可愛がって面倒を見てきたんだ。ずっと……」
「うン……」
「殺伐とした土蜘蛛衆にいて、唯一、清姫といる時だけが憩いになった。
この娘のためなら死ねる。だからあの本陣で一世一代の大芝居を打ったんだよ」
「なるほど……、わかった」信乃介は笑みを浮かべた。
信乃介と美鬼ふたりの間に重苦しい沈黙が流れていく。
「信乃介? どうするつもり……」
堪えきれず美鬼は遠くを見つめながら訊いた。視線を合わせないようにしている。
「どうするか……?」信乃介も苦笑いを浮かべた。
「応えの如何によれば、ここで決着をつけなくてはならない」
いつの間にか、美鬼は後ろ手に短刀を構えていた。
「フフゥン、よせよ。せっかく助かった命だ。お互い大事にしようぜ」
「ぬうぅ」美鬼は信乃介を睨んだ。
「安心しろよ……。俺は清姫をどうこうする気はない」
「ええェ……?」
「まさか清姫をふん捕まえて、この娘が闇御前を殺した下手人だと番屋へ突き出すワケにはいかないだろう」
信乃介はチラッと清姫の寝顔へ視線を向けた。
まだ幼さの残る可愛らしい寝顔だ。
「ぬうぅ……、それは」
「俺は真実が正義だとは思ってないんだよ」
「えェ……、正義?」
「元はと云えば、あの嵐の夜……、本陣で闇御前が清姫を我が物にしようと襲った事が事件の発端だろう。我が娘と知りながら乱暴を働くなど人倫にも悖る行為だ。
闇御前が殺されたのも自業自得だろう!」
「じゃァ……」
「鳴かぬなら裁いてくれようホトトギス。
天に代わって、お主の悪事を!!」
決め台詞で見得を切った。
「……」
「悪事を働いたのは清姫ではなく闇御前だ! 彼女は正当防衛と云っても過言じゃない。運悪く闇御前が亡くなってしまっただけだ」
「ンうゥ……」
「出来れば、貴女たち土蜘蛛衆のみんなも清雅様を助けてもらいたい。この揚羽の里で、地震に傷ついた多くの里の民を救助して復興させてください」
「ええェ……、では私も赦すと云うの?」
「天に代わって悪を討つ!!
俺が裁くのは、悪事を働く者だけだ」
ニッコリと信乃介は微笑んだ。
「信乃介……」
「ただし、今後、江戸で紅い花を悪用するなら容赦はしない。
俺の『鬼斬り丸』で八つ裂きにして成敗してやるさ」
真剣を抜いて美鬼の顔の前へ向けた。
「フフゥン、さすが信長の末裔だねェ……」
美鬼は不敵に微笑んだ。
ほのかに青白く輝やく丸い月が揚羽の里を照らしていた。
今夜は満月だ。
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