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犬のおまわりさん

資産家殴打事件

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 こうして資産家、金有氏の邸宅で起きた殴打事件の現場に容疑者らが集められた。



 さすが金有氏だ。
 総資産は数十億はあると言われている。

 動機もハッキリしている。

 もちろん容疑者らは遺産目当てで、金有氏の命を狙っているようだ。



 パパ活で知りあったキャバ嬢のモモ。
 本名は野村幸子と言うらしい。



 そして、別居中の金有夫人の金有レイカ。


 金有氏の秘書をしている菱沼カイト。


 さらに金有氏に多額の借金のある百田ユウマ。


 取り敢えず、彼ら四人と第一発見者のボクを加えた五人が容疑者だ。


「あの人はどうなってるの?」
 別居中の妻、レイカが鰐口警部補にたずねた。


「ええェ、金有さんは意識不明の重態です。救急病院へ搬送されました」
 鰐口警部補が金有氏の容態を応えた。



「レイカさん。失礼ですが旧姓はニャんですかァ?」
 遠慮なく未亜が訊いた。


「え、旧姓?」
 レイカは少しためらっているようだ。


「ええェ、よろしかったら教えてくださいニャン」
 ニコニコして訊いた。


「……」
 一瞬、レイカは黙って視線を逸らした。


「フフゥン、桃井よねェ。確か?」
 パパ活中のキャバ嬢、モモが微笑んだ。



「ふぅん、桃井レイカさんニャンですか?」
 未亜は苦笑いを浮かべた。


「ふぅん、それがどうかしたの?」



「ええェッ、実は殴られた金有さんはカーペットにダイイングメッセージを記《しる》しておいたんですニャン。ねえェ、犬のおまわりさん?」
 未亜はボクに確認を取った。


「はァ、まァねえェ」
 ボクはかすかにうなずいた。


 







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