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犬のおまわりさん

ラッキー

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 外へ出ると今日も暑い。

 取り敢えず、ボクたちはラッキーがいつも通る散歩道から捜索した。


 ふたりだけになると未亜はふざけてボクにかけてきた。


「ニャッニャン、シろっぱだって。どこの方言かしら?」
 未亜が少しバカにするように笑った。



「え、ああァ江戸っ子なんだろう」

「江戸っ子って、どうしてニャン?」


「ああァ、江戸っ子は『ひ』と『し』がごっちゃになってるんだよ。だから広っぱを『シろっぱ』って呼んだんだ」

「ニャーン」


「それにスワローズの村上のファンみたいだしね。生粋の東京生まれなんだろうね」
 村上のレプリカのユニフォームを着用していた。


 東京にはふたつの球団がある。東京読売ジャイアンツと東京ヤクルトスワローズだ。


 東京ヤクルトスワローズは神宮球場をフランチャイズにしていた。

 

「ニャン、あ、おまわりさん。コレを上げるニャン。ラッキーを見つけたらコレを上げてニャン」
 未亜は金有氏からもらったスティック状のビーフジャーキーを差し出してきた。



「えェ、コレは?」

「犬用のビーフジャーキーニャン。塩分控えめなんだって。普通のビーフジャーキーだと塩分やカロリーの過剰摂取になるらしいニャン」



「ふぅん、なるほどねえェ」
「好物だから、これを差し出すとラッキーが飛びかかって来るんニャン!」


「はァ、飛びかかって来るのは、ちょっと怖いなァ」
 ボクたちは公園に入っていった。
 もうすぐ夏休みなので子どもたちが遊んでいた。


「日本は少子高齢化だけど、ペット産業だけは右肩上がりニャン」
 未亜も少しは日本経済の事がわかっているようだ。


「ああァ、まァそうだねえェ」
 


「ヘタをしたらペットに遺産を相続させるとか言う事で、ラッキーを誘拐したのかもしれないニャン」


「うん、だとしたらとんでもない事だなァ」
 ワンちゃんに取ってとんだ災難だ。


 けれども、まったく無いこととは言えない。
 なにしろ金有家は総資産数十億と言われていた。



 未亜は公園にいる子どもたちに話しを訊いていた。


 少年たちはサッカーのユニフォームを着ていた。


 やはり子どもたちには野球よりもサッカーなのだろうか。


「ニャーン、キミたち。豆柴のラッキーちゃんを見なかった。こういうワンちゃんニャン?」
 未亜はスマホの画像を見せながら優しく問いかけた。


「ああァ、この豆柴なら向こうで見たよ」
 少年のひとりが指を差した。


「そうか。ありがとう。気を付けて遊ぶんだよ」
 ボクも笑顔で返事をした。



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