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どぶ板通りライブ……✨🎸✨✨💕

どぶ板通りライブ……✨🎸✨💕

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 そのあとも次々と売れてついに完売となった。





「やったァァーー。完売だァァァァ!」
 全員、その場でピョンピョン途飛び跳ねた。




「ええェ……、マジなの」
「もうSOUL'd OUTォォ……」
「マジかよ。欲しかったのに……」
 まだ観客の中には買い求めたかった人もいるようだ。

「もっと売ってよ」
 さっそくクレームがついた。




「申し訳ありません……」
「すみません」
 クレームに対して全員で心からお詫びした。
 
 途中、あまりにも売れず心が折れかけたので嬉しい悲鳴だ。
 



 こうして私たちの長かった『横須賀ネイビーパーカ』の制作販売は終了した。



 ひとつやり遂げた思いがして清々しい気分だ。







 ☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚






 横須賀中央駅への帰り道。すでに辺りは夕闇が迫っていた。
 

 三笠ビル商店街のアーケードをくぐっていくと、まるで凱旋パレードのように晴れやかな気分だ。


 身体は疲れているが、心地よい疲労感だ。
 メンバー全員、満足げな顔をしている。



「フフ、どうイチゴ」
 ユリアンが私の横に来て意味深に笑った。



「どうッて」

「最後まで反対してたでしょ。ネイビーパーカはダサいッて」


「そりゃァ、オヤジギャグだしねえェ……」
「ッで、終わった今の心境はどうなの」


「フフ、決まってるじゃン。最高よ。最高のメンバーに巡り会えたんだもの」
 ゆっくりとみんなの顔を見回した。



 この半年間、いろいろな事があった。



 衝突したことも。喧嘩をしたことも……。

 でも今では全部、懐かしかった想い出になった。



「ねえェ……、最後に平坂を昇って図書館から夜の横須賀を見下さない」
 ゴンちゃんが提案した。


「ええェ……、ムリムリ。あの急坂を昇る気力はないよ」
 ニコが何度も首を横に振って嘆いた。




「良いじゃン。『これっきり♪  これっきり……♪』なんだしィ」
 私は妙にハイテンションだ。



「フフ、『急な坂道かけ駆け昇ったらァァ♪』」
 サンタが歌い出した。



「『今も海が見えるでしょうかァ♪  ここは横須賀ァァァァァ♪』」
 メンバー全員で合唱すると道行く人たちが何ごとかと目を見張っていた。



「ハッハハ……」みんな揃って爆笑だ。



「もしかしたら、このメンバーで平坂を昇るのは最後になるかもしれないじゃン」
 

 だが京急中央駅の横にある平坂を見上げると少し後悔した。かなりの急勾配だ。



「ええェ……、マジでここ昇るのォォ!」
 ニコはまだ納得していない。



「平気平気。途中棄権したくなったら、イチゴにおんぶしてもらいなよ」
 サンタが冗談交じりに言った。




「ムリ言うなよ。さすがに私だってニコをおんぶしたらリタイアだよ」











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