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那奈……✨✨✨

那奈……✨✨✨

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 いきなりショーリは立ち上がって勝手にブルーレイを起動させ自分のディスクを入れ替えた。


 リモコンで選びだしたのは場違いな激しいロックだ。



 派手なビジュアル系ミュージシャンが歌っている。
「何、この曲……」どういう選曲だ。



「ロケットダイブだよ」
 ショーリは画面のライブ演奏を見て嬉しそうだ。
 かぶりつくように見ている。



「そりゃァ、知っているけど……」
 元X JAPANのヒデさんの楽曲だ。彼も横須賀出身の伝説のミュージシャンだ。
 


 突き抜けるような疾走感が心地よい。


 ギタリストのヒデさんの楽曲なので、同じバンドメンバーのヨシキさんの楽曲とは全く違っていた。



「嫌なコトがあった時、ヒデさんのこの曲を聴くとスカッとするんだ」
 ショーリはノリノリだ。


「ううゥ……」こっちの気持ちも知らずに。
 いい気なものだ。まったく。


 確かに躍動感があってヒデさんの曲では一番好きだ。




「ふぅ……、やっぱリアルに考えて、隠れてどうにか出来る問題じゃないよ」
 ショーリはテレビの画面を見たままつぶやいた。


「ええェ……、そんなこと。なんでショーリが言えるのよ」



「リアルな問題……。産むにしても、堕胎おろすにしてもかなり金が必要かかるだろォ」




「えェ……」それは、そうなのだが。 



「秘密にして、どうこう出来る問題じゃないじゃん。
 軽く二、三十万くらいは掛かるし……。
 産むにしたら、受験はどうするとか」



「ううゥン……」私も唸るしかない。
 彼の言うとおりだ。



「どうせ、本城のヤツはバックレる気だろうし……」
 ショーリは吐き捨てるようにつぶやいた。



「あ!  そうよ。こうなったのも本城譲ユズ君の責任じゃん。彼のトコ行って、決着カタつけようよ」
 思わず私は立ち上がりかけた。


「無理だッて。そんなの」
 とっさにサンタは私を引き止める。


「彼も今、受験で大事な時だから……」
 那奈も熱くなった私をなだめてきた。



「ぬうぅ……、そんなァ、大事なのは那奈の身体の方だろォ。このままバックレるのは許せねえェよ……」
 彼氏の本城譲だけ受験で逃げるのは納得できない。




「そうだけど」サンタも困惑した顔で私を見つめた。



「オレも今、金はないけど……、どうしてもッて言うなら親御さんに一緒に頭を下げてもいいぜ」
 ショーリは人懐っこい笑顔で励ました。



「え……!」那奈も私たちもびっくりした。

 



「まァ、二、三発殴られるのは覚悟しないとな」
 頬を自分の指先で突っついた。



「いえ、そんなショーリ君に……」



「まァ殴られるのはイチゴに何発も殴られてるから。馴れてるよ」
 また人懐っこい笑顔で茶化した。


「おいおい、私が何発も殴るか。知らない人が聞いたら、本気にするだろう」



「ヘッヘ、知っている人が聞いたら納得するじゃん」
 彼がおどけて言うと、少しだけ場が和んだ。
 どうやらショーリの方が一枚ウワテのみたいだ。


 目先のことだけでなく未来も見据えているようだ。

 

「フフ……」サンタも苦笑をした。


「あのねえェ……。こいつの言うことは気にしないで。那奈ちゃん」
 私も懸命に言い訳をした。


「ハイ……」



「それから、良く知らないけど同意書とか必要なんだろ。ああ言うのって」
 

「うゥン……」那奈は沈痛な面持ちでうなだれた。



「そう言うのも用意しておかないと」
 


「そうか……」私は全然、そう言うコトを考えていなかった。


 ひたすら那奈のコトを心配することしかできない。









 ☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚


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