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本城譲……✨✨✨✨
本城譲……✨✨✨
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おそらく妊娠検査薬のことだろう。
『うン、そのことなんだけど……』
那奈も応え難そうだ。
少し間があった。なんとなくドキドキしてくる。
私はサンタの持ったスマホに耳を傾けた。
『陰性だったの……』少しだけホッとした声がスピーカーから聞こえた。
「え、ああァ…、そう。ふぅ……」
サンタも大きく息をついた。
「取り敢えず安心したよ」
『ありがとう。有紀。なんてお礼を言ったら良いか』
「別に、礼なんていらないよ。肩の荷がおりたけど」
『ゴメン、あ! イチゴさんにもよろしく』
「フフゥン、イチゴで良いよ。こっちも那奈って呼ぶから」
私も電話に割り込んだ。
『うン……、イチゴ! マジで迷惑かけて、ゴメン』
「イイから。そんなに謝らないで。今度、また家へ焼きソバでも食べに来てよ」
『ハッハハ……、そうね。昨夜は食べた気がしなかったから。次は、もっと美味しく戴くわ』
「うン」
自然と笑みがこぼれた。
「おい、もう用が済んだんだろォ……。オレはもう戻るぞ」
ひとり取り残された本城譲は、ふて腐れた顔で帰ろうとした。
「待てよ。本城譲! 謝りなさいよ。那奈に」
急いで私は彼を引き止めようとした。
「ううゥ……」しかし本城譲は唸るだけで無視しようとする。
「譲! あなたがそんなに卑怯だとは思わなかったわ」
今度はシーちゃんが、こわばった表情で呼び止めた。
「ぬうぅッ」
「あんたの無責任な行動が女子の一生を左右しかけたのよ。彼女に土下座して謝れよ」
私は床を指差した。それだけでは済まないが。
「そッそんな……」彼の視線が彷徨っている。
『いいわよ。イチゴ! そんなことは』
那奈は恥ずかしそうに声を震わせた。
「悪かったよ。那奈……」
だが観念したのか、本城譲も素直に頭を下げ謝罪した。さすがに土下座はしないが。
「譲君! イチゴに殴られたッて、先生へチクッたら理解ってるわよね」
サンタが声のトーンを落として脅す。
「わかってるよ。キミたちも那奈のことは」
「言うわけねえェだろう……。本当なら土下座させたいけどな」
なぜか涙があふれてきた。
「ううゥ……、じゃァな。シー」
本城譲はシーちゃんに挨拶し逃げるように立ち去っていった。
「……」だがシーちゃんは無視して黙っている。
「ほら、イチゴが泣いてどうするのよ」
ニコがハンカチをくれた。
「シーちゃん。ゴメン」
すぐに私はシーちゃんに謝った。
「ううゥン……、別にイチゴが謝ることないよ」
口ではそう言ったもののシーちゃんは視線も合わさず体育館裏を後にした。
相変わらず空は、どんよりと曇り今にも雨が降りそうだ。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
『うン、そのことなんだけど……』
那奈も応え難そうだ。
少し間があった。なんとなくドキドキしてくる。
私はサンタの持ったスマホに耳を傾けた。
『陰性だったの……』少しだけホッとした声がスピーカーから聞こえた。
「え、ああァ…、そう。ふぅ……」
サンタも大きく息をついた。
「取り敢えず安心したよ」
『ありがとう。有紀。なんてお礼を言ったら良いか』
「別に、礼なんていらないよ。肩の荷がおりたけど」
『ゴメン、あ! イチゴさんにもよろしく』
「フフゥン、イチゴで良いよ。こっちも那奈って呼ぶから」
私も電話に割り込んだ。
『うン……、イチゴ! マジで迷惑かけて、ゴメン』
「イイから。そんなに謝らないで。今度、また家へ焼きソバでも食べに来てよ」
『ハッハハ……、そうね。昨夜は食べた気がしなかったから。次は、もっと美味しく戴くわ』
「うン」
自然と笑みがこぼれた。
「おい、もう用が済んだんだろォ……。オレはもう戻るぞ」
ひとり取り残された本城譲は、ふて腐れた顔で帰ろうとした。
「待てよ。本城譲! 謝りなさいよ。那奈に」
急いで私は彼を引き止めようとした。
「ううゥ……」しかし本城譲は唸るだけで無視しようとする。
「譲! あなたがそんなに卑怯だとは思わなかったわ」
今度はシーちゃんが、こわばった表情で呼び止めた。
「ぬうぅッ」
「あんたの無責任な行動が女子の一生を左右しかけたのよ。彼女に土下座して謝れよ」
私は床を指差した。それだけでは済まないが。
「そッそんな……」彼の視線が彷徨っている。
『いいわよ。イチゴ! そんなことは』
那奈は恥ずかしそうに声を震わせた。
「悪かったよ。那奈……」
だが観念したのか、本城譲も素直に頭を下げ謝罪した。さすがに土下座はしないが。
「譲君! イチゴに殴られたッて、先生へチクッたら理解ってるわよね」
サンタが声のトーンを落として脅す。
「わかってるよ。キミたちも那奈のことは」
「言うわけねえェだろう……。本当なら土下座させたいけどな」
なぜか涙があふれてきた。
「ううゥ……、じゃァな。シー」
本城譲はシーちゃんに挨拶し逃げるように立ち去っていった。
「……」だがシーちゃんは無視して黙っている。
「ほら、イチゴが泣いてどうするのよ」
ニコがハンカチをくれた。
「シーちゃん。ゴメン」
すぐに私はシーちゃんに謝った。
「ううゥン……、別にイチゴが謝ることないよ」
口ではそう言ったもののシーちゃんは視線も合わさず体育館裏を後にした。
相変わらず空は、どんよりと曇り今にも雨が降りそうだ。
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