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本城譲……✨✨✨✨

本城譲……✨✨✨

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「ねえェ……、ちょっと顔貸してくれない?」
 少しカチンときてグッと拳を握りしめた。
 

「やっぱ元ヤン?」ニコがサンタに囁いた。サンタは肩をすくめるばかりだ。



「違うッて。超優等生よ。私は!」
 視線は本城譲に向けたまま言い返した。



「……」だが本城譲はまったくの無視だ。



「話しがあるんだ。ちょっと、体育館裏に来いよ」
 Y高校へ入学した時は、まさかウチがこんな大胆なセリフを吐くとは思わなかった。



「あのなァ。こっちは推薦が決まったキミたちとは違って忙しいんだよ」
 明らかに本城譲は私たちをバカにして嗤ってみせた。


「くううゥ……」
 思わず私はカッとして、本城譲の胸ぐらを掴んだ。



「うるせえェよ……。とっとと来ないと、このまま体育館裏まで引きずって行くぞ」 


 
「な……ッ?」さすがに本城譲の顔色が変わった。



「ねえェ、イチゴッて、やっぱ元ヤンキー」
 背後でニコがつぶやいた。
「違うッてえェ……」



 さすがに周りのクラスメイトたちも異変に気づいたようだ。



「あ、あのォ……、なにか揉めごと」
 辺りが、ざわつき始めた。


 先生にチクられると厄介だ。
 せっかくの推薦入学がパーになる。




「フフゥン、なんでもないの。ちょっとしたアトラクションよ。どうぞ皆さんは、自習を続けてください」



 本城譲も頑なに拒んできた。
「ちょっとキミたち……、先生に報告するよ」



「ええェ……?」
 ニコとサンタは本城譲のひと言に怯んだ。
 些細な暴力沙汰で推薦が取り消されたら、目も当てられない。



 だが、いっそう私の闘志に油を注ぐ結果になった。
「そうね。果たして先生に報告されて、ヤバいのは、私たちかしら……。それともあんたの方かしら?」
 低い声で脅した。

「えェ……」

 
『武藤那奈のことだよ。黙って付いて来い!』
 彼の耳元で囁きかけた。


「ううゥ……、那奈の」

『T大学受験どころじゃなくしてやろうか』
「くッ、ううゥ……」



『おとなしく付いて来なかったら、ネットに流してマジでシバクぞッ!』
 昔、ショーリから借りて読んだ少年漫画のレディース漫画モノみたいな脅し文句だ。
 まさか、自分が使うとは思わなかった。




「ううゥ……、わ、わかったよ」
 さすがに本城譲も素直に従うようだ。



「ねえェ……、元ヤンキーだよね。イチゴ?」
 ニコが私の袖口をクイクイッと引っ張った。




「違うッて言ってンじゃん……」
 窓から外を見ると今にも雨が降り出しそうだ。














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