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走水海岸へ✨✨💕

走水海岸✨✨💕

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「ちょっと……」
 あまりの勢いに少し怖いくらいだ。


 だがさすがに、こんな飛び回ってはいられない。


「はァはァ……」
 すぐにショーリも息が上がり疲れたのか、歩き始めた。



「バカなの。少しはペース配分を考えなさいよ。
 ショーリはいつでも遠足で、行きだけ妙に帰りはグッタリして無口になるタイプでしょ」
 クラスには何人か、いるヤツだ。


「ヘッヘ、よく知ってるな……。そうなんだよ。いっつも行きはハイテンションで、楽しいんだけどな」



「スタートダッシュして、シーズン途中でバテバテになって夏場になると、泥沼の連敗するどっかの球団と同じよ」


「ヘッヘ……、まァそうなんだけどね」



「でも、ありがとう。ショーリ、きょうは私に付き合ってくれて……」
 恥ずかしいからおんぶされたまま、彼の耳元へ囁いた。



「ええェ?  ああァ、当たり前の事をしただけだよ」
 ショーリも褒められたので、かなり照れているようだ。



「もう大丈夫だよ。下ろして。あとは自分で歩くから」


「いやいやァ、もう少しだけ背中にイチゴの胸の膨らみを感じていたいしィ」
 いやらしくニヤニヤして笑いかけた。



「だァァァ!  そりゃァ、それが狙いか。
 感謝して損したァァ。早く下ろせェ……」
 おんぶされたまま、ポカポカと殴りつけた。もちろん軽くだ。




「わかりました。わかりましたよ」
 すぐさま浜辺へ下ろし、頭を抱えて退避した。
 
 
 それでもかなりおんぶしてくれたので、駐輪場まではすぐそこだ。


 
 夕陽に海が紅く染まっていく。



「わァ、夕陽なんて久しぶりィ」
 いつ以来だろうか。こんな綺麗な夕陽を見たのは。


「フフゥン」ショーリは鼻で笑った。
「なによ。そんなに可笑しい?」


「別に、オレもそうだよ。こんなに綺麗な夕陽を見たのは、かなり昔だったような気がする」
 

「受験勉強で、いっぱいいっぱいだったからね」
 なんとなく二人で見る夕焼けは感慨深い。





 気づくと辺りは夕闇が迫っていた。
 こんなに遅くなるとは思わなかった。





 ショーリは、駐輪場の近くにある自動販売機でミネラルウォーターを買って、一本私に渡してきた。


「ハイ、イチゴ」



「ンううゥ……、でもこれェカロリーがあるンでしょ」
 


「そりゃァ、あるけど頼むよ。そんなに無理なダイエットをしないで。お願いだよ。
 水分補給しないと、こんなトコで熱中症で倒れられたらオバさんに何て謝れば良いか」
 泣きそうな顔で頼んできた。



「お母さんには、別に私が悪いんだから……」
 だが、ここまで頼まれれば仕方がない。


 ミネラルウォーターを口にした。
 ほのかに甘い甘味料の味がする。


「どうする?  自転車は、ここに置いておいてタクシーかバスで帰る。明日取りに来れば良いじゃん」
 ショーリは、私の身体を心配して進言してくれた。


「平気だよ。それより今日は詰まらない事につき合わせちゃって、ありがとう」


「ええェ……、なにが?」
「せっかく走水まで来たのに……、私が無茶して沖まで泳いで、溺れたのを助けてくれただけじゃん。
 楽しく海水浴もできなかったし……」



「いやいや、楽しかったよ。逆に」
「なにが逆なんだよ」


「オレはイチゴと一緒なら、どこへ行っても楽しいよ。きっと今日のことも良い想い出になるよ」



「フフゥン、ならいいけど。そろそろ行こうか」
 ペットボトルを自転車の前カゴに入れ帰宅の途についた。



「ああァ、ゆっくり行こうぜ」
 





 一気に夜の闇が横須賀の街を包み込んでいく。








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