上 下
32 / 118
走水海岸へ✨✨💕

走水海岸✨✨💕

しおりを挟む
《ショーリ……助けてェ……》
 このまま私かま溺れたら、いったい何に転生するのだろう。



 そんなバカな事を考えていたら私の腕を何かが掴んで引っ張り上げた。


「大丈夫かァーー……!   イチゴォォォ!」
 ショーリだ。ショーリの声が聴こえてくる。


《助けてェ……!   ショーリィ》ゴボゴボ言うばかりで声にならない。


「イチゴォォォ!!」
 だが間一髪、必死に叫ぶ彼にしがみつき九死に一生を得た。



 なんとか私はショーリの手助けで事なきを得たようだ。



 彼は優しくお姫様抱っこをして私を浜辺まで運んでくれた。
「大丈夫か。イチゴォ!!」


「ゴッホゴホ……。へッ、平…気……」盛んに咳き込むばかりでまともに私は返答すら出来ない。



「なァんだ。ポチャッたって言うから心配したけど思ったより全然、軽いじゃン」
 いつものようにショーリは軽口を叩いた。

「ううゥ……、ゴッホゴホ…、もうイイよ。下ろして。
 自分で歩けるから……」
 急に恥ずかしくなって辺りを見回した。



 幸い海水浴客はいない。遠くでサーフィンの練習をしているだけだ。


「ねえェ……、もういいから下ろしてよ」
 私は少し怒った口調で命じた。




 しかしショーリは私を砂浜まで運び、ゆっくりとブルーシートの上へ下ろしてくれた。



「ふぅー、焦ったぜ。マジで……」

「うん……」ちゃんとお礼を言わなきゃいけないのに、なぜか素直になれない。


「フフゥン……」ショーリは人懐っこい笑顔を浮かべ、横に並んで腰をおろした。




 私がブルーシートの上で膝を抱えていると優しく背中をさすって心配そうに訊いてきた。


「大丈夫かよ。イチゴ?」

「フフ……、ゴッホゴッホ……。平気だよ」
 だが咳が止まらない。


「逆だろう。いっつもオレが無茶な真似をして溺れそうになって、冷静なイチゴに怒られるッて言うのがパターンじゃン」
 口許は笑っているが目つきは真剣だ。
 


 私だってわかっている。
「フフゥン、別に、ゴッホゴホ……、微塵も溺れてねえェよ」
 なぜか意固地になって否定した。しかしショーリの眼差しに堪えきれず視線を逸らしてしまった。


「あのなァ、完全に溺れてンだろ。もう少し溺れてりゃァ……」 



「溺れてりゃァ、なによ」



「いやァ、別に、頼むよ……。イチゴに何かあったら、オレェ……」
 眉根を寄せて哀しそうな顔をした。


 







☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
しおりを挟む

処理中です...