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ビジュアル系弁護士✨シンゴ✨💕💕
第3話 【エデン】
しおりを挟む朝方までオレは新曲を作っていて、寝たのはついさっきの事だ。
高級マンション【エデン】の4階、404号室がオレの寝室だ。
どうやら、作曲に煮詰まってベッドへ倒れ込んだまま寝落ちしたらしい。
まだ微睡《まどろ》んでいると、不意にインターフォンが響き渡った。
『♪ピンポン♫ ピンポン♫ ピンポン♫』
いきなり連打だ。
まったく無礼、極まりない。
どうせ、こんな無礼な輩はオレの知る限り、アイツしか居ない。
またインターフォンが鳴り響き、無視していると今度は、何度もドアを叩いた。
『ドンドンドンドン』
『シンゴ君!! シンゴ君!!
居るんだろォォーーーー!! シンゴ君!!』
何度も俺の名前を喚き立てる。
「ン……」なんだよ……。
「ッるせェ~な!!」
まともに目が開かない。
無視していると、ドアを激しく叩いてくる。
「ちィ……」
オレも仕方なく起きて玄関へ向かった。
これ以上は、近所迷惑だろう。
またドアの向こうから怒鳴る声が聞こえた。
『シンゴ君!! 大変なんだァーー……!!』
オレはインターフォンのモニターを見てウンザリした。
やはりこんな大騒ぎするのは決まっている。
案の定、バンドメンバーのヒデだ。
真っ赤なモヒカンのような頭がやけに目立った。
オレよりもひと回り若い。二十歳前後だ。
まるで飼育員にバナナをねだるチンパンジーのように玄関前で騒ぎ立てている。
出来れば、近所の奥様方には見せたくない。
「おいおい、近所迷惑だろうォーー!!
何時だと思ってんだよ!!」
オレはモニターを通してヒデにクレームをつけた。
『もう朝の十時、回ってるよ!! シンゴ君!!
マジで大変なんだッてェ~ーー……!!』
相変わらず外で大袈裟なジェスチャーをして喚いている。
盛りのついたチンパンジーさながらだ。
「解ったよ。飼育員のオジさんにバナナを多めに差し入れしといてやるから!!
じゃ……」
これ以上は付き合っていられない。
こっちは眠いんだ。
『おいおい、オレは上○動物園のチンパンジーじゃねぇから……』
「ッるせェな。
とにかくあと二時間くらいしたら来いよ。
じゃ、おやすみィ~…… ふわァ……」
眠くて堪らない。すぐにでもモニターを切ろうとした。
『寝るなァ~ーー!! シンゴ君!!
死んだンだよォォォーー……!!』
「ン……、死んだッて、誰が……」
モニターを切ろうとした指先が途中で止まった。
『【ル=シフェル】のユウキ君がァーー!!
死んだンだ!!』
「え……?!」【ル=シフェル】のユウキが。
死んだ!!
そんなバカな……。
瞬間、心臓がドキッと胸を叩いた。
「……」
すぐには頭が働かない。
少し経ってから玄関のドアノブに手を伸ばしカギを開けた。
悪いジョークだろうか。
冗談にしても、ちょっと酷すぎる。
少しムッとしてきた。
「おいヒデェ!! ウソをつくなよォ!!
この前、ユウキとはオレの部屋で会ったばッかりだ!!」
この部屋で二人は酒を酌み交わし、夜が明けるまで夢を語り合った。
武道館のステージで思いっきり暴れてやろうと。
天才ギタリストのユウキといつか……。
「ウソじゃねぇよォーー!!
オレだって、そんな非道いウソをつくか!!
【ル=シフェル】のユウキ君が死んだンだ!!」
勝手にドアを引き開けヒデが玄関へ入ってきた。
「マジで……。
【ル=シフェル】のユウキが……」
一瞬、息が止まりそうになった。
「死んだ……」
今のヒデのひと言で完全に目が覚めた。
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