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ダイイングメッセージは『81』

八神ハジメ

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 トモローは自分の事のように自慢した。


「だったら頼むよ。ボクを助けてくれ。その天才探偵のナポレオンを紹介してほしいんだ」
 ハジメはザワザワと嫌な胸騒ぎがした。



 まさに彼が約束した時間を見計らっての犯行だ。
 
 おそらく真犯人はハジメに罪を着せるつもりなのだろう。


『わかったよ。ついでにクリスっていう美人弁護士も紹介して上げるよ。それから電話はそのままつなげておいて。ナポレオンが聞くから』


「ああァ、ありがとう。助かるよ。じゃァ」
 ハジメはトモローに連絡がつき心なしか落ち着きを取り戻した。



「ええェッと、これで全員ですか?」
 リビングに怖モテの刑事が現われ事情聴取を始めた。

 ピリッと一同に緊張感が走った。


 だがひとりだけふざけている者がいた。

「フフゥン、まァ妖怪の仕業じゃなければ、この中の誰かがオヤジを殺したことになるなァ」
 ヤンキーのカズヤは皮肉まじりにあざ笑った。



「古ッ、今どき妖怪のせいなんて」
 すぐさま愛人のキララがツッコんだ。



「犯人はダイイングメッセージの示す通りさァ」
 なおもカズヤは茶化したように笑った。



「えェ、ダイイングメッセージ?」
 八神ハジメが目を丸くして聞き返した。

 

「……!」
 リビングにいる一同が黙ってカズヤを睨んだ。


「8と1。つまり八田一子さァ!」
 ヤンキーのカズヤは家政婦の八田一子を指差した。



「えェ、私ですか?」
 指差された家政婦も驚きを隠せない。


「待てよ。カズヤ。『81』ならもうひとり忘れてならないヤツがいるだろう」
 長男の金倉ほずみがハジメを見つめ意味深に微笑んだ。



「ううゥ……、ボクですか?」



「そうだ。八神一やがみハジメさァ」




「ボクじゃありませんよ」
 何度も首を横に振って否定した。



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