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――とうとう黒のダンジョンへの突入――

蟲毒

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「ここにきて攻撃魔法かよ!!! しかもどれも物騒すぎて怖いんですけど! 俺、殺人犯になるぐらいなら自分が死んだほうがましってぐらいの臆病者なのに!」

 ポン、とガンツさんに肩を叩かれた。
「その魔法を使うに値する勇者だと神に認められているんだ。この子達の為にも十分役立ててほしい」
「そうですね。よし、ちびすけに何かあったら絶対助けてやるからな」
「ユーチャ達こそ、お兄ちゃをお助けしますのー」「なの!」

 と、はしゃぐチビの横で

「もよ~~~」
 ケンチャが壁に額を付けてドヨドヨとよどみを背負っていた。

「ケンチャの地図が間違えてたの……トラップ見抜けなかったなんて……もよ……」

「よしよし、見抜けなかったのはお前だけじゃないって」
「そうじゃぞ。思いっきり罠を踏み抜いたのはドジっ子ユイなんだからな」
「ドジっ子言うな! なんか恥ずかしいだろうが!」

「それにしても……随分くだってしまったようだが、ここは何階なんだ?」
「とりあえず灯りをともしますね」

 本日四回目となる『周りを照らす』を使う。レベルが2になった。

 壁だと思っていたのは巨大な柱だった。
 柱にははっきりと5Fと書かれていた。

「一気に人跡未踏深部『アンダーグラウンド』まで突入しちゃった……」
 ルビーがふらりとよろける。
「あ、でも今はユイが居るから平気!」
 独り言を続けながら「よし!」とガッツポーズを取った。
 俺は勇者じゃなく保父であり寄生プレイヤーなのです、と突っ込みたいが中二が発動するので黙って見守ろう。
 弱い仲間を背負って戦ってきたルビーにこの面子は心強いんだろうな。


 グオオオオンと怪物の声が響いた。それも一匹じゃなく、数十匹、ひょっとしたら数百匹かも。

 坂の横は切り立った崖のようになっていた。俺たちがぶつかった柱は直径が二十メートルぐらいある円柱で、この坂だけが高い位置にあった。

 ほんの数メートル下に、ミミズを何千倍にもしたようなモンスターやハリガネムシを何千倍にもしたモンスターやら、手足のないワーム状のモンスターがお互いに食ったり食われたりしていた。
 蟲毒のツボを覗き込んでいるかのようだ。
 こ、これと戦うのか?

「くっ……!」
 下から伸びてきた触手がルビーの足に絡みつき、引き摺り降ろそうとした!
「ルビー!!」
 咄嗟に剣で触手を切り落とした。

「危ないの。さっさと終わらせちゃわないと。氷系魔法『ビビアン』!!」

 マーチャが単独で魔法を放った。街で見たものよりも数倍の威力で雹が振り、モンスターを肉片と血に変えていく。
 これが本物のビビアンの威力か。

 ルビーが一本の矢を上に放ったかと思うとその矢が空中で何百――いや、何千本にもなってワームに降り注いだ。
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