上 下
56 / 108
――ふたたびギアスへ――

「勇者さま……? 本物だ! ゲルを倒した勇者さまだ!!」

しおりを挟む
 それにハードルを上げないでください。俺はスライム相手に死ぬんだからね!

「勇者さま……? 本物だ! ゲルを倒した勇者さまだ!!」
「勇者さまが居るなんて心強い……!」
「おお、勇者さま、まだこの街にいらっしゃったとは……!」
「この戦い、勝ったも同然だ!!」

 周りが一気に色めきだつ。
 完全に勇者扱いになっちゃったよ。どうするんだよこれ。俺が死んだら士気が下がるどころか瓦解するんじゃないか? モブランクの戦闘力なのに期待が重すぎる。

 戦いは盾部隊、弓部隊、魔法部隊、剣部隊と四層で展開するらしい。
 モンスターの魔法の攻撃は人間の魔法より遠くまで届くからだ。

 盾部隊で最初の攻撃を食い止め、次に弓矢部隊が迎え撃つ。魔法は詠唱が長いし、遠くから撃つと威力が弱まるから引き寄せてからの攻撃だ。そして最後に俺たち近接が迎え撃つ。

「わたしは弓使い達と動く。死ぬことは許さない……ユイ……」
「善処するよ」
「マーチャは魔法使いさんのとこに混じるのー」
「キーチャも、盾部隊にいく……」

 第一陣がキーチャ達盾部隊、
 第二陣がルビー達弓部隊、
 第三陣がマーチャとケンチャが混じった魔法部隊で、俺たち剣士組は第四陣だった。フルアーマーさん達もここだ。

「あれ? 『竜の尾』はいないんですか?」
 ガンガスさんに聞くと、

「あいつらならとっくに逃げたぞ。口ばっかだからなあ。Bランクに行けたこと事態が奇跡みたいな連中なんだ」
 えー。Bランクって威張ってたのにそりゃないだろ……。

 モンスターたちの影がはっきりと見え始めた。多い。少なく見積もっても百体はいる。飛んでいる魔物もいるし、しかも体が山のように巨大なモンスターまでも!

「敵の攻撃が来る! 盾部隊、構え!!」
 陣のあちこちに敷かれた伝達用の魔法陣から司令官の声が響く。

「多重シールド『タンホイザー』」
 敵も味方も関係なく大勢の咆哮が響き渡るのにキーチャの声だけははっきりと聞こえた。
 何十もの盾が空中に出現する。
「え……!?」
 盾部隊も狼狽したようだが、モンスターの攻撃が盾に当たると攻撃がすべて敵に反射された。

「うおおお、すげええ」
「これが反射盾か……初めて見た……!!」

 倒れた魔物は数十匹にも上るのに、魔物たちはそれを踏み越えこちらへ攻め込んでくる。
「次はルビーちゃん達なの」
 盾部隊が広がり、弓部隊が前に出る。

「弓部隊構え――――放て!!!」
「千の矢『カヴァレリア・ルスティカーナ』」

 弓部隊の中ではルビーが一番身長が低い。小柄な彼女の持つ弓からは一本の矢が放たれ、一気に千本に膨れ上がって魔物の大群を襲った。

 ギャアアとかん高かったり、地の底から響く低音だったり、モンスターの叫び声が戦場に響く。

「すげえ……さすが勇者パーティー…女なのにこの強さか……」
「このぐらいは当然…」周りの賞賛など気にも留めずルビーが下がる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

達也の女体化事件

愛莉
ファンタジー
21歳実家暮らしのf蘭大学生達也は、朝起きると、股間だけが女性化していて、、!子宮まで形成されていた!?

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...