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――ふたたびギアスへ――

おんぼろギルドの店主は元Sランク

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「違う違う。呼んだのはユーチャだったろ? この子が『全ての神に愛されし勇者』だよ」

「ゆちゃなのでつ」

「こんな小さな子が……! 絶対に守るからね! あ、全ての脅威から貴方達を守って見せる…」

 素が出たルビーちゃんが慌てて中二状態に戻っている。
 俺はウィンドウを開いて炎の魔法を確認した。

トテ・モアタタ・カイ『半径十メートルが暖かくなる! 便利!』
テカラヒ『ちっちゃな炎が出てくる! 便利!』
ヌ・クヌク『なんでも温めることができる。料理やお風呂に最適!』

「また家事系の呪文ばっかじゃねーか! けど使い勝手はよさそうなのが逆に腹立つ……」

 ほんと、神様たちにとっては俺の存在なんかチビ達を守る盾ぐらいの評価なんだろうなぁ。まぁ間違ってないけど。
 早速トテ・モアタタ・カイを使う。
「ぬくいー」
「あたかいのー!」
「お兄ちゃの周りほかほかー」
「……ぬく……」

「あったかい……、ユイ、ギルドへ行こう。モンスターの襲撃が来ているのかもしれない」
「そうだな」

 モンスターが来てたら大変だ。
 外に出ると衛兵が列をなして歩いていた。砲台を乗せた馬車まである。

「衛兵も出ている……結構大きな襲撃のよう……」
「やべ、緊張してきた。今日は何回死ぬかな」
「死ぬのを前提に戦わないで!」

 ルビーに涙目で怒鳴られてしまった。でもランク18がどうこうできる規模じなさそうなんだもん。

「ルビーちゃん、ユイ」
「カレンさん、と、キリさん!」
 二人とも衛兵が進む方向に向かっていた。
「丁度良かった。これから大規模な襲撃が起こるわ。冒険者たちも全員向かっているところよ。貴方たちも手を貸してちょうだい」
「もちろんです……けど、なんでギルドのカレンさんやキリさんまで行くんですか?」

「ユイさま! その言い方は失礼です! カレンさんは元Sランク、ドラゴン相手でも一人で勝てるだけの実力があるんですからね!」
「えええそうだったの!?」

 俺の何倍の強さだよ!
「とっくに引退してるから余り期待はしないでね。頼りにしてるわよ勇者さま」
「俺に言わないでください。俺ができるのはせいぜいデコイぐらいのもんですよ。しかもスライムの攻撃2回で死にますし」

「そ、それは激弱ですね……」
 キリさんの耳が下がる。改めて言われると悲しい。

「街の西に陣を敷け!! 相手はランクD以上のモンスターだ! 一人で戦うな、必ず複数人で戦え!」
 門の上から隊長だと思われる壮年の男が衛兵たちに命令する。

 新兵なのか、剣を持つ手が震えている衛兵もいる。

「隊長さん、俺たちは剣士部隊に入るぜ」
 フルアーマーさん達だ!

「ああ。冒険者たちは好きに動いてくれて構わない。報奨金は必ず出す!」
「お、勇者さまじゃねーか! まだこの街にいたのか!! おーい皆、この戦いに勇者さまが参加なさるぞ!! 絶対勝てるぞ!!!」

 バンバン背中を叩かれる。やめてHP減っちゃうから。
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