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――ふたたびギアスへ――

子どもたちの過去

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 そういう存在なんだと疑問符を飛ばすのは諦め、状況を呑み込む。

 受付の人(この人も同じ顔だった)に手書きの番号札を貰って、ソファに座って呼び出しを待つ。
「ぽーんぽーん」浮いているユーチャが俺の膝の上ではねて遊ぶ。マーチャはルビーの膝の上でウトウトしてる。

 そうこうしているうちに番号を呼ばれた。

「よしいってくる。みんないい子にして待ってろよ。すぐ戻ってくるから」
「はいの!」

 ギルドの受付嬢さんはポニーテールで笑顔が可愛かった。隣の人と同じ笑顔だけど。
「こんにちは、今日はどのようなご用件でしょうか?」
「勇者の登録はありませんか? 四つ子のパーティーで」
 そして背後で足を揺らしながら待つ勇者たちを指さす。
「あんな感じで、髪と瞳の色が違う四つ子のパーティーです。どんな些細な情報でもいいんであったら教えてください」

 お姉さんは台帳をめくってから言った。

「ギルドに登録されている勇者は貴方を含め十人ですが、四つ子のパーティーはありません」
「そうでしたか……。すいません、ありがとうございました」

 うーむ、手がかりがゼロか……。こいつらはギルドに登録してなかったってことか? でもこんな目立つ風貌のパーティーなら行方不明になったって噂ぐらい経ってもよさそうなもんだけど……。

「ティーナさん、どう思いますか!」
 公園の噴水で、水に向かって叫ぶ。
 と。
「お呼びですか救世主様」
 水が盛り上がって全裸の女神が現れた。水が女性の形をかたどったと言ってもいい。
 だから裸! 着せるものが無いのにしかもここ街のど真ん中なのに!!
 焦ってしまった俺を他所に村人たちが言った。

「ティーナ神……! まさか神様を呼び出せるなんて……!」
「ティーナ様、いつも水の恵みをありがとうございます」
「おおお、さすが勇者さまだ。まさか神を呼び出せるとは……!」

 しまった。俺=勇者説が上がってしまった。

「あの、ユーチャ達ってギルドにパーティー登録してないんですけど、どうやってたんでしょうか」

 俺から離れ、風船を配るピエロの列に並ぶ勇者たちを指さす。因みにルビーも風船を貰う列にならんでいた。

「………………。この国では、四つ子は不吉だと言う都市もあります。この子たちは不吉な子と言われて育ってきました。……私に言えるのはこれだけです」
 え……、嘘だろ? こんな底抜けに明るい子供達が?

「だからあの子たちは人間嫌いだったんです。ずっと。貴方が救世主様でよかったとつくづく思っております。あんなに楽しそうにしているのは初めて見ますわ。フェアリーたちのいたずらは範囲も膨大なので、人々の記憶から消えている可能性もありますけど……」

「そう……でしたか……、あいつら、急に大人に戻ったりするんでしょうか?」

「本人がどうしても戻りたいと願えば戻ります。今の勇者さま達には戻りたいと思えるだけの動機は無いでしょうが……」

 風船を貰って上機嫌に跳ね回っている子供たちに目を細める。
 見守ってあげてください。救世主様。
 ティーナさんはその一言を最後に水に消えた。

「……はい」
 返事だけをして、チビ達のところへ戻った。

「ふうふぇん貰ったの! ふわふわ、不思議!」
「ああ、不思議だなー。手を離すなよ。離したら風船さんは雲の上まで逃げて行っちゃうからな」
「わかってまつ」

 ふんす、と決意を表したユーチャの頭を撫でる。

 辛い過去なんか忘れていていい。十年だろうが二十年だろうが、大人になるまで見届けよう。
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