上 下
32 / 108
都市、ギアス

戦国時代の人とかよく刀で殺し合えたなぁ。

しおりを挟む
 ユーチャにそういわれてもなぁ。

 腰の後ろで×印になったベルトを装着し、金を払って外に出る。

「なんだぁその剣。果物ナイフかよ。今からリンゴでもむくつもりかぁ?」
 面白くもない煽り文句を吐きながら、白髪男が金の剣を俺に向けた。

 うっわすげーこええ。
 戦国時代の人とかよく刀で殺し合えたなぁ。こうやって向かい合うだけで冷や汗がでてきそうだよ。

「さすが高いだけあって手になじみやがる……。いままで使った剣とは段違いの攻撃力を感じるぜ」
 男が舌なめずりした。

 俺も左手に青の宝石の剣を、右手に真珠色の宝石の剣を構える。

「ワシも見学するかのお」
「あうう、し、死んだらごめんなさい」

 ドワーフさんと青年も見物に出てきた。死んだらごめんなさいって縁起悪すぎるだろ! もっとポジティブな応援をお願いします店員さん!

 相手は余裕綽々である。にやにやした四人とも、俺に負けるなんてみじんとも想像してないようだ。 俺も俺が勝てるなんてみじんも思ってないけどな!!!

「さっさとやっちまって女共を持って帰るぞ」
「あれだけの女はなかなかいねえからなぁ」

 はじめ、の合図も何もなしに、男がいきなり刀を振るってきた。
「うぁああ!!」
 咄嗟に横に避ける。

 剣が振り下ろされた瞬間、石畳の地面に亀裂が入った。どぅえええ! あの剣強すぎじゃありませんか! こんなの反則だ、ノーカンだノーカン!

「すげえ……! 剣の風圧だけで石まで切るのか」

 男はすぐさま剣を振り上げ、俺の頭上を狙ってきた! やばい、左俺と右俺に生き別れ(死に別れ?)になっちまうぞ!

「うわぁああああ!」

 俺は叫びながら思わず剣をクロスさせて黄金の剣を受け止めた。

 途端に、短剣に埋め込まれていた宝石が光った。青い光が俺の指の隙間から漏れ、俺と、男の顔を青く照らした。真珠色だったはずの方の宝石まで!

「う、うわあああ!」

 次に悲鳴を上げたのは男だった。黄金の剣が瞬く間に凍り付いていく。

「手を放せ!!!」

 ドワーフさんが叫ぶ。相手の男は剣を手放し後ろに下がった。氷は鞘まで伸びていた。後一瞬手放すのが遅かったら男の腕まで氷に侵食されただろう。

 カラン、と地面に落ちると同時に氷は砕けて煙を上げながら消えていった。


「これは……?」

 思わず掌を開いて宝石を確認してしまう。輝きは止み、青の宝石は青いままで、真珠色だった宝石は真珠色に戻っていた。

「そっちのでかい方の弱点は水と氷魔法のようじゃな。剣がそれを判断して氷の魔法剣へと変化させた」
 ドワーフさんが説明した。

 剣から逃げた男が血走った眼でドワーフさんを睨む。

「3200000ルドも取っておいて使えない不良品をおしつけやがったのか!!」

「その剣にはそれだけの価値がある。ワシの傑作のひとつじゃからな。お前さんがそっちの兄ちゃんの剣を持ってみろ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

達也の女体化事件

愛莉
ファンタジー
21歳実家暮らしのf蘭大学生達也は、朝起きると、股間だけが女性化していて、、!子宮まで形成されていた!?

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...