宝石のお姫さま

近衛いさみ

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宝石姫と魔女

宝石姫と魔女3

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 へベッドの持つ毒針のせいで、ベリルはすぐに意識を失ってしまいました。ぐったりとうなだれるベリルをへベッドは嬉しそうに眺めています。このあと起こるであろう石の国の人々の混乱する様子を想像するといても立ってもいられません。
 へベッドは嬉しさのあまり声を出して笑うのを必死に堪え、口を手で押さえながら店を出ていきました。ベリルは床に寝そべったままです。


 しばらくしてメノウが店に帰ってきました。その手には白い花瓶が握られていました。店の中の異変にメノウはすぐに気がつきました。

「ひ、姫さま!!」

 メノウはすぐにベリルの元に駆け寄りましす。

「しっかりしてください」

 メノウはベリルを起こそうと優しく揺すぶります。しかしベリルは目を覚ましません。

「大変だ……」

 慌てるメノウの目に一本の花が目に入りました。色とりどりの花の中で一つだけ不思議な色の花。深い闇に染まってしまったような真っ黒な花が一本ありました。
 メノウはその花を手に持ちました。この花が姫さまが意識をなくしてしまった原因の手掛かりになると思ったのです。

「姫さま。すぐに元気にしてあげるよ」

 店の奥のベッドにベリルを寝かせると、メノウは黒く染まった花を持ち、店を出ていきました。


 メノウはまず情報を探ろうと思いました。メノウは人に会いにいきます。目指すは石の街の酒場です。
 メノウが店に入ると中はとても賑わっていました。店の店主がメノウに声をかけます。

「やぁ、メノウ。今日も店番を抜け出してぶどう酒を飲みにきたのかい?」

「今日は人を探しているんだ。飲んだくれのキルドナはいるかい?」

 メノウの質問に店主が答えます。

「なんだ。あの飲んだくれの魔女さんに会いにきたのかい? 彼女がこの酒場にいない訳ないよ。ほれ。そこの奥の席で酔い潰れてるよ」

 メノウは店主の指差す席に向かっていきました。そこには一人の女性が机に突っ伏して寝ていました。そばにはお酒が入っていた空のビンが何本も転がっています。

「こんばんは。キルドナ。今、話ができる状態かい?」

 キルドナと呼ばれた女性はむくりと起き上がりました。

「なんだい? メノウかい。ワシになんの用だ?」

「ちょっと聞きたいことがあるんだが。ぶどう酒を一本ご馳走するよ」

 そう言うとメノウは店主にぶどう酒を注文しました。
 運ばれてきたぶどう酒をキルドナは嬉しそうに口に運びました。

「それで。このワシになんの話だい?」

「これをみてほしい。この花について知っていることを教えて欲しいんだ」

 メノウは持ってきた黒い花をテーブルにおきました。

「これは……。普通の花じゃないね」

 キルドナはその花をマジマジと見つめました。

「ああ。普通ではありえない色なんだ」

「これは、呪いだね。聞いたことがあるよ。闇の国の魔女に触れたものを黒く染めてしまう呪いを持った魔女がいるって話をね」

「闇の国の魔女……か」

「しかし気をつけた方がいいよ。彼女からはいい噂を聞かないからね。人間が困ってる姿を見ることが大好きな悪い魔女さ」

 キルドナは忠告しました。

「ありがとうよ。キルドナ。とにかく訳ありなんだ。その魔女に会ってみるよ」

 そう言うとメノウは酒場を出ました。闇の国に向かうつもりです。
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