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三話 ボイジャーとミラガー

ボイジャーとミラガー5

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「くっ」

 草をかき分けてリューナが草原を駆けて行く。早い。トロいバフバイスンはまだ何が起きたのか理解できていないだろう。
 バフバイスンの下に入り込んだリューナはおっぱいに飛びついた。バフバイスンの乳首にしがみつく。両手でやっと抱えられるほど大きな乳首だ。両手で挟み込み、リューナはそのまま全力で締め上げた。

「はぁぁぁ」

 声を張り上げ、気合を入れる。しかし、乳首からは一滴も滴が落ちることはなかった。

 10分ほど乳首と格闘していただろうか。流石にバフバイスンも異変に気が付き、身体を激しく揺すった。そのあまりにも大きな力に、リューナは振り落とされた。バフバイスンはそのままけたたましく雄叫びを上げ、走り去ってしまった。
 茫然と草原に寝転んだリューナにボイジャーとコッコが近づく。

「大丈夫?」

 コッコの問いにリューナは顔だけ動かし、返事をした。

「さすがにリューナの力でも無理だな。あの硬い乳首をなんとかしないと採取はできない」

 ボイジャーは腕を組み、考えていた。

「あ、あの。ボクがやってみてもいいかな?」

 遠慮がちにコッコが手を上げた。

「おっ! 何か策があるのか?」

 ボイジャーは驚いた様子でコッコの顔をみた。いつも自分に自信を持てないでいるコッコから、作戦の提案があるとは思わなかったのだ。コッコの顔にはうっすらと自信の色が見えていた。

「昔、とある国に頼まれて物を締め上げる器具を作ったことがあるんだ。そ、その時は武器にされちゃったけど……。それを応用してうまく作れると思うよ」

「そりゃいい! 早速作ってくれ」

「う、うん。でも、簡単でいいから工房が必要だよ。後、鉄の原料も足りない」

 コッコは自分の鞄の中の素材を確認しながら言った。

「オッケー、オッケー。工房は城に掛け合えばなんとかなるだろ。王子様の一大事だしな」

 ボイジャーは言った。続けてリューナが口を開く。いつの間にか立ち上がり、話に加わっていた。

「鉱石は私が取ってこよう。この平原の先の山で取れたはずだ。獰猛なリザードが住むと聞くが、私ならなんとかなるだろう」

「よし! 決まりだ! 乳搾り大作戦の開始だー!!」

 三人は勢いよく天に拳を突き出した。


 リューナは平原の先にある山に到着していた。そこまで大きくはない山だが、森が深く、獰猛なオオトカゲ、ダイガンリザードの住処になっているため人間はほとんど近づかない。そのため、手付かずの自然が残されており、貴重な鉱石も沢山取れると言われている。

 リューナは腰に携えた剣の柄に手を当て、あたりを警戒しながら山道を登っていた。

「なぁなぁ。本当に大丈夫なのか? 今回はお前一人だろ? また昔みたいに臆病風にでも吹かれたら……」

 リューナの腰の剣である魔剣ガステラが言った。リューナは元は戦うことが怖い戦士だったのだ。

「せめて聖剣様も一緒に来てくれたらよかったな~」

 リューナのことを心配するあまり、ガステラも臆病になっているようだ。

「心配するな。皆がいなくてもうまくやってやるさ。それに、あのコッコが作戦を提案したんだ。いつも自信のない、臆病なコッコがだ。私は全力でコッコの力になりたいんだ」

「それはわかるけどよ~」

 リューナは歩みを進めた。

 鉱石が多く取れるのは山の頂上付近にある岩場のはずだ。山の中腹あたりに差し掛かった時だった。リューナは生き物の気配に足を止めた。囲まれている。

「り、リザードか?」

 ガステラが聞いた。

「おそらくな。この山に巣食う魔物。ダイガンリザードだろう」

 リューナは静かに魔剣を鞘から抜いた。
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