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外伝:少年エリアスの世界
Ⅱ
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ふと、暗い部屋で目が覚める。誰もいない真っ暗な部屋。寂しくて、どうしようもなく不安になる。もうすぐ4歳になるから一人で寝るって言ったのに。
枕元に置いてある、母さんが作ってくれた馬の編みぐるみを掴む。僕の馬、スリヤ。今頃、厩舎で眠っているかな。僕の髪と同じ色をした馬。どこかの国の言葉で「お日さま」という意味の名前らしい。
スリヤの分身を抱きしめて目を閉じてみるけど、ちっとも眠くならない。
そっと目を開けると、部屋の隅の暗がりに何かがいる気がした。どうしよう……怖い。涙が溢れてくる。
「かぁさん‥‥」
声に出してしまった瞬間、涙が止まらなくなった。スリヤをぎゅっと抱えて、そっと寝台を下りて、暗闇を避けるように泣きながら隣の部屋へ向かう。扉の向こうから、父さんと母さんの話し声が聞こえてホッとした。起きてる、よかった。
そっと扉を開けると、ランプのほのかな明かりが優しく部屋を照らしていて、少し安心する。
「母さん、父さん‥‥」
寝台の上で何か話をしている二人に、小さな声で呼びかける。父さんが笑いを含んだため息をついて、寝台の下に落ちていたズボンを履いてこっちに来てくれた。そして、優しく抱き上げてくれる。
「どうした? がんばって一人で寝るって言ってたよな?」
その言葉に恥ずかしくて悔しくなり、また涙がこぼれてしまう。
「だって‥‥暗いところに、何か‥‥いたんだもん」
「そうか。暗いところにいるやつとは友達にはなれないか?」
「‥‥わかんない。だって、怖い‥‥」
「そうだな。見えない相手は怖いよな。でも、もしかしたら向こうもお前を怖いって思って、怯えてるだけかもしれないぞ」
父さんが寝台に向かいながら、背中を優しく撫でてそう言う。
「おいで、エリアス。怖かったのね。でも、すごいわ。暗い中を一人でここまで来たんでしょう? 私の王子さまは勇者だわ」
母さんがシーツを捲り、こちらへおいでと優しく促す。寝衣のはだけた母さんの胸元に顔を埋めると、良い匂いがする。父さんと母さんに挟まれて、その温かさを感じているうちに、瞼が重くなってくる。
「いつになったら、ここは私の元に戻ってくるんだ?」
父さんが、僕を挟んで母さんの胸元に頬を寄せる。狭い。でも、ぎゅうぎゅうと挟まれて、なんだか安心してしまう。
「いつだって私のすべてはアビエルのものよ」
母さんの優しい声が聞こえる。違うよ、母さんさんは僕のものだよ! そう言いたかったけれど、眠くて、言葉にならないまま、瞼が重く閉じていく。
枕元に置いてある、母さんが作ってくれた馬の編みぐるみを掴む。僕の馬、スリヤ。今頃、厩舎で眠っているかな。僕の髪と同じ色をした馬。どこかの国の言葉で「お日さま」という意味の名前らしい。
スリヤの分身を抱きしめて目を閉じてみるけど、ちっとも眠くならない。
そっと目を開けると、部屋の隅の暗がりに何かがいる気がした。どうしよう……怖い。涙が溢れてくる。
「かぁさん‥‥」
声に出してしまった瞬間、涙が止まらなくなった。スリヤをぎゅっと抱えて、そっと寝台を下りて、暗闇を避けるように泣きながら隣の部屋へ向かう。扉の向こうから、父さんと母さんの話し声が聞こえてホッとした。起きてる、よかった。
そっと扉を開けると、ランプのほのかな明かりが優しく部屋を照らしていて、少し安心する。
「母さん、父さん‥‥」
寝台の上で何か話をしている二人に、小さな声で呼びかける。父さんが笑いを含んだため息をついて、寝台の下に落ちていたズボンを履いてこっちに来てくれた。そして、優しく抱き上げてくれる。
「どうした? がんばって一人で寝るって言ってたよな?」
その言葉に恥ずかしくて悔しくなり、また涙がこぼれてしまう。
「だって‥‥暗いところに、何か‥‥いたんだもん」
「そうか。暗いところにいるやつとは友達にはなれないか?」
「‥‥わかんない。だって、怖い‥‥」
「そうだな。見えない相手は怖いよな。でも、もしかしたら向こうもお前を怖いって思って、怯えてるだけかもしれないぞ」
父さんが寝台に向かいながら、背中を優しく撫でてそう言う。
「おいで、エリアス。怖かったのね。でも、すごいわ。暗い中を一人でここまで来たんでしょう? 私の王子さまは勇者だわ」
母さんがシーツを捲り、こちらへおいでと優しく促す。寝衣のはだけた母さんの胸元に顔を埋めると、良い匂いがする。父さんと母さんに挟まれて、その温かさを感じているうちに、瞼が重くなってくる。
「いつになったら、ここは私の元に戻ってくるんだ?」
父さんが、僕を挟んで母さんの胸元に頬を寄せる。狭い。でも、ぎゅうぎゅうと挟まれて、なんだか安心してしまう。
「いつだって私のすべてはアビエルのものよ」
母さんの優しい声が聞こえる。違うよ、母さんさんは僕のものだよ! そう言いたかったけれど、眠くて、言葉にならないまま、瞼が重く閉じていく。
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