137 / 161
Ⅲ
56:再会と抱擁
しおりを挟む
馬を走らせながら、アビエルは腕の中の愛しい姿を強く抱きしめた。
「レオニー、レオニー」
その首筋に顔を埋めて彼女の匂いを確かめる。森を抜けて川辺の開けた場所まで来ると馬を止めた。しがみついていたレオノーラが顔を上げ、泣き笑いの顔でアビエルの頬を手で撫でさすった。その頬は涙で濡れていた。
「アビエル。会えて良かった」
そう言って笑みを浮かべる唇にアビエルは深い口づけを落とした。ようやく唇を離すと、レオノーラの頬に自分の頬をあててたまらないように何度も名前を呼ぶ。
「レオニー、レオニー」
彼女に伝えたいことがたくさんあった。でも、言葉が出てこなかった。ただただ、これが自分の切望が作り出した幻でないことを確かめたかった。
二人で抱きしめ合って互いの鼓動を聞く。アビエルがレオノーラの背中に回した手に力を入れた時、傷が痛み、レオノーラが一瞬身をこわばらせた。アビエルが弾かれたように腕の力を抜く。
「すまない。痛かったか?」
回した手のひらを優しく添えるように背中に当てる。
「いいえ、大丈夫よ」
アビエルのシャツを掴んで身を寄せる。再び会えた喜びで体中が歓喜に打ち震えているようだった。
「会いたかった。もう会えないかと思ったの。もう二度とあなたに触れられないかと思った」
その言葉にアビエルはもう一度深い口づけをすると、震える唇で囁いた。
「おまえを守れなくてすまない。ひどい思いをしただろう? 生きて・・・・生きていてくれてありがとう」
レオノーラの首筋に頬をつけながらアビエルはむせび泣いた。レオノーラもアビエルの柔らかい髪に頬をつけて涙を流した。
しばらくそうして二人で身を寄せ合っていたが、日が落ちてきたことに気づき、アビエルが顔を上げる。
「思わずおまえを攫って走ってきてしまったが、暗くなると危険だな。小屋に戻ろうか・・・・ところで、なんであの人たちとここで一緒にいるんだ?」
納得がいかないという様子でアビエルが聞く。
「小屋に戻ってお二方にゆっくり聞くといいと思うわ」
胸元のシャツに額を擦り付けながら笑って言う。アビエルは優しくレオノーラを抱えて、小屋へと向きを変えた。
「レオニー、レオニー」
その首筋に顔を埋めて彼女の匂いを確かめる。森を抜けて川辺の開けた場所まで来ると馬を止めた。しがみついていたレオノーラが顔を上げ、泣き笑いの顔でアビエルの頬を手で撫でさすった。その頬は涙で濡れていた。
「アビエル。会えて良かった」
そう言って笑みを浮かべる唇にアビエルは深い口づけを落とした。ようやく唇を離すと、レオノーラの頬に自分の頬をあててたまらないように何度も名前を呼ぶ。
「レオニー、レオニー」
彼女に伝えたいことがたくさんあった。でも、言葉が出てこなかった。ただただ、これが自分の切望が作り出した幻でないことを確かめたかった。
二人で抱きしめ合って互いの鼓動を聞く。アビエルがレオノーラの背中に回した手に力を入れた時、傷が痛み、レオノーラが一瞬身をこわばらせた。アビエルが弾かれたように腕の力を抜く。
「すまない。痛かったか?」
回した手のひらを優しく添えるように背中に当てる。
「いいえ、大丈夫よ」
アビエルのシャツを掴んで身を寄せる。再び会えた喜びで体中が歓喜に打ち震えているようだった。
「会いたかった。もう会えないかと思ったの。もう二度とあなたに触れられないかと思った」
その言葉にアビエルはもう一度深い口づけをすると、震える唇で囁いた。
「おまえを守れなくてすまない。ひどい思いをしただろう? 生きて・・・・生きていてくれてありがとう」
レオノーラの首筋に頬をつけながらアビエルはむせび泣いた。レオノーラもアビエルの柔らかい髪に頬をつけて涙を流した。
しばらくそうして二人で身を寄せ合っていたが、日が落ちてきたことに気づき、アビエルが顔を上げる。
「思わずおまえを攫って走ってきてしまったが、暗くなると危険だな。小屋に戻ろうか・・・・ところで、なんであの人たちとここで一緒にいるんだ?」
納得がいかないという様子でアビエルが聞く。
「小屋に戻ってお二方にゆっくり聞くといいと思うわ」
胸元のシャツに額を擦り付けながら笑って言う。アビエルは優しくレオノーラを抱えて、小屋へと向きを変えた。
10
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
【R-18】後宮に咲く黄金の薔薇
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらもHOTランキング入りさせて頂けました🤗 5/24には16位を頂き、文才の乏しい私には驚くべき順位です!皆様、本当にありがとうございます🧡
〔あらすじ〕📝小国ながらも豊かなセレスティア王国で幸せに暮らしていた美しいオルラ王女。慈悲深く聡明な王女は国の宝。ーしかし、幸福な時は突如終わりを告げる。
強大なサイラス帝国のリカルド皇帝が、遂にセレスティア王国にまで侵攻し、一夜のうちに滅亡させてしまう。挙げ句、戦利品として美しいオルラ王女を帝国へと連れ去り、皇帝の後宮へと閉じ籠める。嘆くオルラ王女に、容赦のない仕打ちを与える無慈悲な皇帝。そしてオルラ王女だけを夜伽に召し上げる。
国を滅ぼされた哀れ王女と惨虐皇帝。果たして二人の未来はー。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。R作品。ハッピエン♥️
【R-18】執愛される女神の天上と地上の愛
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらもHOTランキング入り(6/22)させて頂きました。ありがとうございます🧡 これも読んで下さる皆様のおかげです✨
〔あらすじ〕📝華界と呼ばれる世界にいる仲の良い兄妹神。最高神の兄神華王が伴侶迎え、兄神を恋慕う妹神彩華にはつらい現実。妹神は兄神への恋情を忘れる為「他の男神に嫁ぎたい」と願い出れば、妹を執愛する兄神の怒りを買い、奥宮へと監禁されてしまう。そうした最中、妹神は兄神の手から逃れ人の世界へ。そこで新たに出逢う大華国の皇帝王華により、過剰に執愛される。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。R18作品。ハピエン♥️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる