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56:再会と抱擁

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 馬を走らせながら、アビエルは腕の中の愛しい姿を強く抱きしめた。

「レオニー、レオニー」

 その首筋に顔を埋めて彼女の匂いを確かめる。森を抜けて川辺の開けた場所まで来ると馬を止めた。しがみついていたレオノーラが顔を上げ、泣き笑いの顔でアビエルの頬を手で撫でさすった。その頬は涙で濡れていた。

「アビエル。会えて良かった」

 そう言って笑みを浮かべる唇にアビエルは深い口づけを落とした。ようやく唇を離すと、レオノーラの頬に自分の頬をあててたまらないように何度も名前を呼ぶ。

「レオニー、レオニー」

 彼女に伝えたいことがたくさんあった。でも、言葉が出てこなかった。ただただ、これが自分の切望が作り出した幻でないことを確かめたかった。

 二人で抱きしめ合って互いの鼓動を聞く。アビエルがレオノーラの背中に回した手に力を入れた時、傷が痛み、レオノーラが一瞬身をこわばらせた。アビエルが弾かれたように腕の力を抜く。

「すまない。痛かったか?」

 回した手のひらを優しく添えるように背中に当てる。

「いいえ、大丈夫よ」

 アビエルのシャツを掴んで身を寄せる。再び会えた喜びで体中が歓喜に打ち震えているようだった。

「会いたかった。もう会えないかと思ったの。もう二度とあなたに触れられないかと思った」

 その言葉にアビエルはもう一度深い口づけをすると、震える唇で囁いた。

「おまえを守れなくてすまない。ひどい思いをしただろう? 生きて・・・・生きていてくれてありがとう」

 レオノーラの首筋に頬をつけながらアビエルはむせび泣いた。レオノーラもアビエルの柔らかい髪に頬をつけて涙を流した。

 しばらくそうして二人で身を寄せ合っていたが、日が落ちてきたことに気づき、アビエルが顔を上げる。

「思わずおまえを攫って走ってきてしまったが、暗くなると危険だな。小屋に戻ろうか・・・・ところで、なんであの人たちとここで一緒にいるんだ?」

 納得がいかないという様子でアビエルが聞く。

「小屋に戻ってお二方にゆっくり聞くといいと思うわ」

 胸元のシャツに額を擦り付けながら笑って言う。アビエルは優しくレオノーラを抱えて、小屋へと向きを変えた。
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