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38:ご褒美

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「ご褒美をくれないかな 」

 寝衣に着替えながらアビエルがレオノーラに向かって言う。部屋のランプを落としながらレオノーラが怪訝そうな顔をした。

「ご褒美‥‥ですか? 一日鉱山を見学したご褒美? 」

 そう言いながらアビエルの脱いだ服をソファから拾い上げる。

「いや、おまえがドミニクと仲良くしているのを黙って我慢していたご褒美だ 」

 レオノーラは、え?という顔をした後、眉間に皺をよせて、え~~、という承服しがたい顔をした。アビエルはレオノーラの腰を引き寄せて、その首筋に唇を落す。

「だいたい、なんであんな楽しそうに声を揃えて笑ったりするんだ。私がどんな気持ちで横に座っていたと思う?」

 レオノーラの白い首元に顔を埋めたまま、くぐもった声で拗ねたように言う。

「‥‥あれは、偶然、声が揃っただけ」

 金色のふわふわの髪に頬を摺り寄せて、背中を撫でる。いい子いい子するように髪の毛漉きながら優しく聞く。

「ご褒美は何がいいですか? 」

 アビエルは、レオノーラの首筋を強く吸って、ついた痕を満足げに眺めたあと、怪しい笑みを浮かべた。

「前に、余裕があればいろいろしたいって言ってただろう? そのいろいろをしてもらおうかと思うんだが 」

 レオノーラの首から上がふっと薄桃色に色づく。アビエルは寝台の端に座り、自分の太ももの上にレオノーラをまたがらせるように座らせた。

「いろいろ、してみたいんだろう? 私からは手を出さないから、いろいろしていいよ 」

 そう言ってレオノーラから手を離し、シーツに手をついた。耳の辺りを赤くしたレオノーラが、しばらく恥ずかしいような困ったような顔をしてためらった後、胸に置いていた手で寝衣の前のボタンをはずしていく。

 肩から手を滑らせてアビエルの上半身から布を取り去ると、その首筋に唇を寄せた。アビエルがいつも自分にしているように、ちゅぅっと吸ってみる。顔を上げてみるとなんの痕もついていない。もう一度唇を落としさっきより少し強く吸ってみる。

「あ、ついた 」

 思わず声がでてしまう。アビエルが愛しそうにその満足げな表情を見つめる。さらに、胸をさすりながら唇を落としいくつか痕をつける。そのまま唇を下ろし、そっと乳首を口に含む。ピクンと一瞬、胸筋が動いた。上目遣いでアビエルの表情を見ると、笑いをこらえているような様子だ。見られていることに気づいて、アビエルは眉を上げた。

「どうして、そんな風なの? 気持ちよくないの?」

「くすぐったい‥‥かな 」

 アビエルの声は少し笑いを含んでいる。レオノーラは体を起こし、手で胸を触った。乳首の周りをさすって指でつまむ。

「あぁ‥‥こっちの方が気持ちいいかも 」

 アビエルの呟きに俄然やる気が出た。片方の乳首を口に含み、もう片方の手できゅっとしまった頂をいじる。固くはりのある胸を撫でさすり、その手を脇腹へとまわず。体を起こし、アビエルの上半身を見つめる。

「‥‥なんて綺麗な体なの 」

 そう呟くとうっとりと見つめながら腹筋のくぼみを指でなぞり、その後を追うように唇を落とす。寝衣のズボンの中に手を滑らせ、固く張り詰めた雄心に手でそっと触れる。

 アビエルがため息をつくように息を吐くのが聞こえる。

 アビエルの胸に頬を押しつけて、目を瞑ったまま、熱い昂ぶりを優しく撫でさする。固く張り詰めたそれは血管を浮かして苦し気に先端から涙を零していた。

 レオノーラはアビエルの膝から降りて、絨毯に膝をつき、足の間に身をおいた。アビエルの腰を浮かせ、ズボンを取り去ると、昂ぶり脈打つその雄心を優しく撫で、そっとその先端の雫を掬うように舌を這わす。

「ん‥‥はぁ」

 アビエルがため息とも呻きともつかない息を吐いて、目を閉じる。それを上目遣いで見つめながら、雄心の先端を吸い上げる。優しく手で撫でながら口に含み扱くように何度も上下させるとアビエルの腰がピクンと反応する。

「レオニー、もう‥‥」

 掠れた声でアビエルが呟き、レオノーラの肩に触れる。ちゅぽん、と雄心から唇を離すと、その先端にチュウと口づけをして手で撫でさする。

「手を出さないって約束だったわ。いやじゃないんでしょう?」

「いやじゃないよ‥‥でも、このままだと‥‥」

「ダメよ‥‥気持ち良くなって。あなたを気持ちよくさせたいの」

 そう言って、また、雄心を口に含んで上下に扱き始める。目の端を赤く興奮させてアビエルが快感の波をやり過ごしている。

 レオノーラは口でアビエルの雄心を愛撫しながら、彼の筋肉のはったふとももの内側に手を這わせ撫でさする。アビエルの呼吸が徐々に粗くなってくるのがわかる。

「あ、レオニーダメだ。ん、離して」

 そう言って肩を掴んでレオノーラを離そうとした瞬間、雄心が一層膨らみを増して脈動した。そしてレオノーラの口の中へ精を吐いた。激しく放出されたそれを口に収めきれず、だらりと口の端からこぼしてしまう。コクンと飲み込んでみたが、喉の奥がイガイガとして美味しいものではなかった。

 粗い息をしたアビエルが、レオノーラの肩を掴み、その様子を見て申し訳なさそうな表情をする。レオノーラは、ふっと笑って、立ち上がって洗面台に行き、口をゆすいで濡れた布巾を持って戻ってきた。

「さすがにあの状態で口づけをするのは、大惨事を起こしそうだから」

 そう言ってアビエルの体を拭き、もう一度その膝にまたがって、口づけを落した。

「随分と余裕だな」

 アビエルがからかうように言うと、レオノーラは頬を彼の胸にあてて、まだ少し早い鼓動を感じながら、目を瞑って笑った。

「そうよ。経験を積んだ分、余裕のある大人の女になったの 」

「そうか‥‥じゃぁ、もっと大人の余裕とやらを見せてもらおうかな」

 アビエルはそう言うと、くるりと体を反転させて寝台の上でレオノーラを組み敷いた。シャツのボタンを外し、あっという間に胸当てまで寝台の外に放り出す。そうしながら首筋に唇を這わせ、胸を揉みしだき、快感を生み出していく。さっき精を吐いたばかりだというのに、アビエルの雄心は再び熱を持って昂っている。

 先ほどの行為ですでに興奮していたレオノーラの体はすぐに快感の波に飲まれてしまい、余裕とはなんのことだったのか、と言うほどに我を忘れてあえぎ始め、そのままアビエルのペースで愛の行為に溺れてしまった。

・・・・・・

 翌日、再び採掘場に行き、教授が調べてみたいという鉱石をいくつか採取したのち、帰途についた。

 ゴルネアの中央政府に戻り、今後の支援について再度話し合いをする。マイセル教授が、

「問題が無いのであれば、暖かくなった頃に私がこちらに参りましょうか。鉱山管理者の方に聞いたところ、地質の専門家が鉱山の管理に携わっているわけではない、と言っていたしね」

 恐らく教授はもっとあの鉱山の近辺を調べてみたいのだろう。許可を得たい、というようにアビエルの方に顔を向ける。

「教授、お気持ちはわかりますが技術者派遣はちゃんと段階を経て進めないとダメですから。まずは、支援の内容をすべて精査してからですよ 」

 鼻息の荒くなった教授を宥めるように、笑いながらアビエルが告げる。

「鉱山をもっと発展させるには、確かに高度な専門知識を持った技術者が必要です。こちらの国にも専門機関があると伺っていますし、そちらへの技術者派遣も具体的に検討しましょう 」

 様々な取り決めの案が出され、結局、晩餐の時間も話し合いは終わらず、広間での食事の間も多くの意見が行き交った。誰もが、国の発展を思い、そのためには何ができるのかを考えている。その空気にレオノーラは、皆が同じ方向を向いて同じ熱量で進んでいけば、大きな国を変えていくことができるのだ、とそう感じた。
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