上 下
89 / 161

8:いつもそばに

しおりを挟む
 アビエルは、ドノバンから「騎士の寮に侵入者があり、レオノーラの部屋が荒らされた」と聞いて、背筋がぞくっとした。グレゴールの事件が頭をよぎったの。

 これまで、レオノーラと距離を取ることで皇室信望者を刺激しないように努めてきた。

 しかし、どんなに距離を置いても、狂信的な者たちは考えを改める気配がないのかもしれない。ならば、むしろ彼女を身近に置き、いつでも守れるようにするべきかと考え、政務の補助をする名目で、彼女を自分の執務室に出仕させることにした。

 もっと早くこうするべきだった。帝都にレオノーラが戻ってからの数カ月、一緒に過ごすことを避けていたことを後悔した。毎日、彼女に会える満足感はもちろんだが、レオノーラは自分の周りで働く誰よりも優秀だった。

 出仕初日、アビエルは宰相との会議中に、届いた書簡を翻訳しておいてほしいと頼んだ。会議を終えて執務室に戻ると、机に高く積まれていた書類がいくつかの山に整理され、各大臣と相談が必要なものはすでに大臣たちに話が通っていた。

 レオノーラは「補佐官の皆さんがおいでになって、自分たちの部署の書類を受け取りたいとおっしゃったので、各大臣様に写し書きをお渡ししておきました」と報告した後、「申し訳ありません、差し出がましいことをしたかもしれません」と伺うように言った。アビエルは思わず彼女を引き寄せて抱きしめた。

「もっと早くこうすれば良かった。」

 ・・・・・・

 先日の貫通式に向かう道中は、レオノーラとずっと一緒にいることができた。

 神聖祭の夜会の時に、

『―寂しかったの、会いたかったー』

 そう言って自分に抱きついてきた彼女を、あれから毎晩思い出しては、今、この瞬間も寂しい思いをさせていると感じて、会いたくて抱きしめたくてどうしようもない気持ちになった。訓練場で会って、他の騎士たちを交えて話をする間、時折、互いに目が合っては想いをかわす。そんな切ない日々から、貫通式への帯同を知らせ、出立までがどれほど待ち遠しかったか。

 帝都からロンテアまでの道中の一週間。他の大臣たちを馬車に押し込めて、レオノーラと馬で移動した。大臣たちに帯同する侍従やら文官やらが多いので、自分にはレオノーラ一人で十分と伝え、侍従は連れて来なかった。宿の上階は貴賓室と侍従用の続き部屋しかない。宿ではずっとそこにレオノーラと閉じこもった。

「アビエル、さすがに大臣方は不審に思わないかしら。その‥‥こう毎日ずっと一緒にいたらどう思われるか」

 4日目の夜、いつものように湯桶に入り、後ろ向きに抱いたレオノーラの体を洗っていると、上目遣いで心配そうな顔をしてアビエルの顔を見る。

「どうせ、何もなくても何かあっても『何かあった』と思われるだろう? だったら、我慢せず、何かある方をちゃんとやろうと思って」

 可愛い胸を泡で丸く洗っていると、その真ん中が赤く主張してくる。泡のついた親指で押すように触れる。レオノーラの体がピクンと揺れて、声を出さないように下唇を噛むのが見えた。

「ん‥‥なんだか理屈が通ってるような、通ってないような‥‥あ、もう、変なところを触ったらダメ」

 するすると下腹部に降りるアビエルの手を制して、自分の脇腹に戻す。

「変なところじゃないよ。疲れた足をマッサージしてあげようと思っただけだ」

 手をレオノーラの引き締まった太ももに置く。膝の上から徐々に足の付け根に向けて揉み上げていく、黙ってマッサージされていたレオノーラだが、足を開かされ持ち上げられている自分のあられも無い格好に気付き、顔を真っ赤にする。

「やめて、アビエル、もういいわ、や、あ、」

 開いた足の間に見える秘裂にアビエルの指が滑り込む。レオノーラの肩に顎を置き、自分の指が滑らかな襞の間に吸い込まれるのをうっとりと見つめる。レオノーラの体がのけぞり、より深く指を咥え込む。

 蜜口の中が入ってくる指に吸い付くように蠢いている。いつの間にか指の動きに合わせて腰を揺らし、浅い息を吐きながらアビエルの腕にしがみついていた。指で襞を割ると中に小さな蕾が見える。

「レオニー、あぁ、可愛いね。どこもかしこも可愛い」

 首筋を吸いながらその赤い蕾を親指でそっと触れる。ビクンとはじけるように体が弾む。

「ダメ、アビエル、あ‥‥」

 アビエルの二の腕を縋るように掴み、首をのけぞらせる。親指で撫でさすっていた蕾をギュッと摘み上げた瞬間レオノーラは全身をこわばらせた。嬌声を飲み込むようにその唇に深い口付けをする。粗い息をするレオノーラの胸郭が大きく上下を繰り返す。しばらく落ち着くのを待った後、湯桶から出て体を拭いてやる。

「‥‥私にも拭かせて」

 小さい声で恥ずかしげに言う姿がまた愛おしい。大きなタオルでアビエルの胸を拭きながら寄り添って口付けをねだる。腰を抱いて寝台まで運び、そっと下ろすと離れたくないというように首に腕を回しギュッと抱きつく。レオノーラのこういう甘える仕草にアビエルはどうしようもなく弱いのだった。

「レオニー、愛してるよ」

 耳元でそう囁くと、レオノーラはさらに首に回した腕にギュッと力を込めて抱きつき、

「アビエル、愛してるわ。私を離さないでね」

 縋るように言ってアビエルの肩に唇をつける。

「離さない。これから先、ずっと、ずっと一緒にいよう。何があっても」

 体を起こし、レオノーラの火照った体ととろんとした表情を見つめて囁く。そして口付けを落としながら、足の間に膝を割り入れ体を押し込む。

「私たちはずっと一つだよ」

 アビエルはそう呟きながら、愛しいレオノーラの中に自分を沈み込ませた。

 ・・・・・・

 貫通式への行き帰りですっかり別離の寂しさを解消した。なおかつそのまま「彼女の能力が必要」と言い張ってレオノーラに政務を手伝ってもらうことにした。

 やってもらってわかった。自分には本当に公私ともに彼女が必要だったのだ。

 合理的で効率の良い彼女の整理法はアビエルの執務時間を恐ろしく短縮した。よく考えれば彼女ほど自分のことを知ってくれている人がいるはずがなかった。

 彼女の働きぶりによって、アビエルの猛烈な政務により逼迫していた皇宮の業務内容は劇的に改善した。彼女のことを「あれ」だの、「あの者」だのと言っていたアーノルド宰相でさえ、その能力を認めざるを得なかった。

 当初は国外からの書簡のやり取りに関する業務を主にやってもらうつもりだったが、出仕を始めて三ヶ月もするとアビエルの秘書的業務全般がレオノーラの仕事になっていた。最初の数日はアビエルの執務室のティーテーブルで仕事をしていたが、来客がある時などに居場所がなくなってしまうので、アビエルの執務室の隣にあった休憩室がレオノーラの執務室になった

 レオノーラは自分用の仕事机を貰えたことがとても嬉しかったようで、以前にアビエルにもらった羽ペンなどを持ってきて自分好みの書き物机をしつらえていた。

「こんな立派な執務机を使わせていただけるなんて、ありがとうございます」

 こんなことで頬を赤らめながら嬉しがるレオノーラに、もっと贅沢をさせたくて、グリエルド製のソファセットを部屋に置き、いつでも休憩に利用したらいいと伝えると、「アビエルも時々ここで休憩したらいいと思うわ」と可愛いことを言う。あまりに可愛いので、その後小一時間、執務室に鍵をかけてソファで休憩を楽しんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...