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10 疾走

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「◎、▲◇!」

うん。
相変わらず言葉はわからないが、話しかけることは大事だよね。
ステータスチェックが終わり、縄梯子に手をかけているのだから「さあ!行こうか」だろう。
だから俺も「行こう!」と声をかける。
発声器官がない上に日本語でだけど。
早く会話してぇ・・・。

そうそう、エストックが使えるようになり使い道のなくなった仲間の形見のバスタードソードは背負い袋にしまわれた。
サイズ的に入ると思えないからマジックバックとかなんだろうが、今はMPが惜しいので我慢。
無事に乗り切れれば鑑定する機会はありそうだからな。

落とし穴の上は特に変わりは・・・あれ?壁の穴が小さくなっている?
そういえば石畳もだいぶ復元しているような?
まぁ、ダンジョンが生物である以上、傷が治るのは理にかなっているか。
生物の体内がこんな状態なのはおかしいが・・・人間だって数多くの細胞やウイルスが入っているのだからそこまで変ではないのかな??

音もたてずに軽やかに動くテレサ。
剣術も見て覚えたのだから、探知や隠密もできるかもしれないな。
テレサの動きを覚えながら意識してみよう。
うまく取得できれば儲けものだ。

ダンジョンを進んでいくと曲がり角の前でなんか変な感触がある。
テレサが床に沿ってそっと剣を角の向こうに突き出した。
ああ・・・剣を鏡として見ようっていうのかな?
鏡ほど綺麗じゃないよ俺。
前の角ではしなかったよね。
これが探知の感覚なのかな??
ああ、そうか。
合体しているから、俺にも探知や隠密のスキルがある状態なんだ。

剣には緑色の何かが写っている。
ゴブリンかはわからないが、大きくなさそうだし、足音もしないからゴブリンなのだろう。
確認したあと、前の曲がり角まで戻り別の道へ・・・ってこっちにも何かいる気配がするぞ?
剣を鏡代わりに見ると、やはりよく見えないがゴブリンっぽいなぁ。
緑色の一塊ではなく、すこし離れている奴もいるみたいだからな。
時間もないし、ここは突っ切るしかないんじゃないか?
まぁ、俺は他の道も知らないし、地図も頭に入っていないから良い意見が言えないけどさ。
それ以前に言葉も話せない・・・ううう・・・

結局、テレサも同じ意見のようだ。
俺と違い、テレサの場合はもたもたしていたら確実に死ぬしな。
それで飛び出したのだが、計算違いに即座に気付いた。
いるのは前衛のゴブリンが3体と弓を持った1対。
そしてはるか後方に1対。
1匹だけ離れたところにいた。
そして戦闘が始まるとそいつが遠吠えを始めやがった。

「GA,GA,GAO~~~N」

より後方に向かって。
遠吠えのゴブリンは十字路に構えていやがる。
探知のスキルがこちらに向かってくる複数の気配をとらえる。
まだ距離はある。
しかし、武装して駆けているから遠方にいるにも関わらず気配を掴めているのだ。

くそっ!!!
ここにいる奴だけではない。
もっと大規模な群れで連携してやがる。
どうする?
時間があるならスカルベンジャーか中ボスの所に誘い込めば数は問題ではなくなる。
平等に生存競争になるからな。
だが、時間に限りがあるうえに、俺たちは大幅にパワーアップした。
突っ切るか?
身体が前に飛び込んだ。
よし、行こう!!!

強化された俺たちは矢のように飛び出し、そのままエストックを先頭にいるゴブリンの口に差し込む。
歯が砕けて飛び、血と脳漿が俺ののどを潤す。

『経験値24、魂魄5を取得しました』

左右から剣が突き出されてくるが・・・遅い。
余裕をもって躱せる。
弓は・・・まだ構えている最中か。
足を狙ってきた右のゴブリンの方が技能レベルは上か?
テレサも同じ思いだったのか右のゴブリンの首に向かって突きを出す。
芯を捉えることはできなかったが、躱しきれもしなかった。
動脈が切れたのか首から鮮血が舞う。
左のゴブリンが刃物を片手に飛び跳ねてくる。
それを余裕をもって腹にエストックを刺す。
そして、刺さったゴブリンを飛んでくる矢の盾とする。
こんな軽々と振り回せるのも、シンクロして筋力が上がっているからだろう。腹を刺されすでに致命傷を負っていたゴブリンの背面からとどめが刺さる。

『経験値20、魂魄5を取得しました』

次の矢は打たせない。
剣に刺さったゴブリンを捨て、首の動脈を切られすでに致命傷を受けながらも傷口を抑えながら襲い掛かってくるゴブリンを避けて、弓を持ったゴブリンのもとへ駆け抜ける。

接近してしまえば弓なんて怖くはない。
たいした鎧も来ていないし、サクッと口から剣を貫き脳漿を味わわせてもらう。

『経験値13、魂魄3を取得しました』

ん?こいつはレベルが低かったか?
頸動脈を切られたというのにゴブリンはまだ剣を持ちヨタヨタと寄ってくるが、追い付かれることもないし助かることもないだろう。
それより奥の十字路にいるゴブリンがさらに奥から迫ってくるゴブリンと合流されると厄介だ。
先に始末させてもらおう。

近づくテレサにこん棒で迎える見張りのゴブリン。
サクッとテレサは始末した。

『経験値9、魂魄3を取得しました』

あ、弓の奴といいこいつらは上位種ではないただのゴブリンかな。
前に鑑定したゴブリンはゴブリンウォーリアという上位種だったもんな。
MPがもったいないから鑑定しないけど。

見渡すと、正面の通路の先にはやはりただのゴブリンが一体。
クソ、伝令役か。
左からはやはり4体のゴブリン。
右からも気配はあるが、通路が曲がっているのでまだ見えない。
それに右の奥ならスカルベンジャーが来るだろう。

『経験値25、魂魄5を取得しました』
『レベルアップしました』
『最大HPが8 最大MPが1 筋力が4 敏捷が4 命中が4 防御が2 抗魔が1 アップしました』
『HPとMPが回復します』
『我慢強さLV1を取得しました』

おっと、さっきのゴブリンが息絶えたか。
思ったよりこっちまで歩いてきたな。
レベルアップによる回復でテレサのHPの回復は・・・ないか。
まぁ、当然といえば当然か。
我慢強さを取得したか。
合体してからテレサの痛覚や感覚も伝わってきてはいるのだが、リビングアーマーになってから痛みに関して感覚が鈍いというかわかるのだが気にならない。
テレビでも見ている感じかな、眉を顰める不快感はあるのだがそれだけ。
だからあまり気にならなかったのだが、テレサはそうでもないようだ。
体の感覚の変化に驚いている。
だが、立ち止まっている暇はないぞ、どうするテレサ?
包囲されるの覚悟のうえで突っ切ることにしたか。
俺たちの速度にそうそう追い付けるものではないだろうしな。
行くか。

奥にいるゴブリンに駆け寄り始末する。

『経験値7、魂魄3を取得しました』

やはり分岐路にいるゴブリンは伝令役の雑魚か。

来た道からゴブリンの遠吠えが聞こえる。

『GI-YA,GI-YA、GI-YA』

ん?さっきとずいぶん違うな。
何やら意味があるみたいだな。

さて、ここは丁字路か。
左に行くか、先に進むかだが、・・・テレサは先に進むか。

「GA,GA,GAO~~~N」

俺たちを発見したゴブリンは最初の遠吠えと同じ遠吠えをした後、後方に逃げに入る。
だが、俺たちから逃げられると思うなよ。
サクッと追い付いて後方から突き刺し、脳漿を味わわせていただく。

『経験値7、魂魄3を取得しました』

後方からはまた遠吠えが聞こえる。

『GI-YA,GI-YA、GI-YA』

それに応えるゴブリンはここで死んでいるよ。
テレサはただまっすぐに駆ける。
う~~ん、テレサのことだからなんかの策があるのかと思っていたが、実はあまり何も考えていない?
まぁ、あまり余裕がないもんな。
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