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2-2 入学

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『『『『『姫!ご入学おめでとうございます』』』』

校門をくぐったらオークが列をなして並んでおり、第一声がこれだ。
・・・おいおい・・・姫って誰だよ。
わたしはいつからオークの姫になったんだ?
わたしは普通の人間ですよ。

『姫、わたしは生徒会長のブヒヒブルです。
何かお困りなことがありましたら、生徒一同が総力をあげて問題を解決しますのでお気軽に声をおかけください』

5人ほどの集団が出てきたと思ったら、私の前で膝をつき一歩前にいたオークがこのようにのたまわった。

『え~と・・・私は普通の入学生として扱っていただければそれでいいのでお気になさらないでください』

こういうことはやめてほしいと遠回しに言ったのだが、通じたかな?

『かしこまりました。
総員!解散!』

生徒会長が一礼をすると『ザッ』と効果音を立てて皆が私に向かって一礼し足並みまで揃って向きを変えて去っていく。
この解散だけでも相当訓練しているよね?
あれ?去っていくメンバーの中に私の弟がいるじゃない!
あんた何をやっているのよ!!
止めなさいよ!!

「ねえちゃ~ん、こっちこっち~~」

新入生はどこかな~と探していると同級生になる予定の弟から声をかけられた。
新入生といっても私以外はみんな寮生活なので後から合流するのはわたしだけだ。
う・・・やっぱりみんな大きいなぁ。
もちろん、新入生だから他の学年のオークに比べウリ坊の模様は濃いし体も小さく細いのだが、あくまでも他のオークと比べて。
わたしと同級生は5歳児と中学1年生くらい違う。
ちなみに同級生たちは遠巻きに私を見ている。

『あれが女か』
『ちっちぇ~~~』
『まだ未成年らしいぞ』
『確か話しかけられるまで話しちゃいけないんだよな?』
『くっそ~~、早く話してぇ・・・』
『なんか困ったことになってくれねぇかな・・・話しかけるきっかけになるのに』

こら待て、最後の奴!
あんたのための私は困りたくないよ!

『校門のあれ・・・なんなのよ・・・』

『ああ・・・姫への挨拶?』

『そう!それ!!なによ姫って!』

思わず弟に指をさしちゃったわよ。

『ははは・・・俺も知らなかったけど、ねぇちゃんはそれだけ特別ってことなんだろ』

まぁ、この弟はつい最近までは同じ家にいたのだから知らなくて当然か。
そういえば、家を離れた弟はわたしと離れた年数が長いほど私への接し方が兄弟のそれから部下か信奉者のそれに代わっていくのよね・・・。
この子はまだ兄弟みたいに接してくれるから気楽でいいけど。

『俺たちだってねえちゃんと同級生ってことで入学式の1週間前から特別合宿授業が義務付けられたんだぜ。授業内容はいかにねえちゃんと接するかだ』

『・・・なにそれ?!』

『無闇に声をかけちゃダメとか、俺たち全員の命は捨ててもいいからねえちゃんに傷ひとつつけるなとかかな』

『多少怪我したからって問題ないわよ。
あんたもそんな馬鹿な話を聞かなくてもいいわよ』

『・・・兄ちゃんたちが怖いから無理』

『あいつら~~・・・なんで家を出るとああ変わっちゃうのかしら?
校門の挨拶の列にもいたのよ?あれじゃぁ弟じゃなくてファンクラブよ』

『小さい兄も板挟みで苦労しているんだよ・・・』

・・・そんなものかしら?
弟相手に愚痴をこぼしていたら入学式がはじまったわ。
まったく・・・愚痴こぼしたいわけではないのに・・・。

『入学おめでとう。
君たちはここで自らに向いた仕事を模索することになる。
きみたちはもう一人前の成人だ。
自分の食い扶持は自分で賄わなければならない。
それができてようやく半人前だ。
一人前とは家族や仲間を養えるようになってはじめて名乗れるものだ』

校長の挨拶なんてどこの世界も同じかと思ったけど、学生といっても成人扱いだとやはり一味違うわね。

『もっとも、今期は特別に未成年者がひとりいる』

んん?わたしのことか?

『当校への入学を数年にわたり熱望してくれた勉学心の強い生徒だ。
この国の希望といっていい』

褒めすぎでしょう。

『そして当校始まって以来のはじめての女生徒だ。
諸君たちもはじめての女性の同輩としていろいろと苦心するかもしれないがくれぐれも彼女に無礼がないようにしてくれ。
彼女はまだ幼いながらも神の恩恵により前世の記憶を持っている祝福されし者だ』

こら!待ちなさいよ!
私が前世の記憶持ちで神の祝福を得ているとか人の秘密を暴きやがって。
しかも神の祝福は持っていないわよ。
ちゃんと神様に「わが子ともいえるこの世界の生き物よりも優遇することはできない」って断られたわよ。
わたしもあんたの秘密を暴くわよ。
え?!
なんで私が校長の秘密を知っているかって?
お見合いの釣書が届いたことがあるからよ。
字の練習がてら求婚のお断りしたもの。
・・・ひょっとしてお断りの報復?

『今、わが国はキングがおられない。
ジェネラルやコートマジシャン、ハイプリーストなどの上位職の合議により辛うじて国の運営はできている。
しかし、正しい状態ではない。
王の加護がない時代しか知らぬ者にはわからぬだろうが、王がいるといないとでは雲泥の差だ。
高位のオークも生まれにくくなっている。
そんな時代に生まれた希望の芽が姫だ。
命を捨てて姫を支えよ!
貴様らすべての命より姫の命は重い!
むしろ、短い期間とはいえ直接姫のために命をささげられるお前たちは選ばれた存在だ!
実力ではなくただ運だけで選ばれたお前たちに嫉妬するものがいるだろう。
だが実力不足は誠意ある行動で下らぬ嫉妬をはねのけろ!
姫に命をささげよ!!』

『『『『『ハッ!!!』』』』』

全員がわたしに向かって敬礼した。
もちろん、校長も。
え~~と・・・できたら私はオークを産まないで恩を返そうかなって考えていたんだけど・・・これはちょっと考えが甘かったかな?
今そんなことを言ったら幽閉されて鎖でつながれて延々と犯され続ける人生に転落しそう。
そりゃこんな教育を受けていたら弟たちの態度が変わっていくわけだわ。
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