VRMMOで遊んでみた記録

緑窓六角祭

文字の大きさ
上 下
3 / 29

[3] クエスト

しおりを挟む
 クエストを受けることになった。普通に狩りをしているよりそっちの方が儲かるらしい。
 受注するにはギルドで手続きする必要があって街で一番大きな建物に向かう。
 いくら大きな建物といっても3人でぞろぞろ入っていくのは邪魔だろうから手続きは燈架に任せて私とクレハは外で待った。

 思ったより時間がかかって暇だったので近くの屋台でクレープを買う。
 クレハがなんか言ってきそうだったので先に口にクレープを突っ込んで黙らせた。これで共犯だ。
 食べてる途中でようやく燈架がギルドから出てくる。そして出てくるなり私を見て「また買い食いなんかして」と言った。
 なんで私だけに言うのか。クレハにも言え。
 つづけて燈架が「私の分のクレープは?」と聞いてきたのだけれど私はそれをすっかり忘れていた。
 その点に関してはほんと申し訳ないことをした。ごめん。

 東の森に行かなくちゃいけないということで移動しつつ詳しい説明を聞く。一番簡単で初心者向けの薬草採集クエストを受けてきたと燈架は話した。
「薬草って昨日街で買ってたじゃん」私の疑問。
「あれは薬草じゃなくて正確には創傷治癒薬草効果成分抽出液だったかな。薬草液とか薬液とか呼ばれたりするけど」クレハの返答。
「なにそれわかりにくい」
「うん。みんなそう思ってるから近々名前が変わるかもねって話だよ」
「それでその薬草となんとか液は何が違うってのよ」
「薬草から有効成分を抽出したのが薬草液。アヘンとモルヒネみたいな関係って言えばいいのかな」
「どっちかというとケシとアヘンの関係じゃないか」燈架の補足。
 なんでこの2人はわざわざ麻薬に例えたのか。まあわかりやすかったんだけども。

 東の森にはその薬草の群生地があって強い魔物もあんまり出ないから初心者が採集するのにおすすめスポットなんだそうだ。
 街を東の門から出て街道を外れればすぐ目的の森までやってくる。
 そこまで背の高い木々が立ち並んでいるわけではないようで見通しが悪いというほどではない。明るい森。
 森の比較的浅いところに木の生えそろってない開けた日の当たる場所があってそういうところにお目当ての薬草の群生地がありますよというのがギルドの人情報。

 道中ブラックウルフだとか手足の生えてるでっかいきのこだとかに遭遇する。そんなザコどもなんて昨日戦い方を覚えた私たちの敵ではない。
 MP節約のためウインドエッジを控えててもそこそこのダメージが入る。燈架も大剣の扱いに慣れてきたようで狙いが外れることがだいぶ少なくなってた。

 ブラックウルフの額を正面から切りつけた時にスパンと小気味いい音が鳴ってすごくいい手ごたえを覚えた。ダメージもすごくてその一発だけで倒すことができた。
 よくわからなかったのだけれどクレハによれば多分クリティカルヒットなんじゃないかという。いいところにいい角度で入るといいダメージになるとかなんとか。はっきりしろ。
 でもなんだかすごく気持ちよかった。少しだけだけれど体が震えた。
 もっとこの感触を味わいたいなとその後も積極的に狙ってったけどその一度きりだった。残念、要研究。

 なんなく薬草の群生地に到着。休憩。
「それでどれが薬草なの」と私が聞くとクレハが「ちょっと待って」と立ち上がって「エクスプローラー」と呪文を唱えた。
 雑草の中でぴかぴかと何かが光る。
 すごい。探し物を見つけてくれる魔法。
「クレハがいるのもこのクエスト受けてきた理由の1つだよ」と燈架が言った。

 きらきらしてる草を見つけて抜いていく。正直なところほかの草との違いはわからない。なんとなく違う気もするけど具体的に何が違うのかはっきり言えない。
 なるほど、魔法使いって思ったより便利だ。パーティに1人いると何かと役立つ。
 覚えることたくさんあって私はあんまりやりたくないけど。クレハに任せておこう。

 近くの草を取りつくしてもうちょっと奥の方に行こうとしたところでなんだか背筋に嫌なものが走った。
 立ち止まる。頭の上で犬耳がピンと立ってる感覚。なんかやばい感じ。
 クレハと燈架に静かにするよう目と手で訴えた。長い付き合いのおかげでどうやら伝わったらしい、2人とも採集の手を止めてくれる。

 やばい雰囲気の正体を確かめるため音をたてないように近づいて木の影からそっと覗いてみる。
 まるまる太った猪が土を掘り返していた。四つん這いの状態で私の身長より大きいでかい猪。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~

ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。 それは現地人(NPC)だった。 その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。 「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」 「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」 こんなヤバいやつの話。

NewLifeOnline〜彼女のライバルはバトルジャンキー勇者だった〜

UMI
SF
第2の世界と言われるゲームNewLifeOnlineに降り立った主人公春風美咲は友達の二条咲良に誘われゲームを始めたが、自分の持つ豪運と天然さ、リアルの度胸で気付いたら友達が追いつけないほど強いトップランカーになっていく物語だ。 この物語はフィクションです。

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと57隻!(2024/12/18時点)(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。かなりGLなので、もちろんがっつり性描写はないですが、苦手な方はダメかもしれません。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。またお気に入りや感想などよろしくお願いします。  毎日一話投稿します。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

CombatWorldOnline~落ちこぼれ空手青年のアオハルがここに~

ゆる弥
SF
ある空手少年は周りに期待されながらもなかなか試合に勝てない日々が続いていた。 そんな時に親友から進められフルダイブ型のVRMMOゲームに誘われる。 そのゲームを通して知り合ったお爺さんから指導を受けるようになり、現実での成績も向上していく成り上がりストーリー! これはある空手少年の成長していく青春の一ページ。

常世の国にて

鯨井イルカ
SF
高齢者はロボットで生活することが努力義務となった時代。 主人公の堂島光はプラスティック製品の検品のパートをしながら、どこか不条理でどこか便利でどこか淋しく、それなりに平穏な日常を送っていた。 百合×ディストピア×日常なかんじのゆるいSFです。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

A.W.O~忘れ去られた幻想世界を最強と最弱で席巻します~

まはぷる
SF
VR技術が一般化した世界。 祇乃一也(しのかずや)は24歳の、しがないゲームメーカーに勤める社会人2年生である。 大晦日の夜、共に過ごす相手もない一也は、会社からひとり寂しくVRMMOのサーバー管理業務を言い渡されていた。 そんな折、10年前にサービス停止していたはずの『アースガルド戦記オンライン』(通称、A.W.O)のサーバーが稼働していることに気づく。 A.W.Oは、当時中学生だった一也が、心血を注いだ初のVRMMORPGだった。 当時のアカウントを消していなかったことを思い出した一也は、懐かしさもあって10年ぶりにログインしてみることにする。 そこには、どういうわけか最新鋭の技術で進化し、千年の時が流れた新たなA.W.Oの世界が広がっていた。 そして、レベルカンストのアバター、神人シノヤとなった一也は、滅びかけた神族側に属する姫騎士エリシアと出会うことになる――というお話。

処理中です...