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恋のライバル登場?

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レゴラスが仕事で王都を離れる朝、由美は見送りの為に城の玄関にいた。
隣には共に運ばれてきたペンタンもいる。

「レゴラス様、お約束のペンタンマスコットです。あまり上手ではないですが、お守りがわりに持っていって下さい。」

ちょっと歪だが、あざとい顔とぷっくりお腹が特徴的なペンタンを手渡す。
綿をたくさん詰め込んであり、もはやぬいぐるみである。

「ペンタン様!!小さくても可愛らしい!肌身離さず持ち歩くことにします。ユミ様、ありがとうございます。」

満面の笑顔で、ペンタンをマントの胸元に差し入れている。

え?そこに入れるの?
丸見えだし、みんなギョッとしてるけど・・・
でも嬉しそうだから何も言えないわ。

他の者も何も言えないらしく、レゴラスはペンタンをそのまま覗かせつつ、出立していった。
「すぐに帰る」と何度も言い、いつまでもこちらに手を振りながら・・・



「とても名残惜しそうに行かれましたね。」

シャロンが笑いを噛み殺している。
フィーゴも頷きながら、疲れた顔をしていた。
フィーゴは今回も留守を預かっており、由美の様子を逐一レゴラスに伝える役目があった。
早馬が何頭も用意してあるらしい。

「ペンタン、喜んでもらえて良かった。シャロンさん、手伝ってくれてありがとう。」

そんな話をしながら、廊下をゾロゾロと歩いている時だった。

「あなたが召喚されたとかいう、その黒い塊の持ち主?」

若い女性に話しかけられ、由美は足を止めた。
廊下をこちらに向かって歩いてくる女性は、使用人を数名従えており、非常に堂々としている。
胸元の豪華なネックレスが眩しい。

うわぁ、なんて綺麗な子。
若いとは思ったけど、よく見るとまだ十代なのかも。
でも大人っぽいドレスが似合うし、色っぽい・・・
うぅっ、私と全然違うじゃん。

長い巻き髪で、この世界の人間にしては小柄だが、整った目鼻立ちが少しキツイ印象を与える。

「ユミ様に失礼ですよ、アローラ公爵令嬢。ペンタン様は黒い塊ではありませんし、ユミ様は創造主で、レゴラス様の妃候補なのですから。」

フィーゴが訂正して諌めながら、ペンタンを運ぶ使用人達に目で合図を送り、先に部屋に戻らせた。
通り過ぎるペンタンを横目で見ながら、令嬢は全く反省するつもりはないらしい。

「だから何だと言うのかしら?私が間違っていて?そこの女が、あの黒い塊に入って動かしているだけでしょう?奇術にもならないし、私でも出来るわ。フフ、こんなどこにでもいる庶民くさい女が妃だなんて、笑っちゃうわ。」

「酷いです!ユミ様は素晴らしいお方で、王子に誰よりも愛されているのですから!!」

由美と仲の良いシャロンが令嬢に食って掛かっているが、由美はむしろ感心していた。

おおっ、美人の公爵令嬢が言うと迫力と説得力が違うわー。
こういうハッキリしてるキャラ、好きなんだよね。
しかも何より、この子が一番正しいことを言っているのが笑える。
確かにペンタンはただの着ぐるみだし、私は庶民だしねー。

由美はむしろ好意すら感じながら令嬢を見ていたのだが、彼女にはそれも余裕な態度に見えて面白くなかったらしい。

「平然としてるなんて、腹の立つ女ね。メイドの躾もなってないし。誰が本当に王子妃にふさわしいか、思い知らせてやるから覚悟なさい!!」

そう言い捨てると、アローラはドレスをひるがえし、颯爽と去っていった。

うんうん、プライド高そうでいい感じ!
ああいう『いかにも』なご令嬢もやっぱりいるものなのね。
テンション上がるわ。

アローラの態度を楽しく観察していた由美だったが、二人には彼女の言葉にショックを受け、言い返せなかったと思われたらしい。
すぐさまフィーゴがレゴラスに知らせる為にその場を離れ、シャロンに心配そうに部屋に誘導されてしまった。

いやいや、私そんなにナイーブじゃないし。

レゴラスが出発して僅か30分、最初の早馬が城から飛び出したのだった。




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