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ペンタンへの愛が重過ぎる王子様
しおりを挟む召喚された翌日の朝、部屋まで迎えにきたレゴラスと共に、由美は王族専用の食堂へ向かっていた。
後ろに、ペンタンを運ぶ使用人達も付いてきている。
毎回ペンタンも移動させるのかな?
なんだか申し訳ない気分・・・
軽く振り返ってペンタンを見ていた由美は、由美の手を軽くとりながら、機嫌良く隣を歩くレゴラスから話しかけられた。
「昨晩はよくお休みになられましたか?そのドレス、よくお似合いですね。とても可愛らしいです。」
レゴラスは嬉しそうだが、由美は全く嬉しくない。
何故なら、ドレスを着た姿がまるで、『写真スタジオでお姫様の格好で写る少女』みたいだからである。
確かに『とても可愛らしい』。
可愛らしいけれども!
なんでこうなっちゃったんだろ。
もっと大人っぽいやつなかったのかな?
背が小さい私が悪いのか?
大人っぽいドレスだと、余計におかしく見えちゃうパターン?
ドレスなどほとんど着たことのない由美には、選び方もよくわからない。
その為、着せられるままになっていたのだが、明るいピンク色のレースたっぷりドレスなど、27の由美には精神的にハードルが高い。
これならペンタンの着ぐるみの方が、顔が見えない分、気が楽である。
「あの、シャロンさんが選んでくれたんですけど、本当にこのドレスおかしくないですか?そもそもこれって大人用なの・・・」
「誰よりも似合っています!こんなに可愛らしく着こなせる方は他におりません!あ、良かったら抱っこしていきましょうか?」
「歩けます!!」
お互い食い気味に返事をしながら、食堂に辿り着いた。
食堂には既に国王夫妻が到着しており、由美を見ると親しげに挨拶をしてくれた。
「おはよう。レゴラスと仲が良さそうで何よりだ。」
「あらあら、可愛いドレス姿ねぇ。レゴラスが楽しそうで、私まで嬉しくなるわ。歳の差なんてたいした問題ではないわよ。」
ん?歳の差?
2歳しか違わないんだけど、もしやまたしても10代だと思われてるんじゃ。
このドレスがいけないのよ!
しかも、お嫁さん扱いはまだ早いから!!
しかし、新入社員が社長に言い返すようなことはしない。
由美も空気が読める社会人なのである。
愛想笑いでやり過ごし、朝食が始まった。
ペンタンが由美の隣に座らされ、前にスープが置かれる。
ペンタン、食べられないから!
むしろ、テーブルマナーに詳しいペンタンなんて笑える。
食べ物を無駄にしたくないので、由美がペンタンの分はいらないと言おうとした時、国王が話し出した。
「ユミは、ペンタンの創造主だと聞いたぞ。素晴らしいじゃないか。あ、そうだった。二人に専属のコックをつけたのだ。料理が口に合わないと辛いだろう。」
うわー、いい人。
いい人だけど、今まさにペンタンの分はいらないと言おうとしたら・・・
創造主のことも否定しなきゃ。
葛藤する由美の前に二人のコックが呼ばれ、紹介された。
二人とも選ばれたことに感無量のようで、意気込みを熱く語られる。
言えないっ!
こんな喜んでいるコックさんの前で、『ペンタンはご飯を食べられないので、担当は必要ありません』なんて、気の毒で言えない。
「ユミとペンタンは何が好物なのだ?」
国王が気を利かせ、質問をした。
コック達も興味津々だ。
「私は、好き嫌いはありません。ここの食事も口に合って、美味しくいただいています。ペンタンは一応ペンギンなので、魚や魚介類を好みます。」
由美は諦めて、大人の回答をした。
ペンタンは冷蔵会社のキャラらしく、公式プロフィールでも魚好きということになっている。
ペンギンだから当たり前だが。
「ペンギン!?ペンギンとはどういった生き物なのですか?残念ながら、私は聞いたことがありません。」
コック達が頷く中、思わぬところでレゴラスが反応した。
ペンギンが気になるらしい。
「この世界にはいないのでしょうか?私の世界では寒い地域に住む鳥類ですね。氷に覆われた土地に生息しています。」
「まあ!良かったわね、レゴラス。『氷の王子』にピッタリじゃない。」
そこ!?
確かに、氷繋がりだったけど。
でもそんなこと、この王子様に言ったら
・・・
「やはり運命ですね!額をこちらへ」
ペンタンのイラストが入った額縁が、使用人からレゴラスに渡される。
絵も持ってきてたの!?
ペンタン本体もいるのに!?
丸い目を更に大きくする由美に、重ねて衝撃の言葉が国王達から聞こえた。
「おおっ!いい絵だな。」
「ずるいわ、私もお部屋に欲しいわ。」
は?
このバッキンガム宮殿もどきを、ユミ・カサハラ美術館にでもするおつもりで?
「いくら父上と母上でもあげられませんよ。このペンタン様のボールペンと共に、いつも私の傍に置く予定です。」
胸ポケットからボールペンも取り出すレゴラス。
ボールペンも持ち歩いてる!
この人、ほんとどれだけペンタンが好きなの!?
ペンタンへの愛が重過ぎる・・・
「お前は本当にユミを愛しているのだな。」
ペンタンへの執着が、由美への執着だと理解している国王が呟いたが、由美には聞こえていなかった。
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