6 / 23
生き返った後、召喚?
しおりを挟む早速、事務服のままペンタンを着てみる由美。
スカートにも関わらず派手に動く由美を気遣い、課長が離れた所で待っている為、志織が甲斐甲斐しく着付けを手伝ってくれている。
「これで後は頭を被せたら終わりですね。課長、ちょっと手伝って下さい!」
ハイハイと言いながら課長が近付き、ペンタンの頭を由美に被せてくれた。
「どう?笠原さん。苦しくない?」
「大丈夫です!私、どんな感じですか?」
手をパタパタと動かしながら見ると、二人が笑っている。
「あははは!由美さん、最高ですよ。可愛いです。」
由美が調子に乗って、ペンタンでポーズを取り始めると、課長が感心し出した。
「上手いものだな。そのまま笠原さんが中に入ればいいんじゃない?」
「発案から、中の人までやるってすごいですね!あ、写真撮らないと。動画も!!」
志織がスマホを由美に向け、動画を撮り始めた時だった。
「笠原さん、危ない!!」
課長の大きな声や、物が割れる音が聞こえた。
振り返ると、まるでスローモーションで自分に迫りくる大きな棚に気付いたが、由美はその場から動けずにいた。
◆◆◆
目を開けると、どこまでも広く白い空間が広がっていた。
目の前には、どうみても日本人には見えない綺麗な女性が、由美と向かい合わせで立っている。
ここはどこ?
確か、急に棚が倒れてきて・・・
由美が体を確認するが、ペンタンを着たままでよくわからない。
痛くないということは、大丈夫だったのだろうか。
由美が手足を動かしていると、突然女性が頭を下げ始めた。
「ごめんなさい!あなたを死なせてしまって。私に出来ることは何でもします!!」
え?死なせてしまって?
私、死んじゃったってこと?
確かに、あの棚の下敷きになってしまったなら、生きているのは難しいかもしれない。
それにしても、この人は誰なのだろうか。
真っ白で床まである長袖のワンピースらしきものを着た女性は、人間離れして見える。
不思議に思って見ていると、頭を戻し、波打った長い髪を後ろに流しながら女性が話し始めた。
「私はセレーン。人間界でいうところの女神の一人です。」
女神様!!
やっぱりここは死後の世界というものなのかしら?
「由美さん達があの倉庫に入ってきた時、私の二人の息子が傍で遊んでいたのです。あ、人間に私達の姿は見えないので、気付かなかったとは思いますが。息子達は日本のアニメにハマっていて、たまたまあの倉庫でカ○ハ○波ごっこをしていたら、波動が棚に当たり、倒れてしまったとのことで・・・」
はい?
つまり、女神様の子供がふざけて、ポーズの有名な例の技をくり出したら棚が倒れて、ペンタンを着て浮かれていた私が巻き込まれて死んだと。
・・・
いやいや、そんなカッコ悪い死に方ってある!?
ペンタン着たままだよ!?
動画を撮ってた志織ちゃんも、トラウマものだよ・・・
せっかくペンタン納品されたのに、お蔵入りかもしれないな。
あ、カニクリームコロッケ食べ損ねた・・・
ショックを通り越し、もはやどうでもいいことが由美の頭を過る。
言葉が出ない由美に、女神がなおも続けた。
「それで、お詫びと言ってはなんですが、由美さんを生き返らせました。」
「え?私、生き返ってるんですか?じゃあまた戻れるんですね?」
しかし、女神は申し訳なさそうに俯いた。
「いいえ、同じ世界には、一度死んだら戻れない決まりなのです。」
戻れないのかい!!
由美は心の中で突っ込んだ。
ぬか喜びだったようだ。
「しかし、由美さんを必要としている、とある世界にお連れしますから!きっと由美さんにも気に入っていただけると思います!!」
自信ありげに力強く言われるが、由美は簡単には信用できなかった。
バカみたいな理由で連れてこられ、また違う世界に行けと言われたのである。
なんで由美がそんな面倒なことをしなければならないのか。
「あの、転生するってことですか?」
由美が確認すると、妙に勿体ぶった言い方で女神が答える。
「いいえ。今の由美さんのままお連れしますよ。ペンタン含めて。」
「は?ペンタン含めて?どういうことですか?大体、なんで私は今もペンタンを着たままなんですか?戸籍とか平気なんですか?」
矢継ぎ早で質問をするが、だんだんと由美は自分が発光していることに気付いた。
ペンタンが輝いているのがわかる。
「そろそろ時間ですね。由美さん、本当に申し訳ないことをしました。お幸せに。」
ちょっと待って、私の質問に全然答えてないじゃない。
自己満足で完結しないでーー!!
そのまま由美は意識を失った。
0
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
出来の悪い令嬢が婚約破棄を申し出たら、なぜか溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
学術もダメ、ダンスも下手、何の取り柄もないリリィは、婚約相手の公爵子息のレオンに婚約破棄を申し出ることを決意する。
きっかけは、パーティーでの失態。
リリィはレオンの幼馴染みであり、幼い頃から好意を抱いていたためにこの婚約は嬉しかったが、こんな自分ではレオンにもっと恥をかかせてしまうと思ったからだ。
表だって婚約を発表する前に破棄を申し出た方がいいだろう。
リリィは勇気を出して婚約破棄を申し出たが、なぜかレオンに溺愛されてしまい!?
【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」
まほりろ
恋愛
聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。
だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗
り換えた。
「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」
聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。
そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。
「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。
※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。
※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。
※二章はアルファポリス先行投稿です!
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます!
※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17
※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
波間柏
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
みんなが嫌がる公爵と婚約させられましたが、結果イケメンに溺愛されています
中津田あこら
恋愛
家族にいじめられているサリーンは、勝手に婚約者を決められる。相手は動物実験をおこなっているだとか、冷徹で殺されそうになった人もいるとウワサのファウスト公爵だった。しかしファウストは人間よりも動物が好きな人で、同じく動物好きのサリーンを慕うようになる。動物から好かれるサリーンはファウスト公爵から信用も得て溺愛されるようになるのだった。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる