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生き返った後、召喚?
しおりを挟む早速、事務服のままペンタンを着てみる由美。
スカートにも関わらず派手に動く由美を気遣い、課長が離れた所で待っている為、志織が甲斐甲斐しく着付けを手伝ってくれている。
「これで後は頭を被せたら終わりですね。課長、ちょっと手伝って下さい!」
ハイハイと言いながら課長が近付き、ペンタンの頭を由美に被せてくれた。
「どう?笠原さん。苦しくない?」
「大丈夫です!私、どんな感じですか?」
手をパタパタと動かしながら見ると、二人が笑っている。
「あははは!由美さん、最高ですよ。可愛いです。」
由美が調子に乗って、ペンタンでポーズを取り始めると、課長が感心し出した。
「上手いものだな。そのまま笠原さんが中に入ればいいんじゃない?」
「発案から、中の人までやるってすごいですね!あ、写真撮らないと。動画も!!」
志織がスマホを由美に向け、動画を撮り始めた時だった。
「笠原さん、危ない!!」
課長の大きな声や、物が割れる音が聞こえた。
振り返ると、まるでスローモーションで自分に迫りくる大きな棚に気付いたが、由美はその場から動けずにいた。
◆◆◆
目を開けると、どこまでも広く白い空間が広がっていた。
目の前には、どうみても日本人には見えない綺麗な女性が、由美と向かい合わせで立っている。
ここはどこ?
確か、急に棚が倒れてきて・・・
由美が体を確認するが、ペンタンを着たままでよくわからない。
痛くないということは、大丈夫だったのだろうか。
由美が手足を動かしていると、突然女性が頭を下げ始めた。
「ごめんなさい!あなたを死なせてしまって。私に出来ることは何でもします!!」
え?死なせてしまって?
私、死んじゃったってこと?
確かに、あの棚の下敷きになってしまったなら、生きているのは難しいかもしれない。
それにしても、この人は誰なのだろうか。
真っ白で床まである長袖のワンピースらしきものを着た女性は、人間離れして見える。
不思議に思って見ていると、頭を戻し、波打った長い髪を後ろに流しながら女性が話し始めた。
「私はセレーン。人間界でいうところの女神の一人です。」
女神様!!
やっぱりここは死後の世界というものなのかしら?
「由美さん達があの倉庫に入ってきた時、私の二人の息子が傍で遊んでいたのです。あ、人間に私達の姿は見えないので、気付かなかったとは思いますが。息子達は日本のアニメにハマっていて、たまたまあの倉庫でカ○ハ○波ごっこをしていたら、波動が棚に当たり、倒れてしまったとのことで・・・」
はい?
つまり、女神様の子供がふざけて、ポーズの有名な例の技をくり出したら棚が倒れて、ペンタンを着て浮かれていた私が巻き込まれて死んだと。
・・・
いやいや、そんなカッコ悪い死に方ってある!?
ペンタン着たままだよ!?
動画を撮ってた志織ちゃんも、トラウマものだよ・・・
せっかくペンタン納品されたのに、お蔵入りかもしれないな。
あ、カニクリームコロッケ食べ損ねた・・・
ショックを通り越し、もはやどうでもいいことが由美の頭を過る。
言葉が出ない由美に、女神がなおも続けた。
「それで、お詫びと言ってはなんですが、由美さんを生き返らせました。」
「え?私、生き返ってるんですか?じゃあまた戻れるんですね?」
しかし、女神は申し訳なさそうに俯いた。
「いいえ、同じ世界には、一度死んだら戻れない決まりなのです。」
戻れないのかい!!
由美は心の中で突っ込んだ。
ぬか喜びだったようだ。
「しかし、由美さんを必要としている、とある世界にお連れしますから!きっと由美さんにも気に入っていただけると思います!!」
自信ありげに力強く言われるが、由美は簡単には信用できなかった。
バカみたいな理由で連れてこられ、また違う世界に行けと言われたのである。
なんで由美がそんな面倒なことをしなければならないのか。
「あの、転生するってことですか?」
由美が確認すると、妙に勿体ぶった言い方で女神が答える。
「いいえ。今の由美さんのままお連れしますよ。ペンタン含めて。」
「は?ペンタン含めて?どういうことですか?大体、なんで私は今もペンタンを着たままなんですか?戸籍とか平気なんですか?」
矢継ぎ早で質問をするが、だんだんと由美は自分が発光していることに気付いた。
ペンタンが輝いているのがわかる。
「そろそろ時間ですね。由美さん、本当に申し訳ないことをしました。お幸せに。」
ちょっと待って、私の質問に全然答えてないじゃない。
自己満足で完結しないでーー!!
そのまま由美は意識を失った。
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