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ハロウィンの約束
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花屋で接客をしながらも、サラの頭の中はジャックのことで一杯だった。
朝の会話は全部私の妄想だったのかも。
かぼちゃが話すなんて、あるはずないものね。
冷静になって考えてみるが、もし妄想だったらそれはそれでショックだ。
あの幸せな気分を勘違いで終わらせたくはなかった。
お客さんが途切れた隙に、居ても立ってもいられなくなったサラは二階の自室に駆け込んだ。
「ジャック!! いる?」
息を切らせながら声を掛けたサラだったがーー。
「サラ? いるよ。仕事はもう終わったのかい?」
のほほんとしたかぼちゃのジャックの声が返ってきた。
思わず力が抜けて、入口でへたりこんでしまう。
良かった。
ジャック、ちゃんといてくれた。
私の妄想じゃなかった。
安心したら涙が出てきてしまった。
「サラ? もしかして花屋で何かあったのかい? あ、また変な男が見てたとか?」
変な男?
またってなんの事かしら。
確かに変な視線を以前は感じていたけれど。
「何もないわ。ジャックがまだいてくれてるか心配になっちゃっただけ。ところで変な男って?」
「ん? あれ? 誰だっけな。サラが変な男に付きまとわれている気がしたんだ。なんでそんなこと思ったのか自分でも不思議なんだけど」
ジャックは無自覚に口に出していたのか、自分でも戸惑っているようだ。
でも心配してもらえたことは嬉しい。
「ありがとう、ジャック」
お礼を言っていると、お店から声がした。
「すみませーん、お花欲しいんですけどー」
いっけない、お店放ってきちゃったわ。
「いま行きます。ちょっとお待ちください!!」
慌てて叫んだサラは、ジャックにも小声で言う。
「慌ただしくしてごめんね。お店終わったらすぐ戻るから」
「僕はここにいるから安心して。また後でおしゃべりしよう」
「うん!!」
サラは元気に花屋の仕事に戻っていった。
もうさっきまでの不安など微塵もない。
ただお店が終わるのが楽しみだった。
閉店後、サラはキッチンで料理をしながら話しかける。
「ジャックもご飯が食べられたら良かったのにね」
たいして広さが無い部屋なので、キッチンからでもサラの声は届いていた。
「そうだね。でもせっかくの料理が見えないし、匂いもわからないからな」
「かぼちゃをこっそり食べさせたら、共食いになっちゃうわね」
「サラ!! 僕にかぼちゃの自覚はないけど、なんか怖いからやめて。前歯が無いからうまく食べられないしね」
サラの冗談に、更に自虐的なジャックの冗談が続く。
「あはは! 奥歯があれば大丈夫よ。ふふふ」
「君の失敗でこうなっているのに笑うなんて酷いな。ははっ」
ジャックとの会話は楽しく、笑いが絶えなかった。
「ねえ、ジャック。食べられなくても構わないから、ハロウィンは一緒にパーティーしましょう。私、ご馳走作るから」
「それはいいね。今から楽しみだ」
「約束よ」
ご馳走は何にしようかしら。
パーティなんて久しぶりだわ。
ジャックと過ごすハロウィンに、サラの胸は期待に膨らんでいた。
朝の会話は全部私の妄想だったのかも。
かぼちゃが話すなんて、あるはずないものね。
冷静になって考えてみるが、もし妄想だったらそれはそれでショックだ。
あの幸せな気分を勘違いで終わらせたくはなかった。
お客さんが途切れた隙に、居ても立ってもいられなくなったサラは二階の自室に駆け込んだ。
「ジャック!! いる?」
息を切らせながら声を掛けたサラだったがーー。
「サラ? いるよ。仕事はもう終わったのかい?」
のほほんとしたかぼちゃのジャックの声が返ってきた。
思わず力が抜けて、入口でへたりこんでしまう。
良かった。
ジャック、ちゃんといてくれた。
私の妄想じゃなかった。
安心したら涙が出てきてしまった。
「サラ? もしかして花屋で何かあったのかい? あ、また変な男が見てたとか?」
変な男?
またってなんの事かしら。
確かに変な視線を以前は感じていたけれど。
「何もないわ。ジャックがまだいてくれてるか心配になっちゃっただけ。ところで変な男って?」
「ん? あれ? 誰だっけな。サラが変な男に付きまとわれている気がしたんだ。なんでそんなこと思ったのか自分でも不思議なんだけど」
ジャックは無自覚に口に出していたのか、自分でも戸惑っているようだ。
でも心配してもらえたことは嬉しい。
「ありがとう、ジャック」
お礼を言っていると、お店から声がした。
「すみませーん、お花欲しいんですけどー」
いっけない、お店放ってきちゃったわ。
「いま行きます。ちょっとお待ちください!!」
慌てて叫んだサラは、ジャックにも小声で言う。
「慌ただしくしてごめんね。お店終わったらすぐ戻るから」
「僕はここにいるから安心して。また後でおしゃべりしよう」
「うん!!」
サラは元気に花屋の仕事に戻っていった。
もうさっきまでの不安など微塵もない。
ただお店が終わるのが楽しみだった。
閉店後、サラはキッチンで料理をしながら話しかける。
「ジャックもご飯が食べられたら良かったのにね」
たいして広さが無い部屋なので、キッチンからでもサラの声は届いていた。
「そうだね。でもせっかくの料理が見えないし、匂いもわからないからな」
「かぼちゃをこっそり食べさせたら、共食いになっちゃうわね」
「サラ!! 僕にかぼちゃの自覚はないけど、なんか怖いからやめて。前歯が無いからうまく食べられないしね」
サラの冗談に、更に自虐的なジャックの冗談が続く。
「あはは! 奥歯があれば大丈夫よ。ふふふ」
「君の失敗でこうなっているのに笑うなんて酷いな。ははっ」
ジャックとの会話は楽しく、笑いが絶えなかった。
「ねえ、ジャック。食べられなくても構わないから、ハロウィンは一緒にパーティーしましょう。私、ご馳走作るから」
「それはいいね。今から楽しみだ」
「約束よ」
ご馳走は何にしようかしら。
パーティなんて久しぶりだわ。
ジャックと過ごすハロウィンに、サラの胸は期待に膨らんでいた。
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