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ラスボスに勝ったその後は
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「今のはナシだナシ!!やり直しだーー!!」
兄が見苦しく叫んでいる。
ヒューゴの勝利は誰が見ても明らかだったが、仏のヒューゴはもう一度テオドールにチャンスをあげるべきか悩んでいるようだ。
甘いぜ、ヒューゴ。
でもダガーが似合うから、もう少し見ていたい気もする。
「もう一度だけだぞ?」
ヒューゴが溜め息混じりに言うと、兄の顔がパァァっと輝いた。
いやいや、戦場でやり直しなんて普通にあり得ないからね?
特別だよ?
しかし3分後、テオドールは今度は2本のダガーを突き付けられていた。
どう見ても兄の負けである。
「チックショー!!今日は調子が悪かっただけだ!覚えてろよ!!」
兄は、お手本のような負け犬の遠吠えを披露すると、あっという間に駆け去った。
これはコントか?
でも観客は大いに沸いた。
所詮兄は前座扱いだからこれでいいのだ。
満を持して、ラスボスが登場した。
我が父ながら、オーラが半端ない。
今日も背中の『闘魂』の文字が輝いている。
「将軍!そんな小童、ぶちのめせーー!!」
「旦那さまー、格好いいーー!!」
兄と違って父は人気が高い。
あ、お母さんもお父さんを応援してる……
あれ?私ってば、家族みんな敵なの?
チェッ、寂しくなんかないやい!!
心なしか、ヒューゴが一瞬怯んだ気がした。
すかさず宰相が檄を飛ばす。
「ヒューゴ!落ち着け!!お前なら出来る!!」
せっかく落ち着きを取り戻したヒューゴに、父がわざと挑発し始めた。
「ヒューゴ、お前は俺以上にルーを守れる自信があるか?ないなら引け!ルイーザはまだ嫁には出さん!諦めろ!!」
しかし今度はヒューゴも一歩も引かずに言い放った。
「将軍の役目こそもう終わりですよ。これからは私が、そしてコックス家が永遠にルイーザを守ります!!」
宰相が隣でうんうんと頷いている。
私、なんだか深窓のお姫様みたいじゃない?
嬉し恥ずかしいとはこういうことか……
私が照れている間に、闘争心がMAXになった二人は睨み合い、剣を構えた。
これで全てが決まる。
号令と共にまずヒューゴが攻めた。
しかし父は笑いながら軽くいなしている。
本当にあの技をやる気なのかな?
きっと最初に仕掛けるつもりだったんだろうけど、お父さんに隙が無さ過ぎる……
チャンスが巡って来ればいいけど。
私は祈ったが、次第に攻め続けているヒューゴに疲れが見え始めた。
テオドールと2度も対戦した後なのだから当然だ。
このままでは不味い。
「ヒュー、頑張ってーー!!」
私が叫んだ時だった。
踏み込んだヒューゴが父の剣先を絡めとり、剣を宙へと巻き上げた。
……ワァァァァ!!
短い静寂の後、決闘場が歓声で揺れた。
ヒューゴの勝ちだ!!
地面に刺さった自分の剣を抜くと、父がヒューゴへと歩み寄った。
「見事な技だったな。ルーを頼む」
父が差し出した右手をヒューゴが両手で握った。
「ありがとうございます、義父上」
私は胸が一杯になってしまい、無意識に観覧席を駆け降りると、ヒューゴへ抱き付いていた。
「ヒュー!!おめでとう!!ありがとう……」
ヒューゴは私をしっかりと抱きとめると、いつもの頭ポンポンをしてくれた。
「ルーの応援のおかげだ。ありがとう、ルー」
そして私からそっと離れると、その場で片足をついて私を見上げた。
「ルイーザ・ガルシア侯爵令嬢、あなたを誰より愛しています。どうか私と結婚してください」
掌には可愛らしい指輪のケースが乗っていて、コックスの紋章の入ったシルバーの指輪が収まっていた。
あ、これって、ヒューゴパパとママが付けている指輪……
コックス家の跡取りだけが許されるゴールドの指輪と、その正妻だけに許されたシルバーの指輪。
紋章入りのお揃いの指輪は、先祖代々コックス家に伝わる習わしだった。
「私も誰よりもあなたを愛しています」
緊張しつつもしっかりとヒューゴの目を見ながら答えたら、満足そうに微笑みながら、台座から抜いた指輪を私の左手の薬指にそっと嵌めてくれた。
うわ、ピッタリ!
リングを貰ったのなんて、前世含めて初めてだよー!!
「見て見て!似合う?どう?」
芸能人のように、顔の横で指輪を見せつけるように手の甲側を父に向けた。
「ああ、似合う似合う」
悔しさを滲ませながら、でも嬉しそうに父が笑った。
「お嬢ー!こっちにも見せてーー!!」
遠くて見えないだろうに、盛り上がった観客達からも声がかかり、応えるように「ジャーン」とか言いながらところ構わず見せびらかしてみた。
嬉しいのだから大目に見て欲しい。
立ち上がったヒューゴが隣に立ち、私の肩を抱くと、一段と声援が大きくなった。
「ルー、早く日取りを決めよう。一日も早く一緒に暮らしたい」
「私も」という言葉は、突如戻ってきた兄に遮られた。
「待て待てーい!イチャつくのは式が終わるまで禁止だからな!!ルーに気安く触るなよ?」
無様に負けたくせに…と思いつつ、結婚式の日までは家族と過ごす時間を大切にしたいと心に決めた。
兄が見苦しく叫んでいる。
ヒューゴの勝利は誰が見ても明らかだったが、仏のヒューゴはもう一度テオドールにチャンスをあげるべきか悩んでいるようだ。
甘いぜ、ヒューゴ。
でもダガーが似合うから、もう少し見ていたい気もする。
「もう一度だけだぞ?」
ヒューゴが溜め息混じりに言うと、兄の顔がパァァっと輝いた。
いやいや、戦場でやり直しなんて普通にあり得ないからね?
特別だよ?
しかし3分後、テオドールは今度は2本のダガーを突き付けられていた。
どう見ても兄の負けである。
「チックショー!!今日は調子が悪かっただけだ!覚えてろよ!!」
兄は、お手本のような負け犬の遠吠えを披露すると、あっという間に駆け去った。
これはコントか?
でも観客は大いに沸いた。
所詮兄は前座扱いだからこれでいいのだ。
満を持して、ラスボスが登場した。
我が父ながら、オーラが半端ない。
今日も背中の『闘魂』の文字が輝いている。
「将軍!そんな小童、ぶちのめせーー!!」
「旦那さまー、格好いいーー!!」
兄と違って父は人気が高い。
あ、お母さんもお父さんを応援してる……
あれ?私ってば、家族みんな敵なの?
チェッ、寂しくなんかないやい!!
心なしか、ヒューゴが一瞬怯んだ気がした。
すかさず宰相が檄を飛ばす。
「ヒューゴ!落ち着け!!お前なら出来る!!」
せっかく落ち着きを取り戻したヒューゴに、父がわざと挑発し始めた。
「ヒューゴ、お前は俺以上にルーを守れる自信があるか?ないなら引け!ルイーザはまだ嫁には出さん!諦めろ!!」
しかし今度はヒューゴも一歩も引かずに言い放った。
「将軍の役目こそもう終わりですよ。これからは私が、そしてコックス家が永遠にルイーザを守ります!!」
宰相が隣でうんうんと頷いている。
私、なんだか深窓のお姫様みたいじゃない?
嬉し恥ずかしいとはこういうことか……
私が照れている間に、闘争心がMAXになった二人は睨み合い、剣を構えた。
これで全てが決まる。
号令と共にまずヒューゴが攻めた。
しかし父は笑いながら軽くいなしている。
本当にあの技をやる気なのかな?
きっと最初に仕掛けるつもりだったんだろうけど、お父さんに隙が無さ過ぎる……
チャンスが巡って来ればいいけど。
私は祈ったが、次第に攻め続けているヒューゴに疲れが見え始めた。
テオドールと2度も対戦した後なのだから当然だ。
このままでは不味い。
「ヒュー、頑張ってーー!!」
私が叫んだ時だった。
踏み込んだヒューゴが父の剣先を絡めとり、剣を宙へと巻き上げた。
……ワァァァァ!!
短い静寂の後、決闘場が歓声で揺れた。
ヒューゴの勝ちだ!!
地面に刺さった自分の剣を抜くと、父がヒューゴへと歩み寄った。
「見事な技だったな。ルーを頼む」
父が差し出した右手をヒューゴが両手で握った。
「ありがとうございます、義父上」
私は胸が一杯になってしまい、無意識に観覧席を駆け降りると、ヒューゴへ抱き付いていた。
「ヒュー!!おめでとう!!ありがとう……」
ヒューゴは私をしっかりと抱きとめると、いつもの頭ポンポンをしてくれた。
「ルーの応援のおかげだ。ありがとう、ルー」
そして私からそっと離れると、その場で片足をついて私を見上げた。
「ルイーザ・ガルシア侯爵令嬢、あなたを誰より愛しています。どうか私と結婚してください」
掌には可愛らしい指輪のケースが乗っていて、コックスの紋章の入ったシルバーの指輪が収まっていた。
あ、これって、ヒューゴパパとママが付けている指輪……
コックス家の跡取りだけが許されるゴールドの指輪と、その正妻だけに許されたシルバーの指輪。
紋章入りのお揃いの指輪は、先祖代々コックス家に伝わる習わしだった。
「私も誰よりもあなたを愛しています」
緊張しつつもしっかりとヒューゴの目を見ながら答えたら、満足そうに微笑みながら、台座から抜いた指輪を私の左手の薬指にそっと嵌めてくれた。
うわ、ピッタリ!
リングを貰ったのなんて、前世含めて初めてだよー!!
「見て見て!似合う?どう?」
芸能人のように、顔の横で指輪を見せつけるように手の甲側を父に向けた。
「ああ、似合う似合う」
悔しさを滲ませながら、でも嬉しそうに父が笑った。
「お嬢ー!こっちにも見せてーー!!」
遠くて見えないだろうに、盛り上がった観客達からも声がかかり、応えるように「ジャーン」とか言いながらところ構わず見せびらかしてみた。
嬉しいのだから大目に見て欲しい。
立ち上がったヒューゴが隣に立ち、私の肩を抱くと、一段と声援が大きくなった。
「ルー、早く日取りを決めよう。一日も早く一緒に暮らしたい」
「私も」という言葉は、突如戻ってきた兄に遮られた。
「待て待てーい!イチャつくのは式が終わるまで禁止だからな!!ルーに気安く触るなよ?」
無様に負けたくせに…と思いつつ、結婚式の日までは家族と過ごす時間を大切にしたいと心に決めた。
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