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結婚なんて致しません。
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ソフィーは17歳になった。
世間一般に結婚適齢期と言われるソフィーの元には、日々釣書が届いているらしい。
興味はないが。
ソフィーは子爵家の令嬢である。
通常なら他家へ嫁入りし、女主人として家を守り、その地位を磐石にするべく社交界に顔を出したりするものであった。
しかしソフィーは、結婚する気などさらさらなかった。
ソフィーの夢は、自分で商会を起こし、切り盛りすることなのである。
どこぞの家を守っている場合ではないのだ。
女だって、バリバリ働いてやるんだから!!
目指せ、自立!!
ソフィーは家族にも自分の夢を話し、家族もソフィーの夢を尊重してくれた。
兄がいる為、跡取りには困らなかったのである。
理解のある家族に感謝しながら、服飾の店を開く為に勉強をしていたある日。
「ソフィー、すまない!どうしても断れない見合い話が来てしまったんだ。断っていいから、顔だけ出してくれないか?」
ソフィーの父が、部屋に駆け込んできた。
申し訳なさそうに眉が下がり、手を合わせている。
「お父様、結婚したくないというのが、私のワガママなのはよくわかっておりますわ。お父様にもご迷惑をかけてごめんなさい。お会いするだけで良いのでしょう?」
「ああ、もちろん。僕だってお嫁に行かせたい訳じゃないからね。顔だけ立ててもらえれば・・・」
「だったら問題ありませんわ。パッと行って、ガツンとお断りするだけですもの。」
「出来れば、パッと行って、やんわりお断りで頼むよ。」
「仕方ありませんわね。」
こうして、父の顔を立てる為だけに、ソフィーはお見合いの場へ出かけることになったのである。
お見合いの相手は、ローゼン伯爵の長男、ライアン。
伯爵がそろそろ引退を考えている為、早く息子が所帯を持つことを望んでいるのだが、ライアンはその気が全然無く、伯爵が何度もお見合いの場を設けているのに、断り続けているらしい。
え、だったら余裕でお断り出来るじゃない。
むしろ、向こうからガツンと断ってくれそうね。
なんとなくライアンって言う名前は聞き覚えがあるような。
令嬢に靡かない冷徹な男だとかなんとか・・・
ま、こちらには好都合だし、どうでもいいことだけど。
予想以上に、あっという間に片が付きそうで、ソフィーはほくそえんだ。
お見合い当日、ソフィーは父に連れられ、ローゼン伯爵の屋敷へと向かった。
このワンピース、シルエットがいまいちなのよね。
帰ったら、いっそこの辺を大胆に切って、縫い合わせちゃおうかしら。
まだ到着する前から、もう帰ることを考えていた。
「ようこそ、我が家へ。手間を取らせて悪いね。」
ローゼン伯爵と思われる初老の男性が迎えてくれた。
ライアンらしき人影はない。
「息子はもう少ししたら帰ってくると思うんだが・・・」
やった!
よほどお見合いが嫌で、逃げ出したと見えるわ。
このまま帰って来なければ、このまま破談になるじゃない。
帰ってくるなー、帰ってくるなー。
ソフィーは思わず下を向いて、口がにやけるのを隠した。
天気がいいからと、伯爵に庭へ案内された。
ガゼボでお茶をするらしい。
香りの良いお茶をいただき、あとはこのまま時間が過ぎるのを待つだけだと、ソフィーが考えていた時だった。
「お待たせして申し訳ありません。」
神経質そうな男性の声がした。
あーあ、帰って来ちゃったわ。
無理に顔を出さなくてもいいのに・・・。
そう心の中でため息を吐きつつ、気合で笑顔を作って立ち上がる。
ライアンの顔をとらえ、瞳に映した瞬間だった。
!!!
ソフィーは雷に打たれた気がした。
うっそ、なに、この顔!!
めちゃくちゃ好みなんですけどー!!
ソフィーはライアンの顔を、ただ見つめることしか出来なかった。
世間一般に結婚適齢期と言われるソフィーの元には、日々釣書が届いているらしい。
興味はないが。
ソフィーは子爵家の令嬢である。
通常なら他家へ嫁入りし、女主人として家を守り、その地位を磐石にするべく社交界に顔を出したりするものであった。
しかしソフィーは、結婚する気などさらさらなかった。
ソフィーの夢は、自分で商会を起こし、切り盛りすることなのである。
どこぞの家を守っている場合ではないのだ。
女だって、バリバリ働いてやるんだから!!
目指せ、自立!!
ソフィーは家族にも自分の夢を話し、家族もソフィーの夢を尊重してくれた。
兄がいる為、跡取りには困らなかったのである。
理解のある家族に感謝しながら、服飾の店を開く為に勉強をしていたある日。
「ソフィー、すまない!どうしても断れない見合い話が来てしまったんだ。断っていいから、顔だけ出してくれないか?」
ソフィーの父が、部屋に駆け込んできた。
申し訳なさそうに眉が下がり、手を合わせている。
「お父様、結婚したくないというのが、私のワガママなのはよくわかっておりますわ。お父様にもご迷惑をかけてごめんなさい。お会いするだけで良いのでしょう?」
「ああ、もちろん。僕だってお嫁に行かせたい訳じゃないからね。顔だけ立ててもらえれば・・・」
「だったら問題ありませんわ。パッと行って、ガツンとお断りするだけですもの。」
「出来れば、パッと行って、やんわりお断りで頼むよ。」
「仕方ありませんわね。」
こうして、父の顔を立てる為だけに、ソフィーはお見合いの場へ出かけることになったのである。
お見合いの相手は、ローゼン伯爵の長男、ライアン。
伯爵がそろそろ引退を考えている為、早く息子が所帯を持つことを望んでいるのだが、ライアンはその気が全然無く、伯爵が何度もお見合いの場を設けているのに、断り続けているらしい。
え、だったら余裕でお断り出来るじゃない。
むしろ、向こうからガツンと断ってくれそうね。
なんとなくライアンって言う名前は聞き覚えがあるような。
令嬢に靡かない冷徹な男だとかなんとか・・・
ま、こちらには好都合だし、どうでもいいことだけど。
予想以上に、あっという間に片が付きそうで、ソフィーはほくそえんだ。
お見合い当日、ソフィーは父に連れられ、ローゼン伯爵の屋敷へと向かった。
このワンピース、シルエットがいまいちなのよね。
帰ったら、いっそこの辺を大胆に切って、縫い合わせちゃおうかしら。
まだ到着する前から、もう帰ることを考えていた。
「ようこそ、我が家へ。手間を取らせて悪いね。」
ローゼン伯爵と思われる初老の男性が迎えてくれた。
ライアンらしき人影はない。
「息子はもう少ししたら帰ってくると思うんだが・・・」
やった!
よほどお見合いが嫌で、逃げ出したと見えるわ。
このまま帰って来なければ、このまま破談になるじゃない。
帰ってくるなー、帰ってくるなー。
ソフィーは思わず下を向いて、口がにやけるのを隠した。
天気がいいからと、伯爵に庭へ案内された。
ガゼボでお茶をするらしい。
香りの良いお茶をいただき、あとはこのまま時間が過ぎるのを待つだけだと、ソフィーが考えていた時だった。
「お待たせして申し訳ありません。」
神経質そうな男性の声がした。
あーあ、帰って来ちゃったわ。
無理に顔を出さなくてもいいのに・・・。
そう心の中でため息を吐きつつ、気合で笑顔を作って立ち上がる。
ライアンの顔をとらえ、瞳に映した瞬間だった。
!!!
ソフィーは雷に打たれた気がした。
うっそ、なに、この顔!!
めちゃくちゃ好みなんですけどー!!
ソフィーはライアンの顔を、ただ見つめることしか出来なかった。
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