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ラストは二択からご自由に

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私、アメリアと、クロードがいい雰囲気で見つめ合う中。

「じゃあ今度は私の番かなぁ。」

蠱惑的な微笑みを浮かべながら、一人取り残されていたセレンが、ステージから軽やかに降りてきた。

可憐で目を惹くけど、あの顔は何か面白いことを思い付いた時の顔ね。
セレンが一番過激だから、絶対敵に回さない方がいいのに。
御愁傷様。

この後に繰り広げられるであろう惨劇に、僅かな同情と、大きな期待を寄せる。

セレンはアーサーに近付き、肩に手を添えると、甘えるような声で言った。

「ねえ、アーサー様。この前私に、『お前の容姿なら傍に置いてやってもいい。せいぜい身綺麗にして、俺の隣で微笑んでいろ』っておっしゃったわよねぇ?」

セレンは顔は笑っていたが、目は全く笑っていない。
逃してなるものかという気迫さえ感じる。

あらら、アーサーってばセレン相手にそんなこと言っちゃったの?
あの娘は自分の容姿に、自信とプライドを持っているのに・・・。

みんな見かけに騙されるが、こんな親の身分しか取り柄のない三流男にコケにされて黙っているほど、彼女は大人しくないのだ。


「ちょっと、アーサー様、この女は何なのですか。まさか私以外にも声をかけていたのですか!」

エリザベスがアーサーにすごい剣幕で詰め寄っている。

「いや、俺がそんな節操がないことをするはずがないだろう。俺くらいの男になると勝手に女どもが寄ってくるだけで、俺は誠実な男だ!」

は?
どの口が言ってるんだか。
エリザベスをエスコートしながら、私を婚約者にしようとしてたくせに。
エリザベスもエリザベスだ。
あんな蔑ろにされて、まだアーサーを信じているのだろうか。


「じゃあ、ちょっと他の皆さんにも訊いちゃおうかなぁ。」

顎に右手の人差し指を添え、可愛いポーズをとりながら、セレンが周囲を見渡した。

「この中で、アーサー様に言い寄られたことある人、手を挙げてー。」

自分も手を挙げてみせながらセレンが尋ねると、次々と手が挙がりだす。

うわ、ざっと30人はいそう?
よくもこれだけ声をかけたものだわ。
これで誠実とかよく言えたわね。

自分のパートナーが手を挙げている男性は、みな不快そうにアーサーを見た。

その視線の中でも堂々としているアーサーはある意味大物かもしれない。


「これはどういうこと!?女なら誰でもよかったのね!?」

「お前こそアメリアに苛められたなどと嘘を言って、俺の気を引こうとするなど浅はかな女だな。俺にはふさわしくない。もう帰れ。」

「なんですってー?あんたこそ調子いいことばかり言って、結局誰にも相手にされてないじゃない。いい気味!!」

「なんだと!?」


なんだかアーサーとエリザベスの醜い言い争いがヒートアップしてきてる・・・。
余興の断罪劇がメチャクチャだけど、どうやって終わらせるのコレ。

収拾の付け方に困り、生徒会メンバーで顔を見合わせたその時だった。

「さてさて皆さん、劇を楽しんでいらっしゃいますか?ここで選択のお時間です。」

照明係のカイルが、颯爽と私達の円の真ん中に現れた。

カイル?なんで?

私達生徒会メンバーはもちろん、パーティーの参加者全員の視線がカイルに注がれている。
喧嘩をしていたアーサーとエリザベスも、一旦罵り合うのを止めたようだ。

「この劇は、エンディングが決まっておりません。ここにいらっしゃる皆様がラストを決められるのです。」

マルチエンディング、きたー!!
まさかここで観客に選択を委ねるなんて、ちょうど収拾付かなかったところだし名案だわ。

アメリアが称賛を込めた眼差しをカイルに向けると、カイルは得意気に笑って親指を立てて見せた。


「選択肢は2つ、自由にお選びください。A、アメリア様は今まで通りクロード様の婚約者として幸せに生きていく。B、アメリア様はそちらの節操なし男と新たに婚約を結ぶ。」

カイルは、『節操なし男』のところでアーサーに手のひらを向けた。

Bの選択肢、バッドエンドもいいとこじゃない。
まあ、結果なんてわかりきってる気はするけど。

いよいよクライマックスね。

私は気合を入れ直した。




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