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転生したら、うどんを無限に出せる力を貰いました。お蕎麦も欲しいです。
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私はどうやら死んでしまったらしい。
気付けば、「転生課」と書かれた待合室の長椅子に座っていた。
手には「3」と書かれた番号札。
まるで区役所の戸籍課に、転入届を提出しに行ったときのようだ。
人はまばらであるが、担当者が一人でさばいている為、時間がかかるらしい。
私は辺りを見渡した。
殺風景な、いかにも役所といった風情の場所で、座っている者は皆同じ水色の服を着ている。
なんで死んでしまったとか、どうやって生きてきたかなど、自分に対する記憶は曖昧だった。
辛くなるから、配慮がされているのかもしれない。
なんて考えていたら、ピコンと音がして、掲示板に「3」と表示された。
私だ。
立ち上がり、担当者の前の窓口の椅子に座った。
「こんにちは。転生の手続きを行いますね。えーと、あなたはミオさんですね?」
私はミオというらしい。
「おめでとうございます。これから転生する世界はファンタジーの世界です。」
おめでとうと言われても・・・
それはおめでたいことなのか?
ファンタジーは理解できる。
魔法とか、妖精とかそんな感じ?
「ミオさんには転生にあたり、特別な能力が与えられます。いわゆるチートっていうやつですね。良かったですね。」
チート?
それはもしかしてすごい能力なのでは?
次は生まれながらに勝ち組!?
ラッキー!!
テンションが一気に上がった。
「チートって、どんな能力ですか?」
思わず前傾姿勢で尋ねてしまった。
人生を左右する力なのだから、当然である。
「えーと、ミオさんの場合はー・・・」
ペラペラと書類をめくる担当者。
この待ち時間がソワソワして落ち着かない。
「っと、ありました。ミオさんの能力は、このカップ麺を無限に出せる力です!」
ポンっ!
目の前に、見覚えのあるカップ麺の容器が現れた。
有名な、赤いうどんの容器である。
・・・
え?
これって、あれじゃないの?
赤色のきつねうどん。
緑色のたぬきそばも一緒に思い出された。
なんで赤いうどん?
意味がわからず、質問攻めにする。
「これは、もしかしなくても、うどんとお揚げが入った、アレ?」
「はい、そうです。」
「食べ物全般出せないの?」
「赤いうどんだけです。」
「魔法が使えるとか」
「赤いうどんが出せるだけです。」
「戦いが強いとか」
「赤いうどんが出せるだけです。」
「他に出来ることは」
「赤いうどんが出せるだけです。」
「せめて緑のお蕎麦」
「赤いうどんが出せるだけです。」
もはや答えるのが面倒になったのか、質問に被せてきた。
「つまり、赤いうどんが出せるだけなんですか?」
「最初からそう言ってます。」
確かに言ってたけど!!
そんなピンポイントな能力ってあるの?
赤いうどんは出せて、緑のお蕎麦が出せないってどんなこだわり?
もしかして、緑のお蕎麦だけ出せる人もいるのか?
全然納得出来ないままであったが、「ちなみに赤いうどんを出したい時は呪文が必要ですので。」とか言い出した。
「呪文?」
おおっ、ファンタジーっぽいぞ。
「どんな呪文ですか?」
「『出でよ、赤いうどん』です。」
ダサっ!!
他になかったのかと問いたい。
「唱えれば、願った数だけ赤いうどんが目の前に現れます。無限にです。」
すごいでしょ?と言わんばかりだが、いまいちすごさがピンと来ない。
とりあえず、赤いうどんのほうが好きで良かったと思う。
でも、緑のお蕎麦だってたまには食べたかった。
同じ会社なんだから、他にもラーメンとか焼きそばも作ってるじゃん・・・
複雑な思いをかかえた私に、無情にも声がかかった。
「ではこれで手続きは終わりましたので。良い人生を!!」
おいおい、ちょっと待って!
赤いうどんの話しか聞いてないんですけど?
そんなお決まりの挨拶言って、勝手に終わらせないで!!
そう思うが、世界が勝手に暗転していく。
チキショー!!
せめて名前だけ覚えておこう。
あとで、「お客様の声」に文句を送りつけてやる!!
かろうじて読めた「ハル」の文字。
よし、ハルさんね!
後で覚えてろよ!!
かくして、私「ミオ」は転生した。
結果を言うと、赤いうどん「だけ」出せる能力は素晴らしかった。
飢えることはないし、重宝がられ、ある意味、金を出せるよりありがたがられている。
味はいいし、容器も大人気だ。
異世界の素材を持ち込み、捨てる時のことを心配していたが、再利用や、コレクターが現れ、困っていない。
遠征の食料にもいい。
塩分も摂れる。
次に転生課に行くことがあったら、お客様の声には「ハルさん、ありがとう」と書こう。
たまに緑のお蕎麦も食べたくなるが、ミオは赤いうどん「だけ」出せる能力のおかげで、今日も幸せな人生を送っている。
気付けば、「転生課」と書かれた待合室の長椅子に座っていた。
手には「3」と書かれた番号札。
まるで区役所の戸籍課に、転入届を提出しに行ったときのようだ。
人はまばらであるが、担当者が一人でさばいている為、時間がかかるらしい。
私は辺りを見渡した。
殺風景な、いかにも役所といった風情の場所で、座っている者は皆同じ水色の服を着ている。
なんで死んでしまったとか、どうやって生きてきたかなど、自分に対する記憶は曖昧だった。
辛くなるから、配慮がされているのかもしれない。
なんて考えていたら、ピコンと音がして、掲示板に「3」と表示された。
私だ。
立ち上がり、担当者の前の窓口の椅子に座った。
「こんにちは。転生の手続きを行いますね。えーと、あなたはミオさんですね?」
私はミオというらしい。
「おめでとうございます。これから転生する世界はファンタジーの世界です。」
おめでとうと言われても・・・
それはおめでたいことなのか?
ファンタジーは理解できる。
魔法とか、妖精とかそんな感じ?
「ミオさんには転生にあたり、特別な能力が与えられます。いわゆるチートっていうやつですね。良かったですね。」
チート?
それはもしかしてすごい能力なのでは?
次は生まれながらに勝ち組!?
ラッキー!!
テンションが一気に上がった。
「チートって、どんな能力ですか?」
思わず前傾姿勢で尋ねてしまった。
人生を左右する力なのだから、当然である。
「えーと、ミオさんの場合はー・・・」
ペラペラと書類をめくる担当者。
この待ち時間がソワソワして落ち着かない。
「っと、ありました。ミオさんの能力は、このカップ麺を無限に出せる力です!」
ポンっ!
目の前に、見覚えのあるカップ麺の容器が現れた。
有名な、赤いうどんの容器である。
・・・
え?
これって、あれじゃないの?
赤色のきつねうどん。
緑色のたぬきそばも一緒に思い出された。
なんで赤いうどん?
意味がわからず、質問攻めにする。
「これは、もしかしなくても、うどんとお揚げが入った、アレ?」
「はい、そうです。」
「食べ物全般出せないの?」
「赤いうどんだけです。」
「魔法が使えるとか」
「赤いうどんが出せるだけです。」
「戦いが強いとか」
「赤いうどんが出せるだけです。」
「他に出来ることは」
「赤いうどんが出せるだけです。」
「せめて緑のお蕎麦」
「赤いうどんが出せるだけです。」
もはや答えるのが面倒になったのか、質問に被せてきた。
「つまり、赤いうどんが出せるだけなんですか?」
「最初からそう言ってます。」
確かに言ってたけど!!
そんなピンポイントな能力ってあるの?
赤いうどんは出せて、緑のお蕎麦が出せないってどんなこだわり?
もしかして、緑のお蕎麦だけ出せる人もいるのか?
全然納得出来ないままであったが、「ちなみに赤いうどんを出したい時は呪文が必要ですので。」とか言い出した。
「呪文?」
おおっ、ファンタジーっぽいぞ。
「どんな呪文ですか?」
「『出でよ、赤いうどん』です。」
ダサっ!!
他になかったのかと問いたい。
「唱えれば、願った数だけ赤いうどんが目の前に現れます。無限にです。」
すごいでしょ?と言わんばかりだが、いまいちすごさがピンと来ない。
とりあえず、赤いうどんのほうが好きで良かったと思う。
でも、緑のお蕎麦だってたまには食べたかった。
同じ会社なんだから、他にもラーメンとか焼きそばも作ってるじゃん・・・
複雑な思いをかかえた私に、無情にも声がかかった。
「ではこれで手続きは終わりましたので。良い人生を!!」
おいおい、ちょっと待って!
赤いうどんの話しか聞いてないんですけど?
そんなお決まりの挨拶言って、勝手に終わらせないで!!
そう思うが、世界が勝手に暗転していく。
チキショー!!
せめて名前だけ覚えておこう。
あとで、「お客様の声」に文句を送りつけてやる!!
かろうじて読めた「ハル」の文字。
よし、ハルさんね!
後で覚えてろよ!!
かくして、私「ミオ」は転生した。
結果を言うと、赤いうどん「だけ」出せる能力は素晴らしかった。
飢えることはないし、重宝がられ、ある意味、金を出せるよりありがたがられている。
味はいいし、容器も大人気だ。
異世界の素材を持ち込み、捨てる時のことを心配していたが、再利用や、コレクターが現れ、困っていない。
遠征の食料にもいい。
塩分も摂れる。
次に転生課に行くことがあったら、お客様の声には「ハルさん、ありがとう」と書こう。
たまに緑のお蕎麦も食べたくなるが、ミオは赤いうどん「だけ」出せる能力のおかげで、今日も幸せな人生を送っている。
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続編があるなら
ぜひ読みたい(^^)
ご感想をありがとうございます!
ノリだけで書いたような作品だったので、まさかこんな嬉しい要望がいただけるとは、ビックリです(*^^*)
全くその後を考えたことがなかったので、正直動揺しています(笑)
お蕎麦だけ出せる人と出会う番外編とか・・・
検討してみます。
ありがとうございました(^ ^)