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勘違いをする少女。

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エミリアとダニエルは町を散策し、15時少し前に食堂の入口に到着した。
エミリアの前世からの口癖、「五分前行動は大人の常識」だからである。

入口の扉が階段を数段上がったところにある為、エミリアは気合を入れてワンピースの裾を持ち上げたのだが、そんなエミリアごとダニエルが持ち上げてしまう。

「もうっ、だにーさま、こどもあつかいしないでください!」

「こどもだろうが。悔しかったら早く成長してくれ。」

私だって、早く大きくなりたいけれど!
本当は、中身は私の方が大人なのに・・・

エミリアが悔しがっていると、扉が内側から開かれた。

「やっぱりダニエルか。お前、何やってんだ?」

ダニエルと同じ歳くらいだろうか、長身で少し長めの髪を後ろで結んだ青年が顔を出した。
硬派に見えるダニエルと違って、女の子受けしそうな、別のタイプのイケメンだ。

「よう、ルシアン。エミィとふざけてただけだから、気にすんな。」

この青年がルシアンらしい。
今日はルシアンも仲介役として同席予定だ。

「こんなたいせいでもうしわけありません。えみりあ・ばーとんともうします。いごおみしりおきを。」

ダニエルの腕の中から挨拶をすると、ルシアンが少し眉を上げ、笑いだした。

「これはこれはご丁寧に。噂通り、しっかりしたお嬢さんだけど、こんなに可愛らしいとはね。僕はルシアン・マーチ。いつもダニエルがお世話になっています。」

にっこりと微笑むと、エミリアの頭を撫でた。

「あ、コラ!勝手にエミィに触るな!お前、爽やかぶりやがって。エミィ、こいつは危険だから、近付くなよ?」

二人は仲がいいらしく、わちゃわちゃし始めた。

うんうん、青年が戯れる様子は、どこの世界でもいいものだよね。
ルシアン様は少しチャラそうだけど、ダニー様に親しい友人がいて良かった。

食堂の中を進むと、一画だけ女の子向けのカフェみたいに飾り付けされた空間が目に入る。
ダニエルに抱っこされるまま近付くと、若い女性が椅子から立ち上がった。

「エミリア様でいらっしゃいますか?シーラ・マーチと申します。このような場所まで、ありがとうございます。」

波打った長い髪を一つに結び、茶色のワンピースに白いエプロン姿のシーラが、恐縮したように口を開いた。

「えみりあです。おいそがしいなか、もうしわけありません。おあいできてこうえいです。」

ダニエルに下ろしてもらい、エミリアも挨拶を返すと、口調が面白かったのか、シーラからふふっと笑いが漏れた。
笑い顔がルシアンとそっくりで、美形姉弟だとエミリアは思った。

「このおせき、とってもかわいいですね。もしかしてしーらさまが?」

席に着いて問うと、恥ずかしそうにシーラが頬を染める。

「せっかくエミリア様がいらっしゃるので、全部は無理でも少しだけ。ここはあまりにも殺風景なので。」

その心遣いが嬉しく、エミリアはシーラに好意を持った。

「あの、きょうはしーらさまにおねがいがありまして。よかったら、いっしょにどれすをつくってくれませんか?わたし、おうひさまのどれすのおてつだいを・・」

「えええええっっっ!!」

エミリアの言葉の途中で、ガタガタッという音と共に、シーラが椅子から飛ぶように立ち上がった。
予想外の反応にエミリアは驚き、ビクッとしてしまったが、ダニエルとルシアンまでエミリアを見てポカンとしている。

あれ?
なんで三人とも驚いてるの?

「だにーさま、しーらさまにつたえていなかったのですか?すかうとだって。」

「いや、そもそもスカウトが何だか知らないし。てっきり刺繍のお礼かと。」

ルシアンもうんうんと頷いている。

ありゃ、スカウトって言葉、使わないのか。
失敗失敗。
あ、お土産渡すのも忘れてた。

「だにーさま、もってもらったおみやげ、ありがとうございました。しーらさま、うちでやいた、くっきーとぱうんどけーきです。おくちにあえばいいのですが。」

お菓子を差し出すと、立ったまま呆然としていたシーラが、更に興奮しだした。

「これは幻のバートン家のお菓子!!もう何が何やら。ルシアン、これは夢!?私は夢を見てるの?」

「姉貴、落ち着け!とりあえず茶でも淹れよう。ほら、姉貴、行くぞ?」

シーラが錯乱し、おかしくなっているのをルシアンが宥め、お茶を淹れに二人で席を外した。
エミリアは冷静に考えていた。

幻のお菓子って・・・
うちのお菓子、有名なのかな?

前世の記憶を持つエミリアが口を出す為、バートン家のお菓子が独自の発展を遂げたことに、エミリアは気付いていなかった。

「シーラ、嬉しそうだな。本当はずっと裁縫の仕事をやりたかったんだろうな。」

キッチンへ消えたシーラの方向を見ながら呟くダニエルを見て、エミリアはハッとした。

ダニー様、もしかしてシーラ様のことが好きなんじゃ?
きっとそうだよ!綺麗な人だもん。
うん、お似合いな気がする!!

二人の仲を応援しようと思いつつ、寂しさを感じてしまう。
エミリアは何故か心がグルグルして落ち着かなかったが、気付かぬふりをした。












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