上 下
5 / 7

告白されました。

しおりを挟む

今日はクロヴィスとの初デートである。

デートと言っても、クロヴィスの姪のアイリスとの3人ではあるが・・・


「やっぱりあちらのワンピースの方が良かったかしら?」

「髪型はいかがいたしましょう?」

朝早くから、侍女とバタバタと準備をしているシンディを、妹のローラがニマニマしながら眺めている。

「お姉さま、気合が入ってますわね。幸せそうで何よりですわ。」

からかうような口調で言われ、つい言い訳をしてしまう。

「お礼に誘っていただいただけですし、失礼があってはいけないのでしっかり準備しているだけですわ。」

そうよ!
それだけよ!! 
浮かれてなんていないわ。

シンディは自分に言い聞かせた。
ローラの思い通りになってしまったようで、ちょっと悔しかったのである。


直接カフェでの待ち合わせだった為、緊張しながら店に入ると個室に案内された。

このお店、個室もあったのね。

感心しながら足を踏み入れると、先に到着していたクロヴィスとアイリスが笑顔で迎えてくれた。

「よく来てくれた。迎えに行けず、申し訳ないことをした。」

「シンディお姉ちゃん、こんにちは。この前はありがとう。」

「クロヴィス様、お気遣いありがとうございます。アイリス様、またお会い出来て嬉しいですわ。」

二人の挨拶にこちらも笑って応える。

アイリスに、『敬語と様は付けちゃイヤ』と言われ、普通に話すことが決まると、アイリスはクロヴィスの隣から、シンディの隣へと席を移動してきた。

「気に入られたものだ。」

クロヴィスが向かいの席で笑っていた。

その後、クロヴィスが栗のケーキ、アイリスがイチゴのケーキ、シンディが林檎のケーキをそれぞれ注文した。
ケーキが運ばれてくると、アイリスの目がキラキラと輝き出す。 

可愛いわ。
ケーキを楽しみにしてたのね。

そしてやはり、クロヴィスもケーキを見て微笑んでいるように見える。

「クロヴィス様は甘いものがお好きなのですか?」

気になっていたことなので、つい訊いてしまうと、クロヴィスが照れたように言う。

「男なのに恥ずかしいのだが、実は好んで食べている。外見にそぐわないから、アイリスをだしに使って食べに来ているのだ。」

「恥ずかしくなんてございませんわ。」

男性だって甘いものが好きでもおかしくないわ。
それに、だしに使っているのではなく、アイリスちゃんが喜ぶから、急がしい中でも時間を作って訪れているのでしょう?

クロヴィスの優しさを感じ、胸が温かくなる。
そして、やっぱりローラの透視?の通り、クロヴィスは甘いものが好きで優しい人らしい。

イチゴを頬張るアイリスが嬉しそうで、自分のケーキから甘く煮てあるリンゴをすくい、アイリスの口元に持っていく。

「はい、あーん。」

アイリスはすぐにパクっと口に入れ、「美味しい!」と喜んでくれた。

クロヴィスがそんな二人を優しく見守っていたが、

「クロおじちゃまにも、あーんってしてあげて。」

と言われ、シンディが動揺しながら見上げると、クロヴィスは顔を真っ赤にして顔を背けていた。


カフェを出た後、近くの公園に誘われた。

今日はお天気も良くて、散歩日和ね。
ふふっ、アイリスちゃんがはしゃいで、芝生を走り回っているわ。

走るアイリスを目で追っていたシンディに、クロヴィスから声がかかった。

「今日は時間を作ってくれてありがとう。アイリスも嬉しそうだし、何より私が楽しい。」

そして緊張した面持ちで、続けた。

「良かったらこれを。礼のつもりなのだが。」

綺麗に包装された小さい箱をシンディに差し出した。

促されてシンディが開けてみると、珊瑚で出来た可愛らしい耳飾りが入っていた。
驚いてクロヴィスを見つめる。

「私の領地で採れた珊瑚だ。突然だと思うかもしれないが、私はあなたを愛している。今日共に過ごして更に強く思った。私と婚約してくれないか。」

熱の籠った眼差しで見つめ返され、シンディは呼吸が止まりそうになったが、何より嬉しさが身体中を駆け抜けていく。

「はい。私で宜しければ喜んで。」

はにかんだ笑顔で、婚約を受け入れたのだった。


アイリスが二人を笑って見ていた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

出来の悪い令嬢が婚約破棄を申し出たら、なぜか溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
 学術もダメ、ダンスも下手、何の取り柄もないリリィは、婚約相手の公爵子息のレオンに婚約破棄を申し出ることを決意する。  きっかけは、パーティーでの失態。  リリィはレオンの幼馴染みであり、幼い頃から好意を抱いていたためにこの婚約は嬉しかったが、こんな自分ではレオンにもっと恥をかかせてしまうと思ったからだ。  表だって婚約を発表する前に破棄を申し出た方がいいだろう。  リリィは勇気を出して婚約破棄を申し出たが、なぜかレオンに溺愛されてしまい!?

浮気されたので、金をぱーっと使おうと思います

下菊みこと
恋愛
浮気されたのでお金をぱーっと使ってエステを受ける。 浮気されたのでお金をぱーっと使って慈善団体から引き取ったニャンちゃんとワンちゃんを飼う。 浮気されたので腹心の部下におねだりしてずっと一緒にいてもらう。 それだけのご都合主義のSS。 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけざまぁ?でも救いの手も差し出すからそうでもないかも。 さらっと読めるはず。短いSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

なぜか乙ゲーの攻略キャラに転生してしまった俺は、悪役令嬢の可愛さに惚れました

奏音 美都
恋愛
 横断歩道を歩いてる最中に暴走トラックに突っ込まれた俺は、なぜか乙女ゲームの攻略キャラのひとりに転生したらしい。ヒロインは、漫画みたいなピンクの髪色に緑の瞳をした背のちっこい女子、アツコだった。  だけど……俺が気になるのは、悪役令嬢キャラであるエトワールだった。

婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします

tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。 だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。 「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」 悪役令嬢っぷりを発揮します!!!

愛するお嬢様を傷付けられた少年、本人が部屋に閉じこもって泣き暮らしている間に復讐の準備を完璧に整える

下菊みこと
恋愛
捨てられた少年の恋のお話。 少年は両親から捨てられた。なんとか生きてきたがスラム街からも追い出された。もうダメかと思っていたが、救いの手が差し伸べられた。 小説家になろう様でも投稿しています。

醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~

上下左右
恋愛
 聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。  だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。  サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。  絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。  一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。  本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ
恋愛
今年、デビュタントを控えた主人公リリィ。小さな体でおおらかな心を持つリリィが溺愛されるまでを書く。 ※婚約後のストーリーを公開始めました。 ※お気に入り、栞ありがとうございます。 ※非エロ健全な内容です。後日談エロは『溺愛された伯爵令嬢のその後』にまとめてます。あちらは適当に続く予定です。

処理中です...