悶える首輪

萩原 操

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最終章

プロの鞭と退店

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初めてのショー出演や貸出制度はアルバイトと言うには私にとりまして過酷な経験だった

もちろん雌犬の過酷さとは比較できません ショーの間はお金のために働いているのだと言い聞かせて自身を納得させていたのである
  
しかし二ヶ月の訓練調教で私のマゾ性癖が芽生えていたのも事実 ショーの雰囲気や待機させられ観賞される昂揚感で勃起し萎えてまた勃起を繰り返していた

これは私の意志とは別の回路が自動的にオンオフを繰り返しての結果だと思うのだが やはり生得的なマゾ性が息吹始め その性癖が意志を駆逐するかのように私自身を支配コントロールしていたようです

最も昂揚するショーは調教師様にペニスバンドで犯される時 細目のバンドでも観賞されている状況は何よりも興奮状態が高まります 

異性に局部を晒し指により愛撫と出し入れされる時は恥ずかしさを忘れた性欲の塊と化し 心の中で「もっと もっと突刺して もっと見て下さい」と叫んでいる自分に……………!!
 
男が女を突刺す 男が女を犯す 能動と受動だけの世界では子孫繁栄と生殖本能という動物全てが共有する生態それが世の中の理と認識されています

しかし私が身体と心で体得している姿は全くの逆の姿です 有り得ない自らの姿を晒し見られている異常性は その時から私には異常性でなく性の一つという理と知り マゾという性を獲得できました 

この時は私の自由意志で獲得したのではなく お金を餌に獲得させられたというのが正しいのです 

能動と受動だけでは説明できません

このような現実に面しどのように理解し咀嚼すべきなのかを考えた時に ペニス型道具を装着した女性に犯されることには違和感があった 
 
それは犯す道具は無機質なペニスバンドでなく本来は血が通い肉質な男の持つ生殖器ペニスそのもののはずです ゲイではない私が男性のペニスに犯される事を信じるのは この時の違和感が現在まで通底している

そしてショー出演のために訓練された犬化がマゾ イコール 犬になり 私の性癖マゾ犬が醸成され 学生時代に獲得させられた性癖が長い年月を経て 改めて開放されようとしているかもしれない

マゾ性を獲得させられた私にはショーアルバイトは家庭教師であれ肉体労働であれ仕事の一つとなりえたのです

そのような私が女性会員様のみが観賞できる特別日に出演させられたことがあった

女性会員様のみの日はいつも男性会員様と一緒に観賞することに性欲や心の解放にはどうしてもくびきのようなものがあるので 女性だけでストレスも解放してもらうという趣旨で作られた

その頃には募集で試験使用した奴隷も二人採用されており ショー用男奴隷と私雄犬で運用されていたようです

女性会員様のみのステージは基本会員様参加型のショーになってゆき 私雄犬は調教師様とステージに立ち その日は雌犬は休みです

鞭責めは 女性の鞭は手加減がなく何かに憑かれたかのように打ち付けます しかしそれ程の痛みはありませんが打ちどころが悪くペニス辺りに入る事が多々あり たとえ貞操帯の上からでも尖った痛みは走ります 

調教師様が打つ鞭はハードでなく鞭打たれる側に自分は鞭打たれるべき存在なのだと感じさせる鞭 鞭にもプロの鞭があることをこの時知ったのです
 
言葉も厳しく優しく 時間を取り間隔も空けたり連続打ちであったり 鞭打たれる理由を考えさせない雰囲気と鞭打たれるべき存在である事を感じさせられ陶酔した事もありました
 
鞭は支配と従属の関係を成立させる絶対係数なのです

プロの鞭は肉体を陶酔させる責めの技術だけでなく 服従という精神性と一致合一した鞭だと……おそらくプロつまり調教師様は鞭打たれる側の経験はあったのかもしれない

女性会員様の鞭が拷問的暴力的にならないよう調教師様は注意しながら会員様に指導して頂けた為 事故したことはありません 

逆さ吊り鞭も幾度か経験しております 初めて逆さに吊られた時に感じたのは家畜にされたかのような感覚です 
人間である事からかけ離れた物質になり しかも人間の目さらに女性という異性の目 これ程の凌辱はないかもしれません 

さらに鞭打たれるまでの時間は調教師様に廻され回転する身体 止められ反転 貞操帯の局部を握られ悶える姿を観賞され 鞭打ちの女性を二人決める時の女性のざわめきに 私は逃れられない運命に局部が濡れ 若さゆえのマゾ性癖の欲情が溢れていたのです

鞭打ち女性が決まり調教師様の指導が入ると 吊られているのは犬でも人間でもない物体です  

ショーは肉体を責めるだけでなくマゾを精神的に追い詰め忘我にさせる事で観賞する側にもそれが伝播し最高調の修羅場になるようです

ただ私雄犬が出演した事で女性会員様が増え そしてクラブにも犬ではない奴隷を募集で二人採用したようです 私雄犬は顔を合わせた事ありませんでした 年齢は若い方と中年で 女性会員様の年齢層に合わせたようです

クラブの私の評価はお聞きした事はありません 調教師様からは女性会員様が増えた事実から評価高く このまま調教師様と雌犬との出演でショーを継続してゆきました

ただ私雄犬の出演回数はマゾ男奴隷が二人採用した事で当初予定より少なくなったと思います それでも生活費 学費や書籍費などを賄うには十分な手当でした 私が無事にそしてお金にそれ程困らす学生生活をおくれたのはこのアルバイトのお蔭でした 

その代償がマゾ性癖の覚醒から犬嗜好と女性男性に犯されるべき思想を得たことです それらが良かったのか悪かったのかは今もわからず判断できてはいない

六ヶ月後に調教師様にクラブ退店の申し出しました 

調教師様からは残念だけれども学業のためそして人生のため良き決断だと評価されました クラブからも了解頂き円満退店だったようです(あくまでも調教師様からのお言葉)

退店後に調教師様マンションで送別会を開いて頂きました

マンションのベランダに立つと夏の暑さが残るも 心なしか和らぎわずかな秋の気配の爽やかな風が頬を優しく撫ぜながら通り過ぎてゆく……… アルバイトでも一つの役目を終えた充実感を初めて味わえたのである
 
調教師様が自ら作られた料理がテーブルにならび雌犬も加わり三人での送別会

日常の服装で普通の会話 そして三人での会食は初めてのマンションでの時空だった 話題にはSMの話はなく政治 社会 生活そして人生の事などのとりとめのない会話が続いた 

調教師様から「世間の価値観からは異常な世界に引き込みゴメンネ だけど正常異常って何だろうね 正常な人が詐欺 殺人など犯罪を犯している 私達は犯罪には縁もなく誰かに迷惑かけた事もない それでも異常と言われる」
という様な言葉もあり更に「いつの日か全ての性が認めらる日がくればと思うね」 

お酒も少し入りとりとめのない議論にもなっていました

思い出した事がある……………!!

食事中に調教師様からあるお話しがあり 調教師様がクラブにある提案をされていたのです 男性会員様用の女体盛り 女性会員様用に男体盛りです 

ショーの最後にステージまたは別室で女体盛りや男体盛りで会員様にお食事を提供することで楽しんで頂くという提案だったようです

その話をお聞きした時私は初めは意味不明 つまり女体盛りという言葉自体無知だったのだが 詳しくご説明頂き理解できた

もちろん雌犬と私雄犬が盛られる予定だったようだ 私は詳細を理解できた時には実現しなかった男体盛りを妄想し食事中に勃起していたのです
 
感のいい調教師様は私の変化に気がつかれ「初めてだと思うけれど射精したい?」と聞かれましたが私は何故か遠慮していました おそらく本音は射精したかったはずです 固辞した理由は自身の記憶にはない

「盛り」は盛られるマゾにとって精神的凌辱感と究極的羞恥責め 盛る側は優越感と究極精神的嗜虐心
 
お話しの中には女体盛りでは閉じた股間にお酒を満たし直接飲酒 男体盛りではペニスの変化を視覚や触覚(お箸)で楽しみます

調教師様のお話しを冷静に聞きながらも私はマゾ性癖が昂揚し本音は経験したかったのかもしれない………いや精神性マゾを知る私は経験すべきだった!!

食事も終わり調教師様から労いのお言葉を賜わり「性癖 性欲がお前の理性を攻撃始めた時は良からぬ方向にゆく前に私に電話しなさい」という言葉を頂きました 

雌犬からも「寂しくなるけれど貴方の人生がうまくゆくよう祈ってるよ……」と


その後電話した事もなくお二人がどのような人生を歩まれたかは知りません ただ調教師様が呻吟し漏らされた性の開放と認知が少しずつでも進んでいることは確かな事実だ 

昔の記憶を辿りながら書き綴ってきた
  
マゾ性癖を芽生えさせた若い頃のアルバイトを後悔したことはない むしろ若くして性への偏見を排除させてくれたアルバイトを悔いることはない…と その気持ちは今も変わらない 

若くしてマゾ性癖を身にまとい 若さ故にその意味するところを考えず理解できず 自身の未来や周囲の環境を優先させ心と身体が欲する性を秘匿しなければならないと思わせたのは 性に不寛容な社会だった 人間の本質を善と悪に色付けしモラルを振りかざす社会 

その社会に屈したのである

社会におもねってしまった半世紀近い年月は戻らないが…………

今こそ問うべきは:

このような社会とは何なのか ドラマツルギーの演技の社会を創るのは人間 性に嫌悪し賛美するのも人間 モラルはドラマツルギーの関連性のなかで存在し 必然性はない よってモラルを叫んでも世界に悪は消えない 人間が人間を殺戮することを止めない

殺戮する道具も経済に取り込み平然と文化と歴史を積み重ねている よって現在を覆っているモラルに必然性はない 一度破壊し 創り直すべきなのかもしれない

真理は一つ??? 愚かなる動物 その名は人間なのである

なればこそ思うは一つ

新しきモラル そして性の解放こそがパンドラの箱を塞ぐただ一つの方法なのか

綴り続けるうちに今現在私の頭をある詩がよぎる

  思えば遠く来たもんだ
  十二の冬のあの夕べ
  港の空に鳴りひびいた
  汽笛の湯気は今いずこ……………

  ……… と

若かった頃の私のアルバイト経験は短い期間だったが 凝縮された経験は私の心を発熱させ その熱は長く絶える事なく心底に潜み続け 冷える事はなかった

熱は人生のどこかで何かによって凝縮されると 凝縮熱で再び熱を増すだろう

その増した熱で新たな または改めての道を見つけられればと思い続けるのかもしれない 熱がいつかは冷めるという物理の法則に抗うかのように………いつの日か!!

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