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その日の家にて

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「……って事になったんです。どうして、私は嘘をついたんでしょう、分からない様で、っと」
 
 香也は、その日の帰宅後すぐに日記に向かっていた。
相変わらずの言葉にしながらの日記である。
ノートをパタンと閉じ、鍵のある引き出しに丁重に仕舞い込む。
カチッと音がするのを確認すると鍵はベッドの枕の下に押し込んだ。
 窓辺の鉢上は、部屋の明かりに照らされている。
だが、心なしか芽がくったりしたように見えた。
日記を書く前に気付き、慌てて水をやったのだが……。

「元気ないね、"私だけのお花さん"……」

 くったりしたような、その芽をちょん、とつつく。
あの女の人は、花を綺麗に咲かせるコツは、何て言っていたっけ?
記憶を溯ると、

『毎日の水やり、たっぷりのお日様の光。そして……』



 私は呟く。
心の願いって、一体何のことだろう……?

「元気になぁれ、って願いでもいいのかなー?」

 そう、芽に向かって言ってみても、何にも起きなかった。
私は、大きき溜息をつくと、部屋を後にした。



ホワン、と香也が居なくなった部屋の窓辺で芽が微かに光る。
ホワン、ホワンと光は光って消えた……。


『香也……気付いて……』

 誰ともない声が、響く……。
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