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第8話 再スタート

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「さて……と」

私は偽聖杯のひな型をへし折り、ゴミ箱へと放り込む。

「しかしホント酷い出来だったわ」

私の作ったひな型は、子供の粘土細工位酷かった。
そういった訓練を受けていない事を差し引いても、本当にあれな出来だったのだ。
だからスーザンの伝手で、金型を作ってくれる自分を紹介してもらうつもりだったのだが。

もうそれは必要なかった。

封印を妨害して邪神を復活させる様な真似はもうしない。
そんな卑劣な真似などせず、正々堂々と勝負する事にした。

カール王子は結婚してしまったとはいえ、この世界は中世風。
つまり一夫多妻がまかり通る世界だ。
第一王妃は無理でも、第二王妃の座は私が戴く。

立場上はどうしてもエリスの下になってしまうが、それはもう構わない。
但し、王子のハートは必ず私が射止めさせて貰うわ。

待ってなさい!
王子!
エリス!

「スーザンも幸せになってくれるといいんだけど」

スーザンに関しては依頼破棄で散々嫌味を言われてしまったけど、彼女の記憶の一部を封印するという方向で――裏切った恋人や、その新しい連れ合いの事がどうしても許せなかった彼女の苦しみを緩和する苦肉の策だ――その場を収めている。
同じような立場にあった彼女には、過去を引きずる事無くどうか幸せになって欲しいものだ。

私は研究室を片っ端から片付け、処分していく。
もうここでの研究や調合錬成の類は必要ないからね。
ただ困ったのはアーティファクト処分だ。

正直、持ち歩くには明らかに邪魔だった。

既に杖へと力を移し終えているので、これらは最早中身空っぽのがわでしかない。
とは言え、一応貴重なものだし廃棄するのは憚れる。
かと言って抜け殻を元の場所に戻すのもなんだしなぁ……

「ベルベット様。これも捨てちゃうんですか?」

私が顎に手をやり。
アーティファクトを難しい顔で眺めていると、ガードが私の顔を覗き込んでくる。

「だったら、僕が食べちゃっていいですか?」

「は?え?食べる?」

「前から美味しそうだなと思ってて」

「あんたそんな目で見てたの?」

「はい!」

屈託のない笑顔で、元気よく返事が返って来る。
全く無邪気な子だわ。
一応金属系も取り込めるようには作ってあるけど、お腹壊さないかしら?

「まあいいけど、体に悪影響が出そうならやめときなさいよ」

食べさせるのもどうかとは思うけど。
ガードの血肉になるのなら……まあ良しとしよう。
捨てるよりはいいわよね。

美味しそうに槍やら斧やらにバリバリと齧りつくガードを他所に、私は片づけを続ける。
そして此処を引き払い。
王都へと向かう。

まずは貴族位を取得を目指すとしよう。
多少時間はかかるけど、今の私の能力ならまあどうにでもなる筈。
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