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第3話 嫉妬

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あれから3週間。
私は何もする気が起きず。
只々神殿の世話になる日々を送っていた。

正直私は最早聖女候補でも何でもない。
ましてや侯爵家からも勘当されてしまった身だ。
こんな生活を続けていたら、いつ神殿から追い出されてもおかしくはない。

「働かなくっちゃ……」

働かざる者食うべからずだ。
生きていくためには働かなければならない。

フラフラと部屋を出ると、司祭様方の話し声が聞こえて来た。
私は咄嗟に身を隠し、思わず聞き耳を立ててしまう。
何故なら、その話はカール王子と聖女となったエリスが明日成婚の儀を上げると言う内容だったからだ。

私はその話を聞き、その場に尻もちをついてしまう。

暫く呆然としていた私だが、徐に立ち上がり神殿を抜けだした。
目指すは成婚の儀が執り行われる大教会の中だ。
見張りが立っていたが、聖女となるべく能力を上げまくった私にとって彼らを出し抜くなど容易い事。
魔法で肉体を透明化し、結界を無力化して中へと侵入する。

そのまま私は朝を待つ。
王子達の結婚を見届け、自らの未練に終止符ピリオドを打つために……

やがて朝がやって来る。
人々が集まり出し、成婚の儀が粛々と執り行われる。
私は涙を押し殺し、その華やかな様子をしっかりと両目に焼き付けた。

エリスと王子の二人は笑顔で口付けを交わした後、教会を出て行った。
他の人達も次々と教会を後にしていく。
誰もいなくなったそこで、私は初めて涙を流し嗚咽を漏らす。

悲しかった。
本当は王子の横には自分がいる筈だったのだ。
だがもう私に居場所はない。

未練を断ち切るどころか、後悔は膨れ上がるばかりだ。

何でこんな事になってしまったのだろうか?
私が主人公なのに。
私は何も失敗などしていないのに。
どうして――

ドウシテアノフタリハアンナニシアワセソウダッタノ?
ワタシハコンナニモクルシンデイルノニ?

「聖乙女伝説はクソゲーだ」

私は呟く。
これはかつての友達の言葉だ。

ライバルもおらず。
いかに主人公ヒロインを育てるか。
それのみに主眼の置かれたゲームはつまらないと言っていた。

私はそんな聖乙女伝説が大好きだったし。
クソゲーだとは思わない。
だけどこの世界は――

「クソゲーだ」

自身を育て上げるだけのゲームで、完全完璧な育成を行ったにも拘らずバッドエンドを迎える。これをクソゲーと言わず何と言おうか?

「バグよ……そうよ……これはきっとバグなんだわ……」

蹲って泣いていた私は起き上がり、ふらつく足取りで教会を後にする。

「バグならリセットしなくっちゃ……」

そう、こんなバグった世界などリセットしてしまえばいい。
そしてやり直すのよ。

「力……」

力が必要だ。
そう、全てを屈服させる力が。

この日、私の頭のネジは弾け飛び。
私は狂う。
嫉妬と言う名の醜い炎にその心を焼き尽くされ。
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