上 下
22 / 28

過去話②

しおりを挟む
 ジョンとメアリーの出会い。それは一発のビンタから始まる。当時ジョンには付き合っていた恋人がいた。名前はリーン。マクガイヤー子爵家の令嬢だ。彼女は何というかまあ……自由奔放だった。ジョンと付き合っていたのにも関わらず、別の男性とデートしたり人前でいちゃついたりとやりたい放題だった。

 何故ジョンはそんな相手と付き合っていたのかと思うだろう?

 それは――顔が良かったのだ。それも滅茶苦茶。

 所詮世の中顔。男は美人に掛かればイチコロって訳よ。ああいかんいかん、私情が入ってしまった。兎に角、超美人だった彼女のやりたい放題わがまま放題をジョンは我慢し続けてきた。とは言え、何事にも限界がある。ある日限界を迎えた彼は、リーンに別れを告げたのだ。

 それを聞いて焦ったのがリーンだった。彼女からしてみれば将来の伯爵夫人の席からいきなり転げ落ちたのだから、焦らないわけがない。私から見れば当然の帰結なのだが、アホの彼女にはそれが分からなかった様だ。

 伯爵夫人の座が諦めきれなかった彼女は、必死にジョンにとりすがる。だが既に愛想が尽き果てたジョンには相手にされない。それでも諦めず何日も食い下がり続けた身勝手な彼女に、遂にジョンの堪忍袋の緒が切れた。

 ジョンは怒りのまま罵詈雑言をリーンに浴びせ、優しかった彼のその変貌に泣きだすリーン。私から見れば彼女の自業自得にしか思えなかったが、その場にたまたま居合わせたメアリーには違った様だ。

「理由はどうあれ、人前で女性を泣かせて!貴方はそれでも男なの!」

 この一言と共に、ビンタをバシーンと来たもんだ。いやー、あれは強烈だった。その一件以来、ジョンが彼女にべた惚れし。必死で口説き落として今に至る分けだ。

え?私はどうしてたかだって?

 空気でした。ええ、そりゃもう。厄介事に首を突っ込みたくなかったってのもあるけど。女の私が首を突っ込めば、拗れに拗れて刃傷沙汰もあり得るって事で。ジョンに言われて自重していた訳よ。

 まあ超能力があるから、不意打ちでも喰らわない限り問題なかったんだけど、人前でホイホイ力を使う訳にもいかないからね。勿論いざという時は、こっそり助けてあげる積もりではあったけど。

 まあ2人の馴れ初めなんだから、この際私がどうしてたとか、そんな事はどうでもいいだろう。その後もリーン関連で色々とあったが、二人は相思相愛。幸せいっぱいだった。私もメアリーとは仲が良くなり、凄く楽しい充実した日々を過ごしていた。

そう、あの日までは……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

処理中です...