上 下
19 / 28

廃墟屋敷の謎に迫れ④

しおりを挟む
「こういった物って。その……お金に成ったりするんですか?」

「うーん……好事家達相手になら、そこそこの額が付くかもしれないけど……どうだろう?」

 流石の王子も非合法品の相場迄は知らなかい様だ。ていうか、当たり前の様にサラサラ答えられたらそれはそれで引くけどね。

「この屋敷を相当な額で買い取るって言っただろ?これが結構な額でね。正直これを売ってもそう利益がでるとは思えないんだよ」

 金額を聞いて目ん玉が飛び出しそうになる。王都でそこそこ敷地があるとはいえ、在り得ない値段。軽く男爵領 うちが買えるレベルだ。確かによっぽどの額で売れなければ、利益は出ないだろう。

「ゲージに掛かっている魔法に高値が付いたりとかはしないんですか?」

「それはないかな。見た所、只の保存用の封印魔法みたいだし。詳しく調べて見ないと分からないけど、新技術が使われている様には見えないね」

 革新的な魔法技術ではない様だ。となると、やはり大きな利益は見込めないという事になる。

 売り物として考えると、リスクだけが高くリターンが大して見込めない。そんな物に手を出す理由は1つしかないだろう。つまり――

「利益が出ないという事でしたら、その方はこれを個人的に欲っしていた。という事になりますね。考えられるとしたら……本人がとんでもないコレクターか――」

「これの制作に携わっていたかだろうね」

 言ってしまえばここにある物は罪の証拠だ。調べられれば……ってあれ?王子の言葉に嘘がないなら、ここにいる彼女達が作られたのは30年以上前という事になる。そんな古い証拠から、果たして件の商家の人間に辿り着けるのだろうか?

 ましてやこれは王族がらみの事件。捜査所か、秘密裏に処理されてしまう可能性の方が遥かに高かい。そんな物を、態々大金を出して迄買う必要があるのか正直疑問だ。万一の保険なのだろうか?

「君はどっちだと思う?」

 王子が楽しそうに聞いてくる。王家のスキャンダルだというのに、よくもまあ楽しめるものだ。只の変人ともいえるが、ひょっとして最初っから知っていたとか?

「そこまでは流石に……」

 分からないという事を、私は素直に答える。流石に事件や物が古すぎて、私の超能力でも痕跡を辿るのは難しい。もっと日数をかけて本格的に調べればあるいは、と言った所だろうか。

「ふふ。流石に君の超能力でも、そこまでは分からないみたいだね」

「ええ、流石に古すぎて……ってなんですと!?」

え?
今超能力つった?
なんで!?

「君に特殊な力があるのは分かっていたよ」

「なななななな、なんで!?」

あ、やばい。
惚ければいいのに、焦って何でとか言っちゃった。
これじゃあ力があるって答えている様な物だ。

「婚約者の事を調べるのは当たり前だろ」

 王子が楽し気にウィンクしてくる。可愛らしく見せてはいるが、言ってる内容はとんでもない。人の素行調査を楽し気に明かすとか、明らかにおかしいでしょ。

「こっちではかなり気を使って、尻尾を見せなかったみたいだけど。男爵領の方ではゆるゆるだったみたいだね。領民の殆どが君の力を知っているみたいだったよ」

 ぬうう。過去は何処までも追いかけて来るとは言うが、まさか子供の頃の無軌道な力の行使がここに来て足を引っ張って追い込んでくれ様とは……過去の私に拳骨を喰らわせてやりたい気分だ。

 突然の急襲に怯んでいると、突然王子が私の手を取る。伏せ気味だった視線を上げると、彼と目が合った。その眼差しには先程までのおちゃらけた様子はなく、真剣そのものだ。その眼を見て私はドキッとする。

「レア・ホームズ。君に改めてプロポーズするよ。僕と結婚して欲しい」

 王子はその場に跪き、私を見つめる。

「王子……」

何だろうか……埃っぽく暗くて陰気で、更には女性の剥製迄ある様な場所だというのに。
とてもプロポーズに適しているような場所ではないというのに。
なのに、何だか胸に来る。

 それはきっと……超能力者と分かって。それでも尚、私にプロポーズしてくれたからだと思う。人にない強力な力を持つ……極端に言えば、それは人の姿をした化け物と言っていい。そんな私と知って、それでも私にプロポーズしてくれた事が純粋に嬉しかった。まあ勿論王子の事だ、腹に何かあるのだろうが……それでも嬉しいと思えてしまうから困る。

 だから私は……小さく「はい」と返事し、その場で大きく頷いた。

「ありがとう」

 王子は立ち上がり、私の肩を抱いて優しく抱き寄せる。私は黙って目を閉じた。唇に当たる柔らかい感触と熱、それに――

王子の匂い……

 心地よい感覚に浸っていると、それを取り上げる可の様に唇が離れてしまう。もう少し……そう思ってしまう私はふしだらなのだろうか?瞼を上げると、王子と目が合った。するとそれまで幸せに浸っていた気分が恥ずかしさに変わり、頭に血が上って来る。きっと今の私は茹蛸状態に違いない。恥ずかしくて王子を真っすぐ見ていられず、私は思わず王子から顔を背けた。

ファーストキス。
不意打ちなんかじゃない。
正真正銘、今度こそ私の本当のファーストキス。

そう考えると、ますます頭に血が上ってしまう。
落ち着け、私。

「レア、僕はこの国の王になるよ。君の力でどうか僕を支えて欲しい」

「え!?」

王?
第三王子が!?

 この国は世襲制だ。当然後を継ぐのは第一王子。第三王子が王位につくのは、余程の事がない限り起こり得ない。つまり王子は何かをやらかす気だ。さっきまでの夢見心地から、一気に頭が現実に引き戻される

まさかクーデターじゃないでしょうね?
流石にそんなのに巻き込まれるのは勘弁願いたい。

「あの、王子。やっぱり婚約くは――」

「よろしく頼むよ!」

 王子が笑顔で私を抱きしめる。どうやら逃がしてくれる気は無い様だ。

マジ勘弁して……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。 側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。 それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...