最後の人生、最後の願い

総帥

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第3章 アカデミー5年生

13 王弟殿下と大賢者の巡り合い

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 「シャルトルーズ君、手紙来てるよ。」

 「あ、ありがとうございます。」

 誰からかな?ルカ&ライラあいつらか?あいつらには父さんから連絡が行ってたから、俺が行方不明だったのは知ってる。王都まで押しかけて来そうな雰囲気だったらしいが、なんとか宥めたらしい。
 それでこの間帰ってきたぜーって手紙出したら、速攻で返事が来た。心配かけちまったな。夏季休暇に3人で会う約束もしたし、楽しみだ。




 「…って、王弟殿下からかい!」


 忘れてた。そういや師匠に会わせる約束してたっけ。えーと、何々。3日後ですか、はいよ。師匠に連絡しなきゃ。
 師匠は意外とあっさり了承してくれた。怒られると思ってたけど、殿下に聞きたい事もあるらしい。んー、チェスラメル様の事かねえ?俺も師匠に色々相談しないとなー。






 そしてその3日後になった訳だが。なんとも忙しい3日間だった…!

 まずカージナルさん。またまたイジメ現場に遭遇してしまい、無視する訳にもいかないので仲裁に入った。
 そしたら相手のリーダーっぽい令嬢が「シャルトルーズ様までその女の味方ですの!?」とか言ってきた。別に味方じゃ無いですけど。つか俺の名前知ってるんだ、思ってたより俺有名人?
 そこにジル先生まで出くわしちゃってさあ大変。実はジル先生って女生徒にモテるんだよねー。大人の色気がなんちゃら。ついでに前は長い髪をだらしなく纏めてたけど、今は短髪になっている。俺が三十路って言ったから身嗜みに気をつけ始めたの、知ってんだぜー。
 さらにカージナルさん、前に一度、第二王子と遭遇した事があるらしい。イジメを見てしまった王子が間に入ったらしいのだが、火に油。権力持ってる奴は余計なことしないでもらえませんかね?

 もう周囲の認識が、成績優秀で可愛らしいが貧乏で健気な令嬢(カージナルさん)。その彼女を取り巻くのが第二王子(ゼノカイト様)、生徒会長(ファル)、風紀委員長(俺)、魔法科筆頭教師(ジル先生)。他にも多数。
 俺を巻き込まないで!!!誰か助けてえええ!!今すぐ逃げたい…。なんとかこの場は先生が収めてくれたが、疲れた…。



 次はチェスラメル様。いきなり教室に押しかけて来て、お茶に誘われた。立場上断ることも出来ないので、しぶしぶ付き合った。
 この人本当にこれで普段より控えめなの!?すっげえマシンガントーク、半分以上理解不能。さりげなく魔法で探ってみようかなと思ったけど、万が一相手に気付かれたらアウトだ。我慢我慢。
 結局4時間付き合わされた。帰るとき、彼女のお付きの人にさりげなく謝罪された。



 それだけでなく普段の委員会活動も忙しいのだ。もうじき学期末、試験がある。3年生以上は魔法の試験もあるため、許可を取らずに練習する生徒が多い。家でやれ、と言いたい。まあ外で魔法使ってんのバレたら注意じゃ済まないから、学校でやってる訳だが。
 俺だって学校外じゃ使えないし。もちろん身を守るためなら話は別、正当防衛になるが。まあ飛行とかは免許あるから使えるんだけどね!

 ともかく違反者を発見し追っかけて捕まえて、たまに逆ギレされ取り押さえ、キレたいのはこっちじゃボケエエ!!となりながらも頑張った。ハムスターに癒されながら。







 こうしてクタクタになりつつ約束の放課後。明日は休みなので、多少遅くなっても大丈夫。アスラも一緒に里帰りだ!待ち合わせ場所の校門でしばらくぼーっとしてたら、いきなり目の前に転移してきた。ビビったわ!!

 

 「やあ。待たせてしまったかな?」

 「いえ、お気になさらず。では行きましょうか。」


 王弟殿下と手を繋ぎ、アスラの背に触れる。微妙に次元がズレてる所だから、ただ転移するより集中力が必要だ。…よし、確定。


 「〈テレポート〉」
 やっぱ転移といったらこれでしょう!やっぱ便利だわー。いいわー。



 「師匠はあの小屋…家にいると思います。

 師匠ー。王弟殿下がいらっしゃいましたよー。」




 「ああ、よく来たねえ。」

 師匠が予想通り家から出てきた。俺はもう慣れっこだが、殿下はかなり引いてる。まあ見た目、即身仏かと言いたいほどのミイラ婆ちゃんだからな。…いやそこまで酷くなかったよね!?


 「師匠!殿下をからかわないでくださいよ!」

 「ふぁふぁふぁ。3000歳のババアだからねえ。こんなもんだろう?」

 何がふぁふぁふぁだ。いつもがははと笑うくせに!キャラ作ってんじゃねー!
 いつものヨボヨボの婆ちゃんに戻った。



 「失礼、少々驚いてしまいました。大賢者様はお茶目で可愛らしくあらせられるのですね。」

 「シャル!この反応だよ、見習いな!」

 「あーはいはい。べんきょうになりますー。」

 殿下。紳士すぎるぜ…!この2人はほっといても平気そうだな。俺は俺で魔法の練習でもしてよーっと。師匠に相談するのは殿下が帰ってからにしよう。


 「師匠。俺は魔法の練習してるんで。何か用があれば呼んでください。」

 「ああ、はいよ。好きにしな。」


 しかしこの2人はなんの話すんだろうな?









 「では大賢者様。」

 「待った。まずその呼び方をやめとくれ。アタシは好き勝手生きただけ、そんな立派な人間なんかじゃないんでねぇ。」

 「そうでしたか、失礼。ではサイランエルベ様とお呼びしても?」

 「それも好きじゃないね。そもそもアタシの名前は、生まれた時からサラだ。それを周囲の人間が勝手に長くしたんだよ。
 今は違うみたいだが、昔は名前の長さが一種のステータスみたいになってたからねえ。高貴な連中や武功を立てた人間なんかは、やたら覚えにくい名前をつけられたもんさ。」



 唖然。今のジークリンドの表情を形容するならその言葉がぴったりだろう。まさか歴史の裏話をこんなところで知ろうとは。



 ジークリンドは、本当にサラが大賢者と呼ばれる人物なのか半信半疑だった。だがたとえ大賢者ではなくとも、シャルの扱う魔法を見ればレベルの高い教えを受けたのが分かる。恐らく数年もすれば、シャルは彼を凌駕するだろう。なので最初からサラの実力を疑ってはいなかった。
 だがこれは、彼女は予想以上だ。外見こそは常に細かく震えている老婆であるが、その威圧感は凄まじいものがある。かつてブチ切れた兄の姿に押された事があるが、それを遥かに上回る勢いだ。

 彼女は間違いなく、大賢者と呼ばれる方なのだろう。この方ならば、自分の悩みを打ち明けてもいいのかもしれない。


 「では、サラ様と呼ばせていただきます。貴女とお会いできるのを楽しみにしておりました。」

 「そうかい。」


 この大賢者との出会いが、彼に何をもたらすのだろうか。
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