最後の人生、最後の願い

総帥

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第2章 アカデミー1年生

21 俺マジカーニバル

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 「はじめ。」

 「〈浮け〉」
 ふわんぬ。

 よし、浮いた。あとは集中集中。
 と言っても手に乗っけてるイメージだから、慣れれば目を瞑っててもいけるな。




 「...安定してるな。」

 「そうですね。」

 「会話する余裕もあるか、すごいな。それが終わったらそのまま的当てだからな。切らすなよ。」

 「わかりました。」

 会話してるっつっても余裕綽々じゃあないんですけどね。うーん、疲れるな。たったこれだけなのに。



 



 「5分だ。そのまま前方にある的を狙え。届いていれば外しても構わない。」

 前方...10メートルほど先に20センチ位の的があるな。この距離なら...!


 「ふっ!!」
 投げる!頭の中で。的にまっすぐ向かってる!
 ガスッ



 「かすっただけか...。でも合格ですよね?」
 俺キャッチボールは割と得意だったんだけどなー。練習あるのみか。

 「お前...何をイメージした?」

 「え。」

 「説明できるか?」

 「はあ...。単純に浮かす、と言われてもピンとこなかったので、見えない手で掴むイメージをしました。こう。」
 予備のボールを手に持って胸の高さまで上げる。

 「そしてそのまま5分間乗せます。んで、あの的に向かってっ!」
 今度は本当に振りかぶって投げた。
 ガンッ!

 「命中!よっしゃあ!」



 「なるほどな...。よくそこまで思い付くもんだ。...お前、授業の終了10分前になったら浮かせられないやつに教えてやってくれないか。」

 「いいんですか?」

 「むしろ僕の方から頼みたい。魔法ってのは自分の手の内を晒したくないやつも多い。だからお前が教えたくないんなら言わなくていいぞ。
 僕は教師だから大まかな説明しかできないが、生徒同士で教え合うなら問題ない。」

 「俺は構いませんよ。他にも方法はあるし。」

 「...あるのか?」

 「はい、試してみないと分かりませんが...。時間まで俺、端っこの方で色々やってていいですか?」

 「まあ、いいだろう。ただし。浮遊以外は禁止だ。いいな?」

 「わかりました!」





 よっしゃ!あと30分はあるな。何から試そうかなー。そういえばさっきの浮遊。名付けるなら〈インビジブル〉。なーんつって...

 「へ?魔本に文字が...。」



 〈インビジブル〉不可視の手



 (すっげえぇええーーー!!!ナニコレカッコいいいーーー!!)

 今は授業中なので叫ぶのは自重した。しかし!

 「俺の初魔法か...!やったぜ!記念すべき1ページ目だ!」



 「お前、何1人で盛り上がってるんだ?」
 本を片手にガッツポーズしてたら先生が近付いてきた。

 「あれ先生、他のみんなは?」

 「まだもうちょいかかりそうだ。で、どうした?」

 「見てください先生!!俺の魔本にさっきの魔法が登録されたんですよー!」



 「...読めねえ。これがニホンゴってやつか?」

 「あ、そっか。そうです。遠い異国の文字だと思ってください。」

 「...色々聞きたいがまあやめとく。で、なんて書いてある?」

 「〈インビジブル〉不可視の手、です!魔法の名前と効果が書いてあるんです!凄くないっすか!?」
 ずずいっと先生の前に魔本を突き出す。見てみて!今の俺は赤子レベルよ。


 「わかった、落ち着け!はあ...魔法に名前を付けたなら、次からはその名前を唱えてみろ。効果をイメージしながらな。
 最初は言葉にして、次は心の中で。繰り返し続ければ今の半分以下の集中力で行使できるようになる。

 魔具ってのはそういうものだ。それは魔法の触媒であると共に、記憶媒体でもある。持ち主が覚えた魔法は全て魔具に記憶されるから、出来るようになれば次からは容易に発動できる。」

 「おー!そこのボール!〈インビジブル〉!」
 ふわ~んぬ

 「ほほう。せいこーう!あら?」

 閉じていた魔本が自動的に開かれている。しかも

 

 「ん?さっきのページか。へぇ...って凄いじゃないか!魔法を使ったら自動的にそのページになるんなら、分かりやすくて...シャルトルーズ?」






 もう...限界だ...。



 俺の感動は臨界点突破した。



 ありがとう、異世界。愛してるぜ、ファンタジー...!
 スローモーションで倒れていく。もう思い残す事は...いっぱいあるわ。






 「おいシャルトルーズ!?シャルーーー!!」



 先生...大声出したら...みんなの邪魔っすよ...がくり。





 「先生!シャルがどうかしたんですか!?」

 「どうしたお前?ずいぶん幸せそうな表情だが...頭平気か?」

 アルト、セイル...サンキュー、マブダチよ...。遠くではファルとリアも俺を心配そうに見ている。....俺、友人に恵まれてんだなあ。




 みんなに感謝しつつ俺は意識を手放した。


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