異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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821 慟哭の最終決戦⑭ 抱界

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「……ごめんダン。すっかり我を忘れちゃってたの~……」


 うっかり終の神ガルフェリアを滅ぼしてしまったニーナが、ションボリしながら俺に頭を下げているのが伝わってくる。

 ペタンと折り畳まれる狐耳が可愛すぎて見蕩れそうになってしまうけど、見蕩れてる場合じゃないんだよーーーっ!


 急いでデウス・エクス・マキナで滅び行くガルフェリアの魔力に干渉し、リーチェとガルシアさんの魔力を掻き集める。


「マーガレット陛下! もう命令でもお願いでも何でもいいから、今すぐ全員にガルシアさんの名前を呼ばせてくださいっ! うちの妻がついうっかりやらかしちゃったんでっ!」

「ちょっとーーーーっ!! ついうっかり終の神を滅ぼさないでよーーっ!?」


 さっきまで威厳たっぷりにガルシアさんの必要性を問いていたマーガレット陛下だったけど、纏っていた威厳をかなぐり捨てて正論過ぎるツッコミを入れてくる。


 でもね陛下。あんなに可愛いコンコンニーナが悪いわけないんだよ?

 悪いのは神とか言っておきながらうっかりニーナに滅ぼされるくらいに雑魚だった、終の神(笑)ガルフェリアが悪いんだってば。


「あ~もうっ! みんな助けてっ! 私の愛するガルを呼び戻す為に、力の限りガルの名前を呼びなさーいっ!!」

「帝国の皆も叫ぶのだ! この世界を救った英雄、ガルシア・ハーネット・スペルディア王の名前をっ!!」


 俺の瞳を通して女王と女帝が必死に助けを求める姿を見た世界中の人々は、2人の呼びかけに応じて少しずつガルシアさんの名前を呼び始める。

 段々大きくなる人々の声に、自分の見ている光景と自分の耳に響く声が幻ではないと判断した人たちも徐々に声を上げ始め、ガルシアさんを呼ぶ声は世界に急激に広まっていく。


 まだ足りない……けど!

 この調子なら後は時間だけが問題だぁっ!!


「さっきは腕を掴んでやれなくてごめん! リーチェ! リュート! 今度こそその手を掴んでやるからなぁぁぁぁ!!」


 霧散して世界に返ろうとするガルフェリアの魔力からリーチェとリュートとガルシアさんの魂だけを選別し、それと並行してガルフェリアの魔力を奪ってリーチェのエロボディを再構築していく。


 扱う情報量のあまりの膨大さに寒気が止まらず、さっきからガンガンと酷い頭痛が鳴り止まない。

 けれどリーチェとリュートを取り戻す為なら、こんな苦痛は屁でもないぜっ!


「ティムルの瞳を貸してくれぇ!! お姉さんの青い瞳で、リーチェとリュートとガルシアさんの魔力を見分けさせて欲しいんだぁっ!!」

「私の身体は内側まで全部ダンのものなんだから、いちいち断らないで勝手に使いなさいったらーっ!」


 ティムルの叫びと共に、俺の視界に魔力の流れが可視化する。

 デウス・エクス・マキナで直感的に把握する魔力に加えて、某ホラーゲームのイメージでティムルの視界をジャックし、ティムルにだけ許された魔力視の能力で霧散する魔力を選り分けていく。


「ましてやリーチェを取り戻す為なら、お姉さんの魂ごと永遠にダンに捧げるわーーっ!! だからお願いっ! リーチェを助けてーっ!!」

「アウラの精霊魔法も貸してくれぇ!! 霧散する3人の魔力を繋ぎ止める為に、大気に干渉するお前の力が必要なんだぁぁぁっ!!」

「戻ってきてリュートっ!! せっかくリーチェお姉ちゃんが守ってくれたけど、貴女まで居なくなっちゃったらどうやって生きれば分からないんだからーーっ!!」


 それでも間に合わずに霧散しようとする魂をアウラの精霊魔法で繋ぎとめ、無理矢理3人を救う時間を稼ぎ出す。


 帰って来いリーチェ! 掴んでくれリュート!

 お前のエロボディなら、新品のものを新たに用意してやるからさぁっ!!


「見てみんな! ガルが邪神を滅ぼしてくれたわっ! 後はガルさえ帰ってきたらハッピーエンドを迎えられるの! だから呼んでガルの名前を! 私と一緒にガルシアの名前を叫んでーーーっ!!」

「帝国に出現した邪神を祓ってくれたのに、恩人を救えぬようでは帝国民の名折れだぞ!! 帝国の民よっ!! 今こそ救世主ガルシアの名前を叫ぶのだーーーっ!!」


 マーガレット陛下とカレンの懇願に合わせて、世界中で爆発する英雄ガルシアの帰還を望む声。

 その声に引っ張られてガルフェリアの魔力が再構成を果たしていき、ガルシアさんの肉体が構築され始めたようだ。


 その一方で俺が生み出すリーチェの肉体は、ガルシアさんの肉体の構築の半分くらいのスピードでしか構築が進まない。

 リーチェとリュートを想う気持ちなら世界中の全ての人の想いよりも強いつもりでいたんだけど、流石に多勢に無勢だったかなぁっ!?


「くそっ……! ご都合主義の極地であるデウス・エクス・マキナを持ってしても、魔力から肉体を生み出すのは容易じゃないみたいだなぁ……! それでも絶対に成功させて見せるけどなっ!!」

「私の触心も持ってけダンさんっ! 大した役には立たないだろうけど、魔力の選別にでも役立ててくれたまえよっ!」


 キュールの右手と繋がったデウス・エクス・マキナに、触心の解析能力が重なっていく。

 触心の魔力解析能力を受け取った俺の魔力が、リーチェのエロボディの構築を加速させてくれる。


「私のおっぱいの感触も思い出してくださいダンさんっ! リーチェさんのおっぱいと一緒にちゅぱちゅぱしてた私の乳首の味から、リーチェさんの乳首の味を思い出してーーーっ!!」

「何言い出してのエロブタムーリィィィ!? 今この場の声は世界中の人と繋がってるんだから、滅多なこと言わないでくれるーっ!?」


 ムーリ本人は至って真面目に発言してるのは分かるんだけどさーっ!

 流石のナチュラルボーンシスターエロブタムーリでも、全世界に向けておっぱいちゅぱちゅぱとか言うんじゃありませーんっ!!

 あまりにビックリして、危うく魔力制御をミスるかと思ったじゃないかよーっ!!


 リーチェの甘~い乳首の味を思い出せと言われたら、口内にツバが溢れてきちゃったけどねーっ!


「くっそーーっ!! 俺の口がお前のおっぱいを吸いたくて涎が溢れてきてるよリーチェ! 早く戻ってきて、いつものようにそのおっぱいを俺に差し出せリュート! ひたすらちゅぱちゅぱしてやるから……って!?」


 ヤケクソのようにおっぱいに言及すると、俺が新たに構築しているリーチェのエロボディがその声に反応し、明らかにおっぱいの生成が早まったのが分かった。

 マジかっ!? 想いだけで充分かと思ってエロスは出来るだけ口にしなかったけど、エロス大権現様の再臨にはえっちな祝詞が不可欠なのかぁっ!?


「元々俺しか知らなかったお前のエロ過ぎる身体だけど、新たにまだ俺専用に仕込み直せると思うと今から興奮しっぱなしだよ! 今度こそお前を孕ませてやるから、さっさと戻ってきて俺にひたすら抱かれろリーチェぇっ! リュートぉっ!!」

「ちょっとーーーっ!! さっきから真面目にやりなさいよーっ!? なんてこと叫んでるのよ貴方はーーーっ!?」


 リーチェ用にえっちな詠唱呪文を叫んでいると、マーガレット陛下がふざけると言わんばかりに全力でツッコミを入れてくる。

 でもね陛下! 我が家にとってはえっちこそが本質で本気で本領なんですよーっ!


「陛下はガルシアさんに集中してくださいっ! こっちにツッコミ入れてる余裕があるなら、さっさとガルシアさんを助けて俺に楽させてくださいったらぁ!!」

「言われなくったってそうしてるわよーっ!! お願いガル! 早く戻ってきて! 私とガルの絆はっ……! 王国民と紡いだ絆は、エロスなんかに絶対負けないんだからーっ!!」


 なんで対決みたいな雰囲気になってんの陛下!?

 味方だからっ! 俺達今共闘してるんですってばーーっ!?


 くっそぉ! エロシスターメスブタムーリちゃんのちゅぱちゅぱ発言と、それに反応したリーチェとリュートの俺専用エロボディのおかげですっかりいつもの雰囲気だよ!

 お蔭様で寒気も頭痛もどっか行って、もう俺の魔力制御を妨げるものはなにも……。


「……なにっ!?」


 我が家の2大おっぱい魔神のおかげで集中力を増した俺は、滅び行き崩れ落ちるガルフェリアの体内に、俺の魔力操作に抗う存在が残っているのを感知する。

 ソレは俺が気付いた瞬間にその存在感を増幅し、禍々しい魔力を世界中に向けて発し始める。


『させぬぞ神殺しぃぃ……!! 貴様の思い通りにだけは、絶対にさせぬぅぅ!!』

「コイツ、識の水晶か!? 悪あがきしてんじゃねぇよ紛い物ーーーっ!!」

『我を偽者と嘲るか、神殺し……!! ならば神の力をその身に刻み、そして死にゆけぇぇい!! 【引き裂け、大崩界】!!』

「くっ……! 流石に範囲が広すぎて無効化しきれませんっ……!」


 呼び水の鏡による無尽の魔力を使って始界の王笏を発動し、この世界全てに向かって滅びのウェポンスキルを放つガルフェリア。

 流石に世界中に放たれてしまった魔力をダークリベレイターではキャンセルしきれなかったヴァルゴが、悔しそうに歯噛みする。


 だがな識の水晶! こんな最後っ屁で全てを台無しにされるなんて、この俺が許すわけねぇだろうがーーっ!!


「ニーナ! フラッタ! ヴァルゴ! ガルフェリアの体内に3つの神器の存在を感じる! 今すぐ全部叩き割って、この戦いを終わらせてくれーーっ!!」

「了解なのーっ! 勢い余ってガルフェリアを滅ぼした罪滅ぼしに、しっかり神器まで滅ぼしてやるんだからーっ!」

「了解じゃないですよっ!? 神器を破壊したところでもう大崩界は止められ……」

「そっちは任せろヴァルゴ! 変世の女神様が残してくださった神器に、これ以上人を不幸になんかさせる気はないっ!!」


 ガルフェリアから奪った魔力とユニの魔力制御、そしてガルシアさんを呼ぶ世界中の声を撚りあわせて、世界を守る大結界を生み出してやる。


 既に放たれてしまった大崩界を食い止める手立てが無いってんならさぁ!

 大崩界のターゲットである世界を守ってあげればいいじゃない作戦だーいっ!!


「『遍く脅威から全てを守れぇ!! 抱界--っ!!』」

『神器を舐めるな神殺しぃぃぃ!! 原初の神が遺せし秘法を、人の手で食い止められるはずが……』

「お前こそ神器を舐めるな紛い物がぁぁっっ!! 人々の幸せを願って女神様が残してくれた神器が、世界の崩壊なんかを招くはずが無いだろうがぁぁぁっ!!」


 心から信じれば、魔力は必ず答えてくれる。

 俺はこの世界を創ってくれた女神様たちも、祝福の力を齎してくれたトライラム様のことも欠片だって疑っちゃいないっ!


 女神様たちが残した神器が、トライラム様が齎してくれた祝福の力が、紛い物なんかに負けるはず無いだろうがぁぁぁっ!!


『ば、馬鹿なっ……! ほ、本当に大崩界を受けきって……!?』

「紛い物に侵され、人々を不幸にしかしない神器なんてもうこの世には必要無い! フラッタの破壊力とヴァルゴの魔力分解能力を繋ぎ合わせて、神器を砕いてくれ、ニーナァァァァァッ!!」

「まぁぁぁっかせるのーーーっ!!」


 さっきまでションボリしていたのが嘘のように張り切ったニーナが、崩れ行くガルフェリアの体内に躊躇わずに突っ込んだ。

 そんなニーナを見て、慌てて後を追うフラッタとヴァルゴ。


「フラッタ! ヴァルゴ! グランブルーバスターとダークリベレイターを全力で私に打ち込んで来るのーっ! 私もダンみたいに2人の魔力を混ぜ合わせて見せるんだからーっ!」

「くっ……! 信じるのじゃニーナ! 妾の全力、受けとってくれーーーっ!!」

「少しは躊躇ってくださいよフラッターーーっ!? ああもうっ! ホンットにニーナは旦那様にそっくりなんだからーーっ!!」


 叫びと共に放たれた2人の1撃を、両手に1つずつ持つアウターレア武器で受けとったニーナは、振り向き様に2本のダガーをクロスさせ、そのままガルフェリアの中心に叩き込む。


「さよなら識の水晶! 直ぐにバルバロイも後を負わせてあげるからねっ! 神器を滅ぼしてっ! 『ディバインスレイヤァァァァ!!』」


 ニーナが放った黄金の1撃が、ガルフェリアの核となっていた識の水晶を消滅させていく。

 本来人の手では破壊は不可能だと思われた神器も、竜王フラッタの破壊力と守人ヴァルゴの魔力分解能力を重ねられてはひとたまりも無かったようだ。


『そんな馬鹿なぁっ!! 馬鹿……なぁぁぁぁ……!!』


 識の水晶の断末魔が谺するけど、そんなものに構ってる余裕は無いんだよっ!

 さぁ帰ってこいリーチェ! リュートーーっ!


 3つの神器が失われたことで俺の魔力制御を阻害するものも無くなったのか、途中まで生成出来ていたリーチェとリュートの器と、ガルシアさんの肉体が急速に構築されていく。

 ガルシアさんの肉体に比べてリーチェとリュートの肉体の生成が遅かったのは、識の水晶が俺の魔力制御に抗っていやがったからか! 舐めやがって……!


「さぁ仕上げだみんな! 帰還を望むその人の名を、心の限り叫ぶんだーーーーっ!!」

「「「リーチェーーーーッ!!」」」

「「リュートーーーッ!!!」」

「「「ガルシアーーーーっ!!」」」


 ガルフェリアに囚われていた膨大な魔力が、奴からの支配から解放されて喜んでいるみたいに大気に踊る。

 そしてまるで感謝を示すように俺達の呼びかけに応じ、ガルシアさんの首の下から新たな肉体を生み出していく。


「やった……! ガル! 帰ってきて、ガルーーー!」


 喜びに満ちたマーガレット陛下の呼びかけに一瞬遅れて、魔力制御の為に突き出していた俺の両手を掴む、柔らかな手の感触が伝わってくる。


 そうだ。俺が居る場所がお前が帰ってくる場所なんだ。

 そのまま俺のところに帰ってくるんだ! リーチェ! リュート!!


「さっきはこの手を掴めなくてごめん! だけどもう離さない! リーチェのこの手もリュートのこの手も、絶対に離さないからなぁぁぁっ!!」

「帰ってきなさいリーチェ!! 貴女が居なかったらもう、お姉さんは幸せになんてなれないんだからーーっ!!」

「貴女の帰ってくる場所はパパの居る場所でしょっ!? 建設中の別荘のお披露目もせずに死んでる場合じゃないんだからっ! さっさと帰ってきなさいバカリュートーーーっ!!」


 俺とティムルとアウラの声に応えるように、俺の掴んだ感触の先に急速に肉体の構築が進んでいく。

 俺は何とかガルフェリアからリーチェを救い出し、全員生存のご都合主義全開のハッピーエンドを迎える事が……って、え?


「…………マジで?」


 リーチェを、そしてリュートを助けられた喜びすら吹き飛んで、ただただ困惑してしまう俺。


 ティムルが居る側の俺の左手は白髪のリュートが掴んでいたのだけれど……。

 アウラが居る側の俺の右手を掴んでいたのは、腰まで伸びた青い長髪が美しい、けれど今まで見たことのない女性だった。


 見たことはないけれど、どう考えてもあの人、だよなぁ……?
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