異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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713 アベコベ

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 放棄された教会の旧本部施設の中で、本来アウター内部にしかないはずの魔法扉が設置されていた。

 偶然ニーナが開放に成功してしまったけれど、当のニーナを除くみんなは混乱の極みに陥ってしまった。


「なんで魔法扉がアウター外にあるんだよ!? 魔法扉ってアウターが生み出す特殊な扉じゃなかったのか!?」

「「「…………」」」


 しかし俺の疑問に答えられるはずなど居るはずも無く、みんなも同じように困惑してしまっている。


「ポータルもアナザーポータルも使用出来ないわね……。ポータルが使用出来ないのは屋内だからだけど、アナザーポータルが使用出来ないなら、ここは間違いなくアウターの外って扱いのはずなのに……」

「だけど探索魔法オープンで開けられるのは魔法扉だけのはずだ……。人工の扉がオープンで開けるのであれば、奈落の中継地点に侵入する時にあんなに苦労しなくて済んだんだからね」


 ティムルが改めてここがアウター外である事を検証し、リーチェが設置されていたのが魔法扉であった事を確認している。

 そう言えば確か奈落でシルヴァを救出した時も、ニーナがとりあえずオープンを試していたっけ。


「だけど皆さん。魔法扉であるなら、マインドディプリートで魔力供給が断たれた時に何らかの影響があるはずじゃないですか? アウター内の魔法扉にマインドディプリートを試した例なんてないでしょうけど……」

「ん~。ムーリさんの言う通り、アウター内でマインドディプリートを試した記録はないと思いますけど……。アウターに発生した魔力扉の魔力供給を止める事は恐らく無理なんじゃないですかね? 魔法扉もアウターの一部扱いでしょうから」

「私もシャロ様と同意見ですね。異界から無尽の魔力が注ぎ込まれ続けているアウターと違い、恐らくこの扉に注がれていた魔力は有限だったのでしょう。だから本来の魔法扉を参考にして考えても仕方ないのでは?」


 今回の件とアウター内に発生する魔法扉は分けて考えるべきだとラトリアが発言する。

 だけどそもそも分けて考える以前に、俺達って魔法扉に遭遇したこと自体が初めてなんだよな。だから参考にすべき体験が無いんだよ。


 王国中のアウターを全て踏破したのに魔法扉を見たことが無いなんて少しおかしく感じるけれど、恐らくそれもまた探索魔法が理由なんだろうな。

 俺達はスポット以降は常にMAP魔法サーチを発動して最短距離を突っ走っているからね。魔法扉で閉じられた行き止まりを知らずに避けて探索していたんだろう。


「母上の言う事も一理あるが、そもそもアウター内の魔法扉とて物質化していた可能性も否定出来ないのじゃ。魔力のみで扉が構成されていた場合、烈波斬や断空で無理矢理突破される危険性もあるからのう」

「それはそうだね……。ひょっとしたら魔法扉は魔力で生成された物質……装備品に近い性質を持っているのかもしれない。仮に傷ついても魔力を注げば修復が可能であるなら、ここを閉ざしていた扉の状態の良さにも納得がいくよ……」

「ねぇねぇ。リーチェの言っていることが合っているのかどうかは分からないんだけどさー。せっかく空いたんだから、とりあえず中に入って見てみないー?」


 あーでもない、こーでもないと議論していると、ニーナが退屈そうに扉の先を指差して気軽に提案してくる。

 んもーニーナってばっ。相変わらず興味無いことはあっさりスルーしちゃうんだからーっ。


「ぷっ! あはははははっ! なんで開けた本人は1番暢気な顔してるのニーナ!?」

「え~? だって母さん、もう開いちゃった扉の事とかどうでも良くないかな~? 開ける前なら悩むのも分かるんだけどー」

「単純明快すぎる答えにぐうの音も出ないよ……。研究者としてはじっくりと検証したいところだけど、扉の先を調べたほうが分かることも多そうだしね……。私も先に進む事に賛成するよ……」


 獣爵家母娘の会話を聞いて、疲れたように先に進む事を進言してくるキュール。


 キュールとしては先に進みたい気持ちと魔法扉について議論したい気持ちが半々なんだろうな。

 だけど総合的に判断して、先に進めば魔法扉の謎も分かるかもしれないと思ったようだ。


 他のみんなも未だ困惑を隠しきれていない様子だけど、それでも先に進む事に反対する者は居なかった。

 扉の先が気になるというのもあるけど、魔法扉に関して議論できるほどの知識を持っていないってこともあるんだろうな。


「ん~。アウターにしかないはずの魔法扉がこんな場所にあるなんて、なんだかアベコベだねー? でも普通の方法じゃ開けられないっていう魔法扉なら、確かにこれ以上無い防犯機能ではあるよ」

「アベコベと言やぁ、ここの調査で関わった要素全てがアベコベだけどな? 魔法やスキルを扱う野生動物。魔物ではなく野生動物を生み出すマジックアイテム。極めつけにアウターの外にある魔法扉だろ? なんていうか、ルールを守ってないって感じがするよなー?」


 チャールとシーズの雑談のような会話に、なんだかゾクリとしたものを感じてしまう。


 実際に変世神話なんて物語が残っているくらいだ。

 この世界は魔力を用いて誰かが創った、もしくは作り変えた世界に違いないのだ。


 もしもその製作者であれば、この世界の理を無視して様々なルール違反をすることは可能だろうが……。


「この世界のルールを守らない存在ですか? そんな存在が居るとしたら、それはこの世界を創った神様くらいのものでしょうね?」

「あははっ。神様と仲良くしてたから、神様もトライラム教会に便宜を図ってくれたのかなーっ?」


 ヴァルゴとアウラが神様の存在について語っているけど、解釈が可愛すぎて堪らないんだよ?

 アウラがした解釈の通りなら、平和で優しい神様だなーで済むんだけどさぁ……。


 だけどトライラム教会が出来たのって、確かこの世界が誕生したときと同時ってわけじゃなかったはずだよな?

 現在に残されている神話や伝承がどの程度信用できるかは分からないけれど、トライラム様が職業の祝福を授けるまで、魔物の脅威に苦しみながらも人類はしっかりと生存して繁栄していた筈なのだ。


 トライラム様がこの世界を創った製作者であったなら、こんなに悩まずに済んだだろう。

 職業システムをこの世に齎し、システムの根幹にアクセスする権限を有していたとしても不思議じゃない。


 けれどトライラム様がこの世界に出現したのは、神話ではなく記録として伝えられているくらいの年月しか経っていないはずだ。

 つまりトライラム様はこの世界を作った女神ではない。なのにシステムの根幹に介入しているようにしか思えない……。


「ひょっとして、同じ世界の住人だったんだろうか……?」

「ダンさん? なんのことですか?」

「いやさぁムーリ……。いくらなんでもトライラム様ってなんでも出来すぎる気がするんだよ。だからひょっとしたらこの世界を人の住める地に作り変えた変世の3女神とトライラム様って、同じ世界の出身者なんじゃないかな~ってさ……」

「あーっ。言われてみればその可能性はありそうですねっ!?」


 あれ? 思ったよりムーリの反応が軽いぞ?

 結構衝撃的な事実を告げたつもりだったのに、むしろ嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねているんだけど?


 重そうなのは跳ねる度にたぽんたぽん揺れているおっぱいくらいだな?


「ムーリ的に……というか教会的には嫌だったり驚いたりはしないの? 思ったより普通に受け入れられてビックリしてるんだけど」

「トライラム様も変世の3女神も等しく敬われるべき方々ですから。出身がどうこうなんて理由で私たちの信仰が揺らぐことはありませんっ」

「おお、流石はムーリ。見事な信仰心だ……。揺れるのはその大きいおっぱいだけってことだね?」

「揺れてるのは『ダンさん専用のえっちなムーリのおっぱい』ですよっ。えっちなムーリは大好きなダンさんのことならぜーんぶ受け入れちゃんですっ」


 俺におっぱいを突き出して、自身の両手でゆっさゆっさと俺におっぱいを見せつけてくるムーリ。

 ルーロさんには完全に背中を向けている位置取りが完璧すぎて笑ってしまうなっ。


 しかし流石はエロシスタームーリだ。まさか神話と信仰心の話からエロ話に繋げるとは読めなかった。この俺の目を持ってしてもっ。


「それにですねー。トライラム様や変世の3女神の話をされたって、私たちはもう驚いたり出来ないんですよー?」

「ん? どういうこと? 理解を超えていて思考が追い付かないってことかな」

「違いますーっ。トライラム様よりもよっぽど何でも出来ちゃう誰かさんのおかげで、トライラム様の事を聞いても驚けなくなっちゃんですよーだっ」


 からかうようにくすくすと笑いながら、そのエロボディで思い切り抱き付いてくるムーリ。

 そのまま我慢出来ないとばかりに唇を重ねてきて、俺の口の中をゆっくりと丁寧に満遍なく舐め回してくる。


 ってムーリ。今この場には家族以外の、それこそ教会の関係者さんが同席してるんだよ? そんな場所でエロ行為に走ったら、1番ダメージが深刻なのはムーリ自身だと思うんだけど。

 そんな俺の憂いを嘲笑うかのように思い切り抱き付いて、俺にそのおっぱいをムギュムギュと押し付け、俺の股間に自身の股間を力いっぱいこすりつけてくるエロシスター。


「さ、進みましょうダンさん……。早く調査を終わらせて、えっちなムーリを滅茶苦茶にしてください……」

「……逡巡した俺を先に進ませる為に体を張りすぎだからね? 勿論可愛いムーリのことは全力でむちゃくちゃにしてあげる所存だけど」


 どうやらムーリは、エロい行為のついでに迷う俺の背中を押してくれたようだ。

 そのお礼に唇を重ねるだけのキスを贈って、改めて扉の先に視線を送る。


「待たせちゃってごめん。先に進もう。既に開いた扉の前で立ち止まっていても仕方無いからね」

「あはーっ。ムーリに感謝しなさいよー? フルファインダーも忘れてえっちなムーリとの行為を楽しんだおかげで持久力補正が働いて、もう肉体疲労なんか残ってないでしょー?」


 ティムルの指摘通り、エロシスターが気持ちよすぎてフルファインダーを維持できなかった。

 そのおかげで持久力補正が戻ってきて、俺の体からすっかり疲労を取り除いてくれたようだ。


 でも当のムーリが、そうなんですか? と可愛く首を傾げているので、本人はただエロいことをしたかっただけのようですよ?


「フルファインダーには特におかしな反応は感じられない。リーチェ。アウラ。ティムルも索敵と警戒を続けてね」


 簡単にみんなに指示を出して、フルファインダーを使える俺と戦闘力の高いヴァルゴが先頭になり、同じく戦闘力の高いフラッタとラトリアに殿を任せて、扉の向こうに足を踏み入れる。

 しかし扉の向こうにはただ広いだけの部屋が広がっているだけで、スポーニングチュトラリーで守らなければならないような秘密が隠されているようにはとても思えなかった。


「どういうことかしら? 魔法扉とスポーニングチュトラリーには絶えず魔力が注がれていたから、その魔力の供給源がここにあると思ったんだけど……」

「あ、見て見てティムル! 部屋の隅にマジックアイテムがあるよっ。あれって多分、アウラが居た場所にあったものと同じじゃないかなー?」


 ニーナが指差した部屋の隅には、確かに小さな柱のようなものが設置されている。


 アウラの時はアウラに集中していたせいで見れなかったからな。

 って言うと、アウラの裸に見蕩れてたみたいに聞こえちゃうけどそうじゃなくて、勿論アウラの裸は毎日見てもその度に息を飲むほど魅力的なんだけどそうじゃなくて、あれがマジックアイテムなら鑑定しておこうじゃないか。



 召魔の灯台



「召魔の灯台か。名前から察するに、周囲の魔力を集める……マインドディプリートとは逆の性能を持ったマジックアイテムなのかな?」

「確かにアウラのところに設置されていたものだわ。今回は破壊する必要性も無いから、取り外せるなら持っていきましょ。キュール、触心で調べてもらえる?」

「その言葉を待ってたーっ! 任せておくれよティムルさんっ! 私だって持ち帰って研究したいんだから、絶対に持ち帰る方法を見つけてみせるからねーっ」


 喜々として部屋の角に走っていくキュールと、用心の為についていくエマ。

 う~ん……。張り切ってるキュールには悪いんだけど……。


「ねぇガブリエッタさん。いくら調査を許可したとは言っても、ここで見つかったアイテムを俺達が持ち去るのは不味いよねぇ……?」

「え!? う、う~ん……。教主様や司教様なら気になさらないかとは思いますが……。い、一応ここはまだ教会の所有する物件のはずなので…。えっと、その……」

「だよね、了解。仮に持ち帰るにしても、1度教会に提出してから交渉するって約束するよ」


 破棄された施設とは言っても、それはガルクーザによって仕方なく破棄されたわけだからな。

 トライラム教会の本音としては、この場所にあるものは全て回収したいと思っている事だろう。


 教会と敵対しても何1ついいことは無いから、調査させていただいている代わりに、調査で得たものはしっかりと報告しなくちゃね。


「うんっ。どうやらこのまま引き抜いてもいいようだ。使用には制限も多いみたいだけど、とりあえず説明は後々っ。まずは回収させて欲しい」


 キュールの提案は尤もだと、まずは召魔の灯台を全て回収する。

 それが済んだらもう問題ないと、スポーニングチュトラリーに突っ込んでいたマインドティプリートも回収する。


 キュールの見立て通り、マインドディプリートを回収しても狒々たちが生み出されることはもうなかった。


「さて。これで間違いなく安全も確保できたことだし、まずは触心で得た情報を共有させてもらおうかな」


 危険が去ったとひと息吐きながら、召魔の灯台を触心して得た情報を報告してくれるキュール。

 どうやら召魔の灯台は四角形の部屋の4隅に等間隔で配置しなければ発動しないらしく、屋外でも使えない、1本でも欠けたら使えないという、強力な分結構扱い難いマジックアイテムのようだった。


「魔力の送り先は3ヶ所。うち2つはそれぞれのスポーニングチュトラリーだね」

「残る1つは魔法扉の維持に使われてたってことか」

「ううんダンさん。魔法扉はスポーニングチュトラリーの1機能に過ぎなかったみたい。召魔の灯台が魔力を送っていたのは、どうやらここのようなんだよ」


 ここと言いながら、自分の立っている床を指差すキュール。

 しかし彼女の指す指の先を確認しても、そこにはなにも無い石造りの床があるだけだった。


「どういうこと? 床ってことなんだろうけど、床に魔力を送ってなんの意味が……」

「それがねダンさん……。実はこの場所に、かつては転移魔法陣があったっぽいんだよね……」

「「「…………はぁっ!!?」」」


 キュールから齎された予想外の報告に、この場の全員が驚きのハーモニーを奏でてしまった。

 転移魔法陣って……。トライラム様ってマジで何者なんだよ……!?
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