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最新章
714 痕跡
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トライラム教会のかつての本部だった場所に、転移魔法陣が設置されていた痕跡があった。
キュールから齎されたその情報に、この場に居るみんなが激しく動揺してしまう。
魔法扉と野生動物を生み出すスポーニングチュトラリーだって、その性能を考えるとまず間違いなくレリックアイテムに分類されるマジックアイテムのはず。
それだけでも異常事態だっていうのに、極めつけは転移魔法陣とか、トライラム様って本当に神様だったんじゃないのか……?
「触心で得た情報を疑う気は無いけど……。この眼で見ても、転移魔法陣の痕跡なんて見つけられないわね……」
青い瞳をしたティムルが、注意深く床を観察しながら首を傾げている。
俺の思考が纏まらない中で、いち早く立ち直ったティムルお姉さんがキュールに問いかける。
「ねぇキュール。いくら触心とは言え、転移魔法陣なんて見たことも聞いたことも無い代物が設置されていたなんてこと、本当に分かるものなの?」
「いや、私たちは既に転移魔法陣を見ているよティムルさん。それどころか転移魔法陣を利用だってしたじゃないか。よぉく思いだしてみて……」
「利用したこともある……って、もしかしてキュールさん。貴女が言っているのは始まりの黒の入り口のことですか?」
「その通りだよシャロさんっ! 流石はこの場の誰よりも始まりの黒を身近に感じて生活していただけのことはあるねっ」
もしやと回答したシャロに、大正解だと認めるキュール。
始まりの黒の入り口……。
言われてみれば確かにあそこには転移魔法陣が設置されていたな……。
「実は先日始まりの黒を探索した際に、よろけた振りをして転移魔法陣を触心しておいたのさっ。流石にこんな事態は想定してなかったけど」
「ゴブトゴが聞いたら卒倒しそうな話ですね? ま、あの時のゴブトゴはさっさと帰ってしまったのですから自暴自得でしょう」
「今のシャロの発言で、ゴブトゴさんがスペルディア王家に今までどんな扱いを受けてきたのかが窺い知れてしまうなぁ。ま、済んだことは仕方ない」
「絶対にダンさんも宰相殿に心労をおかけしてると思うけど、元は私の行動が原因だから藪をつつくのはやめておくよ」
シャロ、キュール、俺という、ゴブトゴさんの3大ストレス元の会話に、リーチェやラトリアなどの良心的な貴族組が憐憫の表情を浮かべている。
俺達を信用して始まりの黒に入れてくれたのに、これ幸いにと触心で情報を盗んでいくんだからタチが悪いよな。こんな事実を伝えて気苦労を重ねさせるよりは、黙っておいた方がお互いのためだろう、うん。
仕方無いなぁと溜め息を吐きながら俺にぎゅーっと抱きついてきたリーチェは、俺にエロ過ぎる体をムニュムニュ押し付けながらキュールの話の先を促した。
「話を戻すよキュール。君は始まりの黒の入り口の転移魔法陣を触心して得られた情報と、召魔の灯台を触心して得られた情報に共通点を見出したわけだね?」
「流石は建国の英雄、話が分かるし理解も早いねっ。概ねその通りだよっ」
「もう少し具体的に説明できる? そうだな……例えば転移魔法陣の再起動は可能かとか、ぼくたちにも転移魔法陣は作れるのかとか。転移先が何処なのかも出来れば知りたいけど」
「えーと、恐らく転移魔法陣の再起動は不可能だね。ここにあった転移魔法陣は既に失われているから、再起動しようにも、そもそも無いのさ」
どうやら召魔の灯台を触心したことでその魔力の供給先である転移魔法陣の存在に気付くことが出来たらしいんだけど、転移魔方陣に触心したわけじゃないからそれ以上のことは分からなかったようだ。
始まりの黒の転移魔法陣はアウター由来のものだった為、そちらを再現する方法もキュールは思いつかないとのこと。
「私たちに同じ物が作れるかはノーコメント。私は不可能だと思うけど、ダンさんなら作りかねないって意味で」
「あ~……。確かにダンなら作りかねないねぇ……。でも今はとりあえず、転移魔法陣の設置は不可能だということにしておこう。魔法陣が既に失われているなら、やっぱり転移先も分からないかな?」
「具体的には分からないけど、この場所から西側に転移したってことだけは分かったよ。それ以上は距離も何も分からなかったけど」
どうやら召魔の灯台から魔力の流れを解析した結果、ここから西側に向けて魔力が向けられていた痕跡があるようだ。
転移魔方陣に魔力を供給していたマジックアイテムからここまで情報を引き出すなんて、キュールの触心は明らかに鑑定よりも上位の情報収集能力と言って良さそうだ。
「ここから西かぁ……。それはちょっと範囲が広すぎて絞りきれないね……。ガブリエッタさん。ここはフォアーク神殿の近く、グルトヴェーダ山岳地帯付近なんだよね?」
「そうですね。王国の北東端近くにあると思っていただいて構いません。ですのでここより西と言われると……」
「そう。人類の生存圏のほとんどが可能性に含まれてしまうということさ。流石に徒歩で行けるような場所に転移魔法陣を利用するとは思えないけど、転移先に心当たりはさっぱりって感じだねぇ」
どうやら現時点で転移魔法陣の転移先を特定するのは難しそうだ。
フォアーク神殿付近のこの教会施設よりも東に位置する街なんて、スペルド王国最東端の街であるエルドパスタムくらいしかなく、それ以外の殆どの街や地域は転移先の候補になってしまうらしい。
なにかこの部屋に手掛かりはないかと軽く調査してみたものの、これ以上見つかるものは無かった。
スポーニングチュトラリーが守っていたのは、まず間違いなく転移魔法陣だったのだろう。
これ以上ここで黙ってつっ立っていても仕方ないので、ここから本格的に施設内を調査しよう。
「これから改めてフルファインダーを使って施設内外を索敵してみるけど、スポーニングチュトラリーを押さえた以上もう危険は無いはずだ。各自手分けして施設内を調査してくれる? 非戦闘員は必ず戦闘員とコンビを組むこと。リーチェは全員の会話を間違いなく繋いでおいて欲しい」
あの狒々たちがこの部屋の防衛の為に生み出された生物なら、この部屋を制圧されているのにどこかに潜んで俺達を狙っている可能性はかなり低いだろう。
でもあいつらの知能の高さは人以上だと感じるレベルなので、改めてもう1回周囲の安全確認を行なう事にして……。
「残っている資料はなるべく持ち出して教会に引き渡すつもりだけど、古い資料は状態も悪いと思うから扱いには注意してね? キュールはスポーニングチュトラリーの調査をお願い。取り外し可能ならさっさと外してガブリエッタさんに回収してもらって」
「了解。こんな物騒なものはさっさと回収してしまうに限るね。私としては触心させてもらえるだけでありがたいし、召魔の灯台と合わせて速やかに提出するよ」
「皆さんのご協力に心から感謝を。夫を報告に戻しますので、資料の運び出しや管理の人手もご提供できると思います」
「さぁみんな手分けして、失われてしまった教会の歴史を紐解こうっ」
予想よりもずっと危険な場所だったけれど、ようやく本来の目的である旧本部施設の調査を開始する。
フルファインダーで狒々が1匹も残っていない事を確認した頃に、ルーロさんが多数の教会兵を連れて戻ってきた。
施設内で見つかった資料の運び出しや、施設の老朽化具合などを手際よくこなしていく教会兵の皆さん。
仕事柄古い資料を扱うのにも慣れていて、その仕事はスムーズで危なげがない。むしろ我が家のみんなの方が危なっかしいくらいだった。
無事にスポーニングチュトラリーの取り外しにも成功し、この施設の奪還に成功した。
「召魔の灯台は大気中の魔力を少しずつ、だけどほぼ上限無く蓄積できるマジックアイテムだよ。スポーニングチュトラリーと合わせて、変な扱いをしないようにくれぐれも気をつけて」
「いやいやっ。流石に教会でこれを使用することは無いと思いますよ? ですが教会の歴史と真実を知る上での大切な資料です。管理はお任せください」
キュールが渡したマジックアイテムを、恐る恐るインベントリに収納するガブリエッタさん。
どうやらガブリエッタさんって、8㎥のインベントリを持っているみたいだね。
……って、8㎥のインベントリは旅人と冒険者だけで到達できるんだったな。
ポータルが使える時点で、ルーロさんもガブリエッタさんもインベントリが進化していてもおかしくなかったわ。
「今回回収した資料は私共の方でも確認しますが、ダンさんたちもいつでも閲覧できるよう取り計らっておきます」
「ありがとうルーロさん。多分そのうちお邪魔すると思うからよろしく」
「いつでもどうぞ。合わせてこちらの施設の調査も引き続き継続していきますので、何か分かったらご報告します。特に転移魔法陣の転移先については我々も知りたいですから」
ガブリエッタさん、ルーロさんと握手を交わし、この場の調査を引き継ぐことにする。
狒々の脅威が去ったのなら、教会兵の皆さんが施設の管理に失敗することはまずないだろうし、俺達としても収穫は十二分にあったからな。
これ以上の長居は教会兵さんたちの作業の邪魔になると判断し、ニーナの別荘に転移した。
「調査お疲れ様ー。予想の数倍大変な調査になっちゃったけど、無事に終わって良かったよ。今何か適当に作るねー」
何故かいつ来てもニーナの別荘には食材が揃っているので、ムーリとシャロにくっついてもらいながら甘いものを中心に適当に料理を用意する。
ムーリとシャロの甘い雰囲気に包まれて、今回のスイーツはいつにも増して甘々にできたかなっ。
ちなみに食材の管理は、マグエルの自宅とこの別荘を合わせてみんなで管理しているらしい。
離れた場所の食材管理なんて大変じゃないのかと思うけど、殆どのメンバーが重量軽減スキルと移動魔法持ちの我が家では殆ど負担にならないそうだ。
配膳が済んだらそのままシャロとムーリをベッドにお持ち帰りして、2人の中をゆっくり優しく往復しながら今日の調査の結果を話し合う。
「古い資料の確認は殆ど出来なかったけど、フルファインダーの獲得と、トライラム様が思った以上に逸脱した存在であることが知れたのは収穫だったね」
「資料に関してはどうしようもないねー。素人の私たちが触っちゃうとボロボロにしちゃうかもだし。一旦教会兵さんに回収してもらうしかなかったよ」
「うんうん。私から見ても丁寧な仕事ぶりだったね。彼らに任せておけば古い資料も失われる心配はないだろう。まずはプロである彼らに然るべき処置を施してもらうべきさ」
古い資料に触れた経験の豊富なチャールとキュールが、教会兵さんたちの資料の扱いに感心している。
俺から見ると結構乱暴に扱っているように見えたけど、細かい部分に配慮された取り扱いだったようだ。
「旦那様の成長は著しいですが、今回私はあまりお役に立てなかったですね。確かに想定外の生物ではありましたけど、それ以上に自身の未熟を痛感させられましたよ」
「ヴァルゴに同じ、じゃな。精霊魔法と気配遮断の同時使用などリーチェかアウラでもおらねば出来ぬと思っておったが、なんと甘い想定だったのだと反省しておるのじゃ」
「私も、野生動物相手ならお役に立てると思っていたんですけど……。悔しいですね」
武力担当のヴァルゴとフラッタ、そして脳筋ラトリアが、狒々たちの気配を察知できなかった事を反省している。
気配遮断と精霊魔法の消音効果のコンボだけでも強力過ぎるのに、更には熱視対策までしてきたからな。あんなの察知できる方がおかしいんだよ。
「ダンさんっ。それを実際に行なった本人が言っても全然説得力無いのーっ」
「そうなんですよ。結局ダンさんが全部実演して見せちゃうから、フラッタ様もラトリア様もこのままじゃいけないって頑張っちゃうんですよねぇ」
ターニアとエマがは~やれやれと呆れてみせる。
確かに俺が他のみんなの限界を引っ張り上げてしまっている可能性は否定出来ないけど、俺としてはみんなが頑張るのはベッドの上だけでも充分なんだよ?
甘やかし屋のシャロとムーリは、俺の頭をおっぱいの中に沈めて、俺を挟んだ状態で互いの体をぎゅーっと抱きしめ合っている。
俺は2人の反発の少ないマシュマロおっぱいに溺れながら、その時にお邪魔しているほうの奥になんの遠慮も無く何度も何度も出し続けている。
報告会の最中という事もあり、嬌声を控えた甘々モードだ。
2人のおっぱいをしゃぶる俺の頭にムーリとシャロが絶えずキスの雨を降らしてくれて、最高に甘い雰囲気を醸し出してくれている。
そろそろシャロからも母乳が飲みたいなぁちゅぱちゅぱ。ムーリって母乳も入ってないのになんでこんなにおっぱい大きいんだろうなぁはむはむ。
「転移魔法陣の行く先についてはお手上げ状態よね? 教会兵が回収していった資料に手掛かりが残っていればいいんだけどぉ」
「流石にそれは期待出来ないと思うよティムル。でもひとまずあそこの調査はこれで終わりかな? 何か分かればぼくたちにも報告が来ると思うから、教会兵たちの調査報告を待つしかないね」
「教会本部の調査はひと段落。海岸の片付けにもあと数日掛かるんだよね? となると少し時間が空いちゃいそうだけど、何かする予定はあるの? ダン」
「ちゅうちゅうれろれろ。ん~、予定かぁ」
もぐもぐと料理を頬張りながら明日以降の予定を問いかけてくるニーナ。
ムーリの中に注ぎ込む快感に体を震わせながら、明日以降何をすればいいのか考える。
無理に何かしようとしなくても、全員をベッドに引きずりこんで、教会の調査と海岸の片付けが終わるまでひたすらみんなに注ぎ込み続けるのも悪くはないけど、なんとなく今は調査のターンって感じがするんだよなぁ。
こりこりとシャロの乳首を甘噛みしながら、何を調査すべきか検討する。
「転移魔法陣の行く先の調査は現実的じゃないんだよね? なら今のうちに、前回一緒じゃなかったみんなに終焉の向こう側を見てもらうのはどうかな? 触心やフルファインダーがある今なら、あの時気付けなかった情報にも気付けるかも知れないし」
「終焉の向こう側……。いつかダンが言ってた、世界の果てってやつか……?」
「そうだよシーズ。エルドパスタムからの絶景も見せてあげたいし、明日は終焉の景色を見に行こうか」
世界中を旅してみたいと言っていたシーズに終焉の光景を見せてあげるのも楽しみだし、世界の果てを見たキュールに意見を聞くのも楽しみだ。
明日はユニのところに顔を出した後、世界の果てまでピクニックに行くことにしよう。
さぁて。明日の予定も決まったことだし、食事が終わった人からベッドに上がってねーっ!
今日は種族毎に楽しむ気分だから……。ムーリはもうちょっとこのままがんばろうねー?
キュールから齎されたその情報に、この場に居るみんなが激しく動揺してしまう。
魔法扉と野生動物を生み出すスポーニングチュトラリーだって、その性能を考えるとまず間違いなくレリックアイテムに分類されるマジックアイテムのはず。
それだけでも異常事態だっていうのに、極めつけは転移魔法陣とか、トライラム様って本当に神様だったんじゃないのか……?
「触心で得た情報を疑う気は無いけど……。この眼で見ても、転移魔法陣の痕跡なんて見つけられないわね……」
青い瞳をしたティムルが、注意深く床を観察しながら首を傾げている。
俺の思考が纏まらない中で、いち早く立ち直ったティムルお姉さんがキュールに問いかける。
「ねぇキュール。いくら触心とは言え、転移魔法陣なんて見たことも聞いたことも無い代物が設置されていたなんてこと、本当に分かるものなの?」
「いや、私たちは既に転移魔法陣を見ているよティムルさん。それどころか転移魔法陣を利用だってしたじゃないか。よぉく思いだしてみて……」
「利用したこともある……って、もしかしてキュールさん。貴女が言っているのは始まりの黒の入り口のことですか?」
「その通りだよシャロさんっ! 流石はこの場の誰よりも始まりの黒を身近に感じて生活していただけのことはあるねっ」
もしやと回答したシャロに、大正解だと認めるキュール。
始まりの黒の入り口……。
言われてみれば確かにあそこには転移魔法陣が設置されていたな……。
「実は先日始まりの黒を探索した際に、よろけた振りをして転移魔法陣を触心しておいたのさっ。流石にこんな事態は想定してなかったけど」
「ゴブトゴが聞いたら卒倒しそうな話ですね? ま、あの時のゴブトゴはさっさと帰ってしまったのですから自暴自得でしょう」
「今のシャロの発言で、ゴブトゴさんがスペルディア王家に今までどんな扱いを受けてきたのかが窺い知れてしまうなぁ。ま、済んだことは仕方ない」
「絶対にダンさんも宰相殿に心労をおかけしてると思うけど、元は私の行動が原因だから藪をつつくのはやめておくよ」
シャロ、キュール、俺という、ゴブトゴさんの3大ストレス元の会話に、リーチェやラトリアなどの良心的な貴族組が憐憫の表情を浮かべている。
俺達を信用して始まりの黒に入れてくれたのに、これ幸いにと触心で情報を盗んでいくんだからタチが悪いよな。こんな事実を伝えて気苦労を重ねさせるよりは、黙っておいた方がお互いのためだろう、うん。
仕方無いなぁと溜め息を吐きながら俺にぎゅーっと抱きついてきたリーチェは、俺にエロ過ぎる体をムニュムニュ押し付けながらキュールの話の先を促した。
「話を戻すよキュール。君は始まりの黒の入り口の転移魔法陣を触心して得られた情報と、召魔の灯台を触心して得られた情報に共通点を見出したわけだね?」
「流石は建国の英雄、話が分かるし理解も早いねっ。概ねその通りだよっ」
「もう少し具体的に説明できる? そうだな……例えば転移魔法陣の再起動は可能かとか、ぼくたちにも転移魔法陣は作れるのかとか。転移先が何処なのかも出来れば知りたいけど」
「えーと、恐らく転移魔法陣の再起動は不可能だね。ここにあった転移魔法陣は既に失われているから、再起動しようにも、そもそも無いのさ」
どうやら召魔の灯台を触心したことでその魔力の供給先である転移魔法陣の存在に気付くことが出来たらしいんだけど、転移魔方陣に触心したわけじゃないからそれ以上のことは分からなかったようだ。
始まりの黒の転移魔法陣はアウター由来のものだった為、そちらを再現する方法もキュールは思いつかないとのこと。
「私たちに同じ物が作れるかはノーコメント。私は不可能だと思うけど、ダンさんなら作りかねないって意味で」
「あ~……。確かにダンなら作りかねないねぇ……。でも今はとりあえず、転移魔法陣の設置は不可能だということにしておこう。魔法陣が既に失われているなら、やっぱり転移先も分からないかな?」
「具体的には分からないけど、この場所から西側に転移したってことだけは分かったよ。それ以上は距離も何も分からなかったけど」
どうやら召魔の灯台から魔力の流れを解析した結果、ここから西側に向けて魔力が向けられていた痕跡があるようだ。
転移魔方陣に魔力を供給していたマジックアイテムからここまで情報を引き出すなんて、キュールの触心は明らかに鑑定よりも上位の情報収集能力と言って良さそうだ。
「ここから西かぁ……。それはちょっと範囲が広すぎて絞りきれないね……。ガブリエッタさん。ここはフォアーク神殿の近く、グルトヴェーダ山岳地帯付近なんだよね?」
「そうですね。王国の北東端近くにあると思っていただいて構いません。ですのでここより西と言われると……」
「そう。人類の生存圏のほとんどが可能性に含まれてしまうということさ。流石に徒歩で行けるような場所に転移魔法陣を利用するとは思えないけど、転移先に心当たりはさっぱりって感じだねぇ」
どうやら現時点で転移魔法陣の転移先を特定するのは難しそうだ。
フォアーク神殿付近のこの教会施設よりも東に位置する街なんて、スペルド王国最東端の街であるエルドパスタムくらいしかなく、それ以外の殆どの街や地域は転移先の候補になってしまうらしい。
なにかこの部屋に手掛かりはないかと軽く調査してみたものの、これ以上見つかるものは無かった。
スポーニングチュトラリーが守っていたのは、まず間違いなく転移魔法陣だったのだろう。
これ以上ここで黙ってつっ立っていても仕方ないので、ここから本格的に施設内を調査しよう。
「これから改めてフルファインダーを使って施設内外を索敵してみるけど、スポーニングチュトラリーを押さえた以上もう危険は無いはずだ。各自手分けして施設内を調査してくれる? 非戦闘員は必ず戦闘員とコンビを組むこと。リーチェは全員の会話を間違いなく繋いでおいて欲しい」
あの狒々たちがこの部屋の防衛の為に生み出された生物なら、この部屋を制圧されているのにどこかに潜んで俺達を狙っている可能性はかなり低いだろう。
でもあいつらの知能の高さは人以上だと感じるレベルなので、改めてもう1回周囲の安全確認を行なう事にして……。
「残っている資料はなるべく持ち出して教会に引き渡すつもりだけど、古い資料は状態も悪いと思うから扱いには注意してね? キュールはスポーニングチュトラリーの調査をお願い。取り外し可能ならさっさと外してガブリエッタさんに回収してもらって」
「了解。こんな物騒なものはさっさと回収してしまうに限るね。私としては触心させてもらえるだけでありがたいし、召魔の灯台と合わせて速やかに提出するよ」
「皆さんのご協力に心から感謝を。夫を報告に戻しますので、資料の運び出しや管理の人手もご提供できると思います」
「さぁみんな手分けして、失われてしまった教会の歴史を紐解こうっ」
予想よりもずっと危険な場所だったけれど、ようやく本来の目的である旧本部施設の調査を開始する。
フルファインダーで狒々が1匹も残っていない事を確認した頃に、ルーロさんが多数の教会兵を連れて戻ってきた。
施設内で見つかった資料の運び出しや、施設の老朽化具合などを手際よくこなしていく教会兵の皆さん。
仕事柄古い資料を扱うのにも慣れていて、その仕事はスムーズで危なげがない。むしろ我が家のみんなの方が危なっかしいくらいだった。
無事にスポーニングチュトラリーの取り外しにも成功し、この施設の奪還に成功した。
「召魔の灯台は大気中の魔力を少しずつ、だけどほぼ上限無く蓄積できるマジックアイテムだよ。スポーニングチュトラリーと合わせて、変な扱いをしないようにくれぐれも気をつけて」
「いやいやっ。流石に教会でこれを使用することは無いと思いますよ? ですが教会の歴史と真実を知る上での大切な資料です。管理はお任せください」
キュールが渡したマジックアイテムを、恐る恐るインベントリに収納するガブリエッタさん。
どうやらガブリエッタさんって、8㎥のインベントリを持っているみたいだね。
……って、8㎥のインベントリは旅人と冒険者だけで到達できるんだったな。
ポータルが使える時点で、ルーロさんもガブリエッタさんもインベントリが進化していてもおかしくなかったわ。
「今回回収した資料は私共の方でも確認しますが、ダンさんたちもいつでも閲覧できるよう取り計らっておきます」
「ありがとうルーロさん。多分そのうちお邪魔すると思うからよろしく」
「いつでもどうぞ。合わせてこちらの施設の調査も引き続き継続していきますので、何か分かったらご報告します。特に転移魔法陣の転移先については我々も知りたいですから」
ガブリエッタさん、ルーロさんと握手を交わし、この場の調査を引き継ぐことにする。
狒々の脅威が去ったのなら、教会兵の皆さんが施設の管理に失敗することはまずないだろうし、俺達としても収穫は十二分にあったからな。
これ以上の長居は教会兵さんたちの作業の邪魔になると判断し、ニーナの別荘に転移した。
「調査お疲れ様ー。予想の数倍大変な調査になっちゃったけど、無事に終わって良かったよ。今何か適当に作るねー」
何故かいつ来てもニーナの別荘には食材が揃っているので、ムーリとシャロにくっついてもらいながら甘いものを中心に適当に料理を用意する。
ムーリとシャロの甘い雰囲気に包まれて、今回のスイーツはいつにも増して甘々にできたかなっ。
ちなみに食材の管理は、マグエルの自宅とこの別荘を合わせてみんなで管理しているらしい。
離れた場所の食材管理なんて大変じゃないのかと思うけど、殆どのメンバーが重量軽減スキルと移動魔法持ちの我が家では殆ど負担にならないそうだ。
配膳が済んだらそのままシャロとムーリをベッドにお持ち帰りして、2人の中をゆっくり優しく往復しながら今日の調査の結果を話し合う。
「古い資料の確認は殆ど出来なかったけど、フルファインダーの獲得と、トライラム様が思った以上に逸脱した存在であることが知れたのは収穫だったね」
「資料に関してはどうしようもないねー。素人の私たちが触っちゃうとボロボロにしちゃうかもだし。一旦教会兵さんに回収してもらうしかなかったよ」
「うんうん。私から見ても丁寧な仕事ぶりだったね。彼らに任せておけば古い資料も失われる心配はないだろう。まずはプロである彼らに然るべき処置を施してもらうべきさ」
古い資料に触れた経験の豊富なチャールとキュールが、教会兵さんたちの資料の扱いに感心している。
俺から見ると結構乱暴に扱っているように見えたけど、細かい部分に配慮された取り扱いだったようだ。
「旦那様の成長は著しいですが、今回私はあまりお役に立てなかったですね。確かに想定外の生物ではありましたけど、それ以上に自身の未熟を痛感させられましたよ」
「ヴァルゴに同じ、じゃな。精霊魔法と気配遮断の同時使用などリーチェかアウラでもおらねば出来ぬと思っておったが、なんと甘い想定だったのだと反省しておるのじゃ」
「私も、野生動物相手ならお役に立てると思っていたんですけど……。悔しいですね」
武力担当のヴァルゴとフラッタ、そして脳筋ラトリアが、狒々たちの気配を察知できなかった事を反省している。
気配遮断と精霊魔法の消音効果のコンボだけでも強力過ぎるのに、更には熱視対策までしてきたからな。あんなの察知できる方がおかしいんだよ。
「ダンさんっ。それを実際に行なった本人が言っても全然説得力無いのーっ」
「そうなんですよ。結局ダンさんが全部実演して見せちゃうから、フラッタ様もラトリア様もこのままじゃいけないって頑張っちゃうんですよねぇ」
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確かに俺が他のみんなの限界を引っ張り上げてしまっている可能性は否定出来ないけど、俺としてはみんなが頑張るのはベッドの上だけでも充分なんだよ?
甘やかし屋のシャロとムーリは、俺の頭をおっぱいの中に沈めて、俺を挟んだ状態で互いの体をぎゅーっと抱きしめ合っている。
俺は2人の反発の少ないマシュマロおっぱいに溺れながら、その時にお邪魔しているほうの奥になんの遠慮も無く何度も何度も出し続けている。
報告会の最中という事もあり、嬌声を控えた甘々モードだ。
2人のおっぱいをしゃぶる俺の頭にムーリとシャロが絶えずキスの雨を降らしてくれて、最高に甘い雰囲気を醸し出してくれている。
そろそろシャロからも母乳が飲みたいなぁちゅぱちゅぱ。ムーリって母乳も入ってないのになんでこんなにおっぱい大きいんだろうなぁはむはむ。
「転移魔法陣の行く先についてはお手上げ状態よね? 教会兵が回収していった資料に手掛かりが残っていればいいんだけどぉ」
「流石にそれは期待出来ないと思うよティムル。でもひとまずあそこの調査はこれで終わりかな? 何か分かればぼくたちにも報告が来ると思うから、教会兵たちの調査報告を待つしかないね」
「教会本部の調査はひと段落。海岸の片付けにもあと数日掛かるんだよね? となると少し時間が空いちゃいそうだけど、何かする予定はあるの? ダン」
「ちゅうちゅうれろれろ。ん~、予定かぁ」
もぐもぐと料理を頬張りながら明日以降の予定を問いかけてくるニーナ。
ムーリの中に注ぎ込む快感に体を震わせながら、明日以降何をすればいいのか考える。
無理に何かしようとしなくても、全員をベッドに引きずりこんで、教会の調査と海岸の片付けが終わるまでひたすらみんなに注ぎ込み続けるのも悪くはないけど、なんとなく今は調査のターンって感じがするんだよなぁ。
こりこりとシャロの乳首を甘噛みしながら、何を調査すべきか検討する。
「転移魔法陣の行く先の調査は現実的じゃないんだよね? なら今のうちに、前回一緒じゃなかったみんなに終焉の向こう側を見てもらうのはどうかな? 触心やフルファインダーがある今なら、あの時気付けなかった情報にも気付けるかも知れないし」
「終焉の向こう側……。いつかダンが言ってた、世界の果てってやつか……?」
「そうだよシーズ。エルドパスタムからの絶景も見せてあげたいし、明日は終焉の景色を見に行こうか」
世界中を旅してみたいと言っていたシーズに終焉の光景を見せてあげるのも楽しみだし、世界の果てを見たキュールに意見を聞くのも楽しみだ。
明日はユニのところに顔を出した後、世界の果てまでピクニックに行くことにしよう。
さぁて。明日の予定も決まったことだし、食事が終わった人からベッドに上がってねーっ!
今日は種族毎に楽しむ気分だから……。ムーリはもうちょっとこのままがんばろうねー?
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